安田短歌連作「思い出は味」
「安田くん、おはよう朝だよ。目玉焼き上手に焼けたの!半熟でいい?」
当たり前のように並んでたトーストも今では焼かずに立ち食い
右肩に積んでた書類の山が低くなり伏せった写真立てが見つかり
カップ麺だらけのデスクを見られたら「ダメじゃん!バカでしょ」と言われるだろうな
食堂の味噌汁いつも具がキャベツ レタスよりは美味しいかもな
海ほたる瞬く間はコンクリに埋もれし人が今世に出戻り
魂の行方を知るため燻らした紫煙は君の嫌いなマルボロ
環状線回れよ回れ 終点は黒龍現る前日がいい
本当は半熟よりも堅焼きが好きだと言えば忘れたのかな
ただいま、という癖だけが抜けなくて黄色のセーター椅子に掛けてる
「俺の方が多分美味しく作れるな」よく言ったよなカレーはシャバシャバ
焦げ付いたフライパンを積み上げる 殻入り空焚きした白米の山
そりゃ選択肢としてはありだよ、でも君のエンドロールは50年後だ
コネ使い世界に掛け合い尋ねたら、あの半熟も再現できるか
「安田くん、おやすみ。そろそろ忘れてね?泣いてもいいよ、ご飯は食べてね」
※映画「シン・ゴジラ」の作中に登場する文部科学省研究振興局基礎研究振興課課長 安田龍彦(演:高橋一生)が、ゴジラの放射熱線で恋人を喪ったという仮説の設定で作られている短歌です。公式による明言はありません。
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