【再掲:連作短歌】恋人を喪った安田短歌2018展「それでも明日はやってくるから」

悲しみと愛欲疼く新宿の熱量/光線、どっちが熱い?

知らぬはずなのにまつげの重みとか似ちゃってるから仕方ないよね

体温を人と交換する度に笑顔の君の画素数荒れる

「やすだくん」って呼んで欲しいなんて言う気持ちの悪いお願いでした

『恥ずかしいからこっち見ないでよ、安田くん。すっぴん可愛い? それ悪口ね!』

沈黙の業火に焼かれ夢に見る それでも天国、憧れてますかね

薄暗いベッドルームでしか煙草吸えないんだよ、魂見たくて

僕たちは愛されるためだけに生まれてたんだよ(裁判員:君)

どうせなら俺のワイシャツ着せとけば良かったんだな、後悔するなら

決断を迫るな、ハイパーフィクションだろ? どうせ空のベッドだって

結末だとか赤い糸探してる 都電の座席はもう満席だ

ただいまを癖づけたのは約三年前 誰もいない部屋なのにね

捨てられないものが多すぎて嫌になる レシートなんかもう白紙だよ

ラベリングされた書類棚上の二人は埃で更新される

青い鳥さえずり紡ぐ僕たちは不在を認める告知しかできない

対策を練るにはifが多すぎて何回やってもあの日になるな

「永」の字で試し書きする万年筆 朱色で君を書くためだけに

いつだって仕事ですから僕だっていい大人です泣きませんから

最前で最善尽くし祭壇で最初のさよなら探して盃

紫の折り鶴たちに黙祷を捧げる長月 僕のはどこだ

埋まらないジグソーパズルのようだった 惨めにすがれば良かったのにな

『お別れの日もあるのかな?でも私、浮気だけはね、許さないから』

心臓のど真ん中には君がいる 穴を広げて埋もれる君が


※映画「シン・ゴジラ」の作中に登場する文部科学省研究振興局基礎研究振興課課長 安田龍彦(演:高橋一生)が、ゴジラの放射熱線で恋人を喪ったという仮説の設定で作られている短歌です。公式による明言はありません。


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