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後輩以上、恋人未満、カタストロフ寸前
4月7日、月曜日。
わたしの人生よりも長い一日は、一通のメールから始まった。
◆◆◆
『入学おめでとう、陽織! ってのも今更か。実は、陽織に伝えたいことがあるんだ。始業式が終わったら、部室棟裏にまで来てくれないかな。待ってます。』
「先輩がわたしにメールをくれるなんて……! よし、このメールを開いた指は一生洗わないぞ。今決めた」
すぐさま右手の人差し指に包帯を巻く。
「……にしても
明晰頭脳封印探偵・藤巳しおりの逃避録【豪華客船ハデス号の沈没】
僕は頭良すぎて死について考えまくってしまうので常に意識を朦朧とさせている探偵の助手をしている。
「へ、へへへ……わらひもしゅきぃ……」
彼女がその探偵だ。今はVRゴーグルを付けながら、ASMR音声で快感を常に感じ続けることによって思考を停滞させているらしい。たいてい、目の焦点が合ってなくて、よだれを口から垂らしているので一見さんにはクスリでもやってるのかと思われているが、彼女はそういった寿
レデカトロモーフ神話構築考
「ウヌは知ってるか? レデカトロモーフを」
「もちろん」
「知らない人とかいんの?」
「あのユーチューバーの!」
「昔、ニコニコを席巻したボカロPか。懐かしいなあ」
「クイズ番組の常連ですよね」
「フォロワー数がトランプ大統領に並ぶ有名人でしょ?」
「東京オリンピックで彼女が活躍するの、楽しみです!」
「甲子園決勝で異例のコールドゲームを成立させた伝説、ナマで見てたんですけど未だに信じられないな
陶磁迷宮都市笠間~不動の階層管理者~
佐白山の山頂、笠間城跡にて。
拳銃を持って、牧野は焦燥感に駆られていた。
対陶弾にはまだ余裕があるが、相手は陶化光線を放つ上級陶磁人形――階層管理者だ。現状の武器では心もとない。
牧野は傍らの相棒、松井を見やる。
苦悶の声を漏らす松井の右腕は陶化されきっていた。肺も一部陶化されてるかもしれない。
陶化された肌はいつもの白さを失い、笠間粘土をそのまま焼いた時のような、赤黒いものになっ