
ふるさと再発見 〜 阿蘇カルデラ
私のふるさと、熊本の阿蘇には、世界有数のカルデラがあります。
両親が、とにかく阿蘇が好きで、父方の親戚が阿蘇に居たこともあり、高校までは、県内で遠出するときは、ほとんど阿蘇方面だったように思います。
高校を卒業してバイクの免許を取ると、私自身も、よく阿蘇へツーリングに出かけたものです。
あの頃は、本当に阿蘇の雄大な景色の中で風を切って走るのが好きでした。

父が、いつも阿蘇を誇らしく思っていた影響もあり、雄大な景観を形作っているカルデラについては(その後の人生経験とも相まって)、ちょっとばかり語れるくらいにはなったと思います。
カルデラとは?
「カルデラ」(caldera)(注1) とは、火山噴火でできた巨大な凹地のことであり、場所によっては「クレーター」(Crater)(注2) と呼ばれることもあります。
(注1) 「釜」や「鍋」を意味するスペイン語に由来
(注2) 「ボウル」や「皿」を意味するギリシャ語に由来
阿蘇カルデラの概要
阿蘇カルデラは、東西18km、南北25km、周囲約100kmと、世界でも有数の大きさを誇っています(日本国内では、北海道の屈斜路カルデラに次ぐ2番目の大きさ)。
特徴的なのは、カルデラの中に中央火口丘群が飛び出ていることです。

《Google Earth》
この中央火口丘群は阿蘇五岳 (注3) と呼ばれ、カルデラを取り囲む外輪山から見ると、まるで「お釈迦様が仰向けに寝そべっている」ように見えることから、「涅槃像」とも呼ばれています。
(注3) 根子岳・高岳・中岳・烏帽子岳・杵島岳の総称。熊本県民は、阿蘇山の高さを1,592m(ひごのくに)と教わる

《阿蘇市山田大観峰付近》
(Photo by ISSA)

右上:子供の頃、ソリで遊んだの草千里
左下:3千年前にできたスコリア丘米塚
右下:ギザギザの独特の形をした根子岳
(Photo by ISSA)
空から訪問したこともありました。

(Photo by ISSA)
阿蘇カルデラの成り立ちについては、阿蘇火山博物館で学べます。

(Photo by ISSA)
阿蘇カルデラの成り立ち
阿蘇カルデラは、今からおよそ27万年〜9万年前の間に起こった、九州中・北部を覆い尽くす4度にわたる巨大火砕流噴火で生み出されました。

《阿蘇火山博物館ホームページほか》
(Created by ISSA)
特に、Aso-4 の噴火は大規模で、放出した火砕流は山口県の秋吉台まで到達し、降灰は日本全域に及んだ(注4)ようです。
(注4) 九州から遠く離れた北海道でも、約10cmの阿蘇火山灰の降灰が確認されている
これらの噴火活動で地下の大量のマグマが地上に放出されました。

《阿蘇火山博物館》
(Photo by ISSA)
その影響で地下に大きな空間ができ、それを埋める陥没が起きて、阿蘇地方に大きなカルデラが形成されたと考えられています。
直径20kmの外輪山から、陥没する前は、ヒマラヤを遥かに上回る12,000m級の巨大火山だったそうです。
日本神話の舞台でもある高千穂町にある高千穂峡は、阿蘇山の噴火によってできた渓谷です。
今から約1,800年前、弥生時代の後期頃からカルデラ内に人が住み始めたとされ、現在では約24,000人が暮らしています。
健磐龍命にまつわる伝承
祖父母や両親からは、「昔、神様が外輪山を蹴り飛ばしたから、カルデラの水が無くなり、川が出来て熊本が栄えた」と聞かされていました。
この話は、健磐龍命蹴裂(けさき)伝説(注5) 呼ばれています
(注5) 昔々、満々と水をたたえる阿蘇カルデラ湖を見て、「この湖水を使えば良田となる」と考えた健磐龍命(「阿蘇神社」の御祭神)が、外輪山の一部(「立野」と呼ばれる所)にひと蹴り入れると、その部分から流れ出した水が川となって熊本平野を潤し、有明海に注ぐようになったというもの
阿蘇の山々が生み出す天然水
実際に、熊本はキレイな水が潤沢であることでも有名で、昔から水道水をガブガブ飲んだり、白川水源(注6) から水を採取して持ち帰ったりしていました。
(注6) 名水百選に選ばれている熊本を代表する水源池で、四季を通じて水温14度の水が毎分60トンも湧き出し、熊本市内を流れる「白川」の源にもなっている

(Photo by ISSA)
この豊富な高純度の天然水は、世界最大の半導体企業である「TSMC」を誘致する大きな判断材料にもなりました。
阿蘇の火山信仰
更に、阿蘇は古来より火山信仰の対象で仏教との結びつきも強く、多くの修行僧が集まりました。
阿蘇山上には最大36坊52庵の宿坊があったといわれています。

《阿蘇火山博物館》
(Photo by ISSA)
この話は、Desert Rose さんが詳しくまとめられていますので、是非、ご覧になってください。
各地のカルデラ
九州には、阿蘇の他にも鹿児島にカルデラがあります。そのひとつは、錦江湾の北側にある姶良カルデラです。
約3万年前の姶良大噴火で現在の形になりました。

《Google Earth》
画像のとおり、カルデラの大半は海なので、そう言われないと、ここがカルデラとは誰も気づきません。

右上:昔、陸続きではなく島だった桜島
左下:火山灰土壌で育ちやすい桜島大根
右下:1914年の噴火で埋没した黒神鳥居
(Photo by ISSA)
また、謎の海獣イッシーで有名な薩摩半島の池田湖もカルデラで、カルデラ湖としては九州最大の湖となっています。

(Photo by ISSA)
海外のカルデラ
以前、赴任した東アフリカには、ンゴロンゴロ (注7) という名のカルデラがありました。
(注7) "Ngorongoro"とは、スワヒリ語で「巨大な穴」を意味する(スワヒリ語には「ン」から始まる言葉が存在)

《Google Earth》

《Google Earth》
初めてここを訪れたとき、何だかとても懐かしい感覚にとらわれました。

(Photo by ISSA)
凹地の大きさ、眼下一面に広がる草原、外輪山の広がり具合などが、阿蘇の景色にとてもよく似ていたからです。

(Created by ISSA)
この話は、また別の機会に🤗
おわりに
カルデラが織りなす山並みは、牧歌的風景と相まって、国内はもとより、世界的にみても、極めて素晴らしい景観を形成しています。
実際、昨年の訪日外国人インバウンド観光客数も上位にランクインしています。

(Photo by ISSA)
昨年、母が亡くなり、実家も引き払って、私にはもう故郷で帰る場所が無くなってしまいましたが、
祖父母や両親がこよなく愛し、そして私自身もいつしか愛してきた、沢山の懐かしい思い出が詰まった阿蘇カルデラは、
この先、何処でどのような暮らしをしようとも、生涯、私の「心のふるさと」であり続けるでしょう。
雄大な景観と、優しかった祖父母や両親との思い出と共に、これからもこの思いを大切にしていこうと思います🍀