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食べる宝石GODIVA!!その甘さの裏に潜むある貴婦人の物語
1968年、ベルギー王室御用達の拝受を賜って以来、”食べる宝石”とまで謳われたGODIVA。
創業者ジョセフ・ドラップスは、ベルギーのブリュッセルで代々続くチョコレート職人の家系に生まれた。ドラップスは、当時の一般的なチョコレートとは異なる「高級で美しいチョコレート」、それも芸術品と言われるほどのものを作りたいというビジョンを持っていた。
それで1926年に「GODIVA」を創業した。
ただのチョコレートではなく、気品があり、美しく優雅で高貴な逸品でありたい。「GODIVA」という名と、馬上で優雅な髪を靡かせる裸体の女性ロゴこそがそのブランドイメージに一役買っている。
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ところで、ブランド名はよく創業者の名がつけられることが多いが、「GODIVA」はそうではない。
実は「GODIVA」とは、11世紀実在した貴婦人の名であることをご存知だろうか。そして馬上の裸体女性こそがそのGODIVA夫人の壮絶な伝説の象徴でもあるのだ。
それは今の日本人のように悪政による重税に苦しむある地方の歴史だった。
Lady Godivaは11世紀の実在した貴族出身の女性で、イングランドのマーシア地方の有力領主だったレオフリック伯の妻でした。
とても敬虔なクリスチャンで領民思いのLady Godivaは暴君の夫とは違って慕われていた。
中世のイングランドでは、領主が農民から税を徴収することで領地を維持していた。そのため、領主の税率設定は農民の生活に直接影響を与える重要な問題でした。
レオフリック伯は度重なる戦争への出費で、領民に重税を課していました。
領民の顔から笑みが消え、子供達の遊びではしゃぐ声は手伝わされる仕事の辛さに泣き声に変わる……。
マーシア地方全域に悲しい空気が漂っていた。
Lady Godivaの元へ領民は相談するようになり、Lady Godivaもどうすべきか悩ましい日々を送っていた。
暴君レオフリック伯に何か言葉をかけたところで聞いてはくれないというのはLady Godivaにはわかりすぎるほどわかっていた。
しかし、とうとう見過ごせなくなり、ある日、レオフリック伯に懇願しました。「どうか、領民たちから重税を取り下げてください。彼らは疲れ果て、生きる力さえ失いかけています。」
女ごときに口答えされることが気に入らないレオフリック伯は怒張した毛細血管で目が赤くなり、殺気立たせながら、
「妻よ、税を取り下げるなどありえぬことだ。だが…」
レオフリック伯は口の端に軽薄な笑みを浮かべながら、
「もしお前が裸で馬に乗り、街中を回るなら、その勇気に免じて税を取り下げてやろう。」
と言葉を吐き捨てながら言った。当然、Lady Godivaは、領民の苦しみと自身の恥じらいを天秤にかける夫の仕打ちに愕然とし、涙する。
それは到底受け入れられない、屈辱的な条件でした。
しかし、Lady Godivaには”領民を救いたい”という強い信念があった。そこで裸に馬に跨り、街を回る決心をする。
しかし、召使たちは驚愕し、「Lady Godiva様がそのような辱めを受けるならば我々は我慢する」とLady Godivaに思いとどまるよう説得する。
召使の口からこの噂はあっという間に広がってしまう。
Lady Godivaは涙を流し、震えながらも、レオフリック伯の命令通り、美しい裸体を晒し、馬に乗って街に出てしまう。領民は驚愕し、Lady Godivaを乗せた馬が見えるや否や、窓やカーテンを閉め切り、自ら目を閉じたのだった。
Lady Godivaの裸体の巡行中、街は誰一人として表に出ることなく、またLady Godivaを辱める事はなかったという。その後、驚愕したレオフリック伯は約束通り、重税を撤廃したと伝説は語っている。
このLady Godivaの強い信念、優雅さ、高貴さ、慈悲や自己犠牲の精神が高級チョコレートにぴったりだとジョセフ・ドラップスは考え、ブランド名とロゴにしたという。
ちなみにこの「GODIVA」のラテン語の意味は「神からの贈り物」という意味になる。1926年当時は第一次世界大戦後、世界が疲弊した時代背景にあって、ドラップスはチョコレートという大衆菓子に魔法をかけ、美しくデザインされたパッケージに、チョコレートを宝石に変えた。
そうして一時だけの繊細な甘い贅沢を完成させたのだ。それは戦争の辛い経験や悲しみを一時でも忘れさせてくれる、まさに「神からの贈り物」となったのだ。そしてそのLady Godivaの精神は今も脈々と受け継がれている。
明日、GODIVA買ってこよぉっと・・・。