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一石三鳥の実用英語学習法(前編)

今回も一石三鳥シリーズです。仕事柄、私の身近には常に英語が存在していました。長年にわたる試行錯誤の結果、私なりに得られた効率的な学習法について2回に分けてご紹介したいと思います。 
 
何が一石三鳥かと申しますと、これからお話するやり方で取り組むと、「時事に詳しくなり」、「考える力が養われ」、「英語力が総合的に向上してTOEICなどのスコアも上がる」という3つのメリットが効率的に得られるからです。
 
前編では語学学習に対する考え方、学習に際しての留意事項、具体的な学習法についてご紹介します。後編では実際に外国人と会って英語で話をする場合の事前準備やトレーニング法、留意事項についてお話します。 
 
1 考え方
学習法を紹介する前に、語学学習に対する考え方から整理していきます。
 
(1) 言語は「手段」であって「目的」ではない
英語は誰かとコミュニケーションをとる「手段」ですが、テストで高得点をとることが「目的」になっていないでしょうか。英語を学習したい方は、先ず、自分は「何のために英語を学ぶのか」をはっきりさせましょう。
 
入試や就活を控えている方は、志望校や就職先は理由があって英語力を要件に設定している訳ですから、その先を考えてみて下さい。入学・就職したあと「英語を使って何をしないといけないのか」を明確にすると、自ずと目的にかなう最適な学習法が見えてきて、結果としてテストの得点もついてくるはずです。
 
(2) 言語は「学問」ではなく「技能」である
言語関係の専門職の方を除いて、そもそも言語は学問ではないはずです。単語・熟語、文法、長文読解、ヒアリング等、個別に「言葉遊び」ばかりしていても、いつまでたっても上達しません。
 
車で例えると、車のしくみ、交通ルール、標識の見方など良く分かっていても運転ができないのと同じです。言語は「学問」ではなく「技能」と捉えることが肝要です。
 
(3) 言語の習得度は必ずしも学費に比例しない
高価な教材を買ったり塾に通ったからといって、必ず英語が上達するとは限りません。その証拠に、日本より教育・生活水準がはるかに低い発展途上国の人たちでも普通に英語を話します。
 
本来、必要に迫られれば自然に使えるようになるものなのです。お金を費やして高度な教育を受けることは決して悪いことではありませんが、その前に学ぶ「目的」を明らかにし、その目的にかなう最適な「技能」教育を具体的に設計することが先だと思います。
 
(4) 言語の習得は上達と低迷の繰り返し
英語は「技能」ですから、使わないとすぐに廃れてしまいます。いわば下りのエスカレーターを歩いて上るようなものです。上達と低迷の繰り返しになりますので、長い目でみた生涯学習と位置づけ気長に付き合っていく気構えが必要です。
 
2 留意事項
学習に際しての留意事項を先にお話ししておきます。
 
(1) 英語は出来るだけ英語のまま考える
英語を使うとき、日本語と英語を行ったり来たりしていると、時間ばかりかかって段々と疲れてきます。できるだけ日本語が入ってくるような勉強の仕方はやめましょう。
 
特に、英文を末尾から前方へ戻りながら訳すことはしないで下さい。出来るだけ見聞きした英語のまま理解するよう努めましょう。
 
(2) 翻訳するときは「理解したこと」を訳す
言葉を一言一句正確に訳そうとすると、おかしな文章になりがちです。そもそも訳文というものは近似値であって、完全な対訳など存在しません(未だ、完璧な翻訳マシンが登場しない理由)。
 
翻訳する必要があるときは見聞きした「言葉」を正確に訳すのではなく、自分自身が「理解したこと」を正確に訳す(説明する)ように心がけてください。
 
(3) 状況を具体的にイメージする
コミュニケーションの失敗は、お互いが同じイメージを描けていないことが原因です。同じ言語間でもそのような失敗が日常的に発生するのですから、尚更、英語においても状況を正確かつ具体的にイメージする力が必要です。
 
その際、大事なことは前後関係をしっかり把握することです。例えば、英語が得意な人に英文の一部分だけ切り取って「これって、どういう意味?」と質問してもなかなか即答できないものです。前後の状況を具体的にイメージできないと正確に答えられないからです。
 
ですので、単語や熟語を覚える時も単体で丸暗記するのではなく、文章の中で具体的なイメージを伴って覚えることが大事だと思います(単語や熟語を調べるときは、例文が充実しているネット検索も併用しましょう)。
 
(4) 知らないジャンルを無くすよう努める
更に言えば、日本語で理解できないことは英語でも理解できません。例えば、「Sales Manager」を「営業部長」と訳せたとして、本当に理解したと言えるでしょうか。
 
「営業部長」がどのような仕事をしている人なのかを具体的にイメージできて初めて「Sales Manager」を理解したと言えるのではないでしょうか。つまり、自分が知らないジャンルのことは英語でも語ることはできないのです。
 
ですから、英語学習では選り好みをせず、幅広いジャンルに取り組むように心がけましょう。自ら壁を作って努力を小出しにするよりも、最初に風呂敷を大きく広げておいた方が、長い目で見ると実は効率的であったりするものです。
 
3 学習法
上記の考え方及び留意事項を踏まえ、本題である一石三鳥の英語学習法についてご紹介します。
 
(1) 教材
教材については、基本的にはネットから拾えるものだけで十分です。一例として、以下のサイト/アプリをご紹介しておきます。
 
● 英文記事のみ(英文読み上げ・日本語対訳なし)
英語版Yahoo News等、総合ニュースサイト
● 英文記事+英文読み上げ(日本語対訳なし)
NHK WORLD-JAPAN
英語リスニングナビ
Listen News 
● 英文記事+英文読み上げ+日本語対訳
NHK - ニュースで英語術
日経LissN(iphoneのみ)
英語リスニング
 
なお、題材として次の (2) で「時事ネタ」と「専門ネタ」を選定するお話をしますが、「専門ネタ」のサイトについては、自己の専門分野に関連したものをご自身で開拓してください。
   
(2) 題材
題材の選定に際しては、知識を「広げる」ことと「深める」ことに留意しましょう。
 
「広げる」とは、先述のとおり知らないジャンルをなくすことです。時事ニュースからメジャーな記事を選定するほか、1~2つは敢えて馴染みのない記事を選んでみましょう。
 
一方、「深める」とは、考える力を養うことです。自己の専門分野などから特定のテーマをみつけて、問題意識をもって日々追い続けてみましょう。そうすると、必ず考える力がついてきますので。
 
ただ、冒頭で述べたとおり、ここでご紹介する学習法は、時事の知識と考える力を養い、TOEICなどのスコアアップにも寄与することが主な目的ですので、実際に外国人に会って英語で話すことが想定される方は、時折、教材を日常英会話やビジネス英会話に変えるなどして、様々な日常/ビジネス・シーンにおける表現や会話を補う必要があります(日常/ビジネス英会話の教材は「NHKラジオ英会話」をお勧めします)。
 
実際に外国人に会って英語で話す場合の事前準備やトレーニング法、留意事項については、後編で詳しくご紹介します。
  
(3) 学習のやり方
ひとつの記事について、次の①~⑤を実践していきます。語学力は、読む・書く・聴く・話すの4つの能力に細分化されますが、私のやり方では、このうち読んで話す能力を下記の①速読、②熟読、⑤音読で、聴いて書く能力を③聴き取り、④追唱で磨いていくという手法になります(結果的に時事の知識や考える力、総合的な英語力とTOEICなどのスコアもついてきます)。
 
① 速読
初めに、記事を1分程度でさっと読んで要点を把握する練習をしましょう。殆どの記事は、タイトル及び冒頭で最も伝えたいことを述べ、中盤で図表や数値とともにその細部を説明し、後段で経緯やおさらいを語る構成になっています。
 
ですので、(先入観は禁物ですが、)先ずタイトル及び冒頭だけで「この記事はこんな話の展開になりそうだ」と想像してみてください。その後、一気に中盤まで読み進めますが、幾つか分からない単語が出てきても構わず飛ばし読みしましょう(前後の文脈から、不明単語が何を意味しているかを想像するのも訓練のひとつ)。
 
速読では、後段にはあまり力を入れる必要はありません(特定のテーマを追い続けていると、後段は「それはもう知ってるよ」という内容が多いです)。
 
② 熟読
記事の要点がつかめたら、今度は熟読してみてください。その際、記事の概要を誰かに説明するつもりで、蛍光マーカー等で数字や重要ワードにマーキングしていきましょう(意味もなくペンを走らせるだけでも、言葉を脳に刷り込む効果があります)。
 
分からない単語は意味を調べますが、ただ単に辞書に書かれていることを覚えるのではなく、ネット検索の例文なども併用しながら文脈の中でイメージを伴って理解するように努めましょう。

③ 聴き取り
熟読が終わったなら、音声データを再生して聴き取りの練習をしてみましょう。その際、記事は見ないで耳だけを頼りにノートに要点を書きとめる練習を行います(音声データがない場合は、省略して⑤に進んで構いません)。

④ 追唱(シャドウイング)
再度、音声データを再生しますが、今度は内容ではなく音(注1) の方に集中して、できるだけ正確に追唱してみましょう(音声データがない場合は、省略して⑤に進んで構いません)。
 
(注1) 英語には固有の韻律(Prosody)、すなわち、抑揚、語彙の強調(アクセント)、イントネーション、リズム、ポーズ(間)の取り方などがあり、日本語のように一語一語をハッキリ読み上げるのではなく、音が変化したり、結合したり、消えたり、スピードが変わったりする 
 
⑤ 音読
教材を聞きながら口真似する「追唱(シャドウイング)」を積み重ねると、次第に教材に頼らず自ら正しい音を発せられるようになります。慣れてきたら教材を聞かずに口真似する「音読」に移行しましょう。(注2)
 

自分なりに、ニュースキャスターになりきったつもりで、出来るだけ速いスピードで、リズムカルに抑揚をつけて声に出して読んでみてください。
 
日本語でもそうですが、英語でも借りてきた言葉というものは相手には伝わりにくいものです。何度も何度も音読を繰り返しているうちに、段々とその言葉が自分のものになって、記事の内容も自然に頭に刷り込まれていきます。
 
やがて英語脳が活性化され、次第に読む・話す能力が高まっていくのが感じられると思います(英語で話している夢を見るようになれば、英語脳が活性化されてきた証)。
 
この音読こそが、英語学習において最も重要だと思いますので、忙しいときは音読だけでもいいので、是非、実践してみてください。
 
(注2) 英語では、発声の仕方がかなり違う。顎を引いて、口をタテやヨコに大きく開く、お腹から少し太い声を出すことにより、英語っぽい発音が生まれる。スポーツと同じで、しばらくはフォーム改変の練習が必要。ただ、どこまで巻き舌を使うかは場合にもよる(例えば、国内での航空無線通信など、日本人同士で英語によるコミュニケーションを行う場合、かえって安全性や円滑さを阻害するリスクがある)
    
前編は以上となります。今回は冒頭で述べたとおり、時事に詳しくなり、考える力も養われ、TOEICなどのスコアアップにもつながることに主眼を置いた学習法を紹介しました。
 
しかし、実際に外国人に会って英語で話をするとなると、別のアプローチが必要になります。次回の後編では、そのために必要な事前の準備やトレーニング法、留意事項等についてご紹介したいと思います。