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「チームトポロジー」書評

こんにちは。GLOBIS 学び放題 / GLOBIS Unlimitedのエンジニアリングマネジャーをしている渡辺(@mshrwtnb_)です。

この記事ではマシュー・スケルトン, マニュエル・パイス著『チームトポロジー』(Team Topologies)の書評を紹介していきます。価値あるソフトウェアを素早く提供するための組織設計パターンを説明した一冊です。

概要

本書は主にソフトウェア開発組織の組織設計とソフトアーキテクチャ設計の両方を考える人たち向けの書籍です。うまく設計されたソフトウェアが明確な責任領域と他領域とのインターフェイスおよびコミュニケーション方法を定義しているように、組織でもチームという基本単位を用意・維持し、責任領域とチームタイプを割り当て、また他チームとの関わり方(インタラクションモード)を決定することで、素早いソフトウェアの提供が可能になると説きます。

学びのポイント(抜粋)

  • 網羅的なサマリーは訳者@ryuzeeさんが「30分で分かった気になるチームトポロジー」と題し、紹介されています。必読です。

  • 速いペースでのデリバリとイノベーションの適応を目指すには、組織に安定したチーム、効果的なチームとインタラクションが求められる。知的労働組織の成功には「非公式構造」(個人間の影響力の領域)と「価値創造構造」(個人間やチーム間の能力に基づいて実際にどう仕事を終わらせるか)のインタラクションが欠かせない。それらを示さない一般的な組織図に依存して、仕事を分割・管理しようとすると失敗するケースが多い。

  • チームトポロジーでは、チームに権限を与え、チームを基本的構成要素として扱う。他チームとのインタラクションモードを明示的に合意することで、期待するふるまいが明確になり、チーム間の信頼関係が生まれる。「チームタイプ」×「インタラクションモード」の組み合わせで考える。

  • コンウェイの法則

    • ソフトウェアは組織の構造を反映する傾向があるとの1968年に指摘。現在でも有効な指摘。全員が他のすべての人とコミュニケーションするよう求めるのは混乱のもとである。チーム内のフローがよくなるようソフトウェアアーテクチャを選択する。明確なチームインタラクションだけにコミュニケーションパスを限定し、モジュール化した疎結合なシステムが生まれる。

    • 逆コンウェイ戦略を目指そう。すなわち、コンウェイの法則に逆らわず、組織構造も揃えて、望ましいソフトウェアアーキテクチャを目指そうという考え。

  • チームファーストのアプローチ

    • チームを長続きさせる(といっても固定するわけではない)。長続きする5−8人の小さなチームを作る。そのチームに仕事が長流れこむようにする。チームがソフトウェアのオーナーとなる。チームメンバーもチームファーストのマインドを持つ。チームの認知負荷の許容量に合わせて責任範囲を制限する。すなわちサブシステムと作業範囲を成約すること。

    • 唯一絶対のトポロジーはない。しかし、その場しのぎの設計や頻繁なチーム設計の変更はソフトウェアのデリバリーを遅くする。

  • 「チームタイプ」と明瞭な「インタラクションモード」を組み合わせることで、内外の状況に適応できる強力で柔軟な組織設計が実現できる。

    • チームタイプ(各定義は上記資料を参照

      • ストリームアラインドチーム

      • イネーブリングチーム

      • コンプリケイテッドサブシステムチーム

      • プラットフォームチーム

    • インタラクションモード(各定義は上記資料を参照

      • コラボレーション

      • X-as-a-Service

      • ファシリテーション

  • 組織的センシング

    • 組織内のチーム間で動きをセンシングしあう。チーム間に明確で信頼できるコミュニケーション経路が必要。主担当者ではない。

現場で働くEMとしての感想

自分が所属するチームには、元々内部組織として2つユニットがあり、最近までコンポーネント別で別れていました。よく指摘される課題が発生するため、2022年8月に体制変更を行い、フィーチャーチーム化したばかりでした。最初は約20人をどう2,3チームに分割するかを考えていましたが、あえてワンチーム、すなわち大所帯で回すことを選びました。理由はメンバー間の信頼感醸成や、これまで培ってきたやり方の文化Mixです。将来的な分割を想定し、あえて大所帯の非効率性を呑んで、回してみようとなりました。結果、やはりスモールチームのときのような議論の深さは出にくいですが、メンバー間の相互信頼醸成、視点・視座の変化、文化統合など良い面も出てきています。

本書では随所でチームを表すベン図が登場しますが、我々は今2つの円が重なり合っていた状態です。今後は互いに離れていき、インタラクションモードを決めていくフェーズです。チームトポロジーが進化していくと言えます。今後も組織設計議論の際に本書の知見(特にチームタイプとインタラクションモード)を活かしていきたいと思います。

Credits

Cover Photo by Alina Grubnyak on Unsplash

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