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大内宿とねぎ蕎麦
最近、テレビニュース(のYouTube動画)を視ていたら、海外からのインバウンド客が福島県会津地方の大内宿にまで押し寄せているそうです。よく調べているし、日本への興味関心の強さにも驚きました。
大内宿は今でこそ観光地ですが、もともとは会津藩の年貢米を換金のために江戸に運ぶ経路にある集落で、輸送の任にあたった藩士たちの宿所でもありました。往時は重要な交通の拠点だったものの、時代に取り残された集落がタイムカプセルに保存されて遺っているといった風情です。
いまやノスタルジックな佇まいが観光資源となって、多くの観光客を引き寄せています。私も仕事の関係で会津若松市に住んでいたことがあって、大内宿を訪ねたことも勿論あります。最後に観光で訪れたのは、2015年の10月のことで、当然ながら、まだインバウンドの訪日客の姿はありませんでした。以下は、その時に撮った写真ですが記録としてあげておきます。
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集落の突き当たりにおわす道祖神たるお地蔵様。この脇の階段を上がると、お堂があります。
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お堂のある小高い丘から、見下ろすと集落が一望できます。今では、インバウンド客にとっても格好の撮影スポットになっているそうです。
大内宿は会津若松の城下から街道を南方に下った山間に位置しています。途中で日光を経由して江戸に至る道筋に見える茅葺き屋根の古い家並みは見事なものです。
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お堂の脇には、古い形の(五輪塔のように見える)墓石が並んでいましたが、その謂われはわかりません。
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再び、集落に降りると、道端にいわくありげな石の蛙が威張っています。
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さあ、これにて蛙りましょう。
ああ、そうだ。大内宿に行くと「ねぎそば」が名物ということになっています。かけ蕎麦または冷がけ蕎麦を箸の代わりに、一本の長ネギを使ってすくって食べて、薬味として時々齧るというものです。
こんなの地元の古くからの習わしでも何でもありませんから、気にしないで普通に箸を使って食べてくださいね。私が初めて大内宿に行ったときには、こんな食べ方させる店なんてなくて、普通に箸で胡桃蕎麦をいただきました。温かい蕎麦汁と地元のそば粉で打った蕎麦に、すりおろした胡桃がたいそう美味しかったです。
昭和の終わりだったか、平成の初めころだったかな。大内宿が少しずつ観光スポットとして知られてくると、蕎麦を提供する店も増えてきたのでしょう。その内の一軒の店のオヤジが茶目っ気というのか山っ気があって、箸の代わりにネギを使わせることを思いついたのが始まりです。
私が会津に住んでいた時に、福島県のローカルテレビ局が大内宿を取材して放送していました。レポーターが、その蕎麦屋のオヤジにインタビューして、これは地元で古くから伝わる食べ方なんですか?と尋ねたら、オヤジは胸を張って「ううん、わたしが考えたの」と自慢げに答えていましたよ。
ネギで蕎麦をすくうなんて食べにくいし、生のネギを齧ったら辛すぎますよ。そのテレビ番組を視てからがっかりして、私はその後、大内宿では蕎麦を食べたことはありません(蕎麦そのものは美味しいですよ)。
地元では、これが伝統の食べ方ですなんてことは言っていないはずですが、観光客が勝手にそう思い込んで、美味しい蕎麦をわざわざ食べにくい方法で食べるのは滑稽です。これから大内宿に行こうかなという方は、どうぞ無理をなさらずにネギでも箸でも好きな方法で召し上がってください。