仮名表を考えてみた (ローマ字つき)
ローマ字表記を考えていたら、仮名表 (五十音図) も気になってきちゃった。気になった点、というか目的は下記になる。
現代日本語で使う仮名表記を発音との関係とともに、整理された形で表にしたい。
そして、仮名表記に対応するローマ字表記を明確に定義したい。
また週末の余暇に考えてみた。結論を下記の表に掲げる。そこに至る経緯は後述する。基本的に、「現代仮名遣い」と「外来語の表記」を基にし、現状との整合性を考慮して整理・拡張する。当初想定より規模が大きくなってしまった…
#仮名表 #五十音 #ローマ字 #カタカナ #ひらがな
![](https://assets.st-note.com/img/1728210059-4JyrfgwIalSYRdBxmKzFickN.png?width=1200)
一般的な五十音図
おそらく下記のような五十音図が現代語の一般的な仮名表であろう。下記は1986年内閣訓令第1号「現代仮名遣い」に基づくものになる。なお、下線が付いた文字は、特定の場合にのみ使用するとされている。
![](https://assets.st-note.com/img/1726923151-ImZuzbgVEh6lnDPUj495cBNr.png?width=1200)
五十音図の気になる点
並び順
五十音図の並び順は、Wikipedia の記載によると、梵字の字母表にしたがったものらしい。ただ、「あかさたなはま」までは規則的に並んでいる様に見えるが、「やらわ」は特殊に見える (ハ行は昔の [p] の音と解釈して)。IPA の発音記号表を眺めると、調音位置が奥から「口蓋音 k → 歯茎音 s t n → 唇音 p m」の順番で、同じ調音位置では「摩擦音 s → 破裂音 k t p → 鼻音 n m 」順番となっている様に見える。しかし、ヤ行とワ行は接近音、ラ行は歯茎音となる。ラ行は流音、ヤ行とワ行はわたり音とも言われる、ちょっと特殊な音 (半母音) のようなので、後ろに括りだしたのだろう。個人的には、ヤ行とワ行は母音のア行に近く、隣接していた方が良いように感じる。
また、濁音・半濁音、拗音の表が別に分けれており関係が分かりづらいように思う。
外来語表記
外国語由来のカタカナ語でよく使われるものは、1991年 内閣告示第2号「外来語の表記」で掲げられているが、五十音図には含まれない。現代語に対応できていないとも言える。ローマ字表記まで考えるとかなり混沌としているように思う。
私案の変更箇所
掲載する仮名文字と並び順
外来語のみに使う表記も表の中に入れる。カタカナ表記のみとする。
「外来語の表記」に記載されていないものも、表の整合性や個人的判断で追加し、括弧付けで記載した。
現代語では使用しなくなった「ゐ」「ゑ」「くゎ」「ぐゎ」も固有名詞などで使われることはあるため記載する。
「現代仮名遣い」に記載されていないため括弧付けとした。
近年、Unicode にヤ行の「い」と「え」、ワ行の「う」が変体仮名として追加されている (Kana Supplement, The Unicode Standard, Version 16.0) が、現代語で使われることはないので考慮しない。
現代語で使うことは無いと考えられるが、表の整合性を考慮しヷ行も記載する。
ヷ行やヴァ行は、その音 (子音が [v] や [β]) からファ行の濁音扱いとする。
サ行とザ行のイ段の口蓋化が進んでいない音として、「スィ」と「ズィ」を括弧付きで記載する。
「シィ」と「ジィ」でも同じような音が表現できると思うが、小書き母音を使った長音表記と区別が出来ないため採用しない。
台詞などでまれに用いられるア゙行も括弧付けで記載する。音としてはハ行の有声音と解釈する。ハ行のウ段は [h] の音ではないため、ア゙行のウ段はないものとする。
小書きの「ヵ」や「ヶ」は「箇」や「個」の簡易表現であり、漢字であると解釈し記載しない。
半母音のヤ行とワ行はア行の後に移動する。
ラ行やワ行と関わりが深い (?) ハ行の位置も気になったが、現状から変える強い理由が無かったのでそのままとする。
清音 → 半濁音 → 濁音 の順で同じ表に並べる。
拗音を直音の後に並べる。
口蓋化している直音のイ段は、拗音の行と共通とする。
「キィ」や「リィ」などを拗音の記述として認めない。これらは長音表記だと解釈する。
拗音のエ段を「ェ」で記述し、括弧付けで採用する。
フャ行やヴャ行のエ段は、ファ行やヴァ行と競合するため「ィェ」を使う。
テャ行とデャ行のエ段も「ィェ」を使う。「テェ」だと、「テ」の長音表記にも見えるため。
直音・濁音・拗音の行をまとめる「系」を作る。
例えば、ア行・ヤ行・ワ行がア系になる。
同系内の並びは子音の関係が分かりやすいようにした。
ひらがなの長音記号を用いない長音表記に関しての記載も追加する。
「現代仮名遣い」に基づくが、必ず長音として発音されるわけではない。
小書きによる長音表記も括弧付けで記載する。
ローマ字表記
前回の私案に基づいたローマ字表記 (発音との関係を考慮しボン式ベースとするが仮名表記からの厳密な翻字も実現する) とするが、不足がある点を追加する。
厳密翻字を志向する場合、日本式 (訓令式) ベースとすることが多いと思うが、あえて広く普及しているヘボン式ベースとしている。
台詞などで使われる非標準的な仮名遣いも含めて、極力厳密に翻字できるようにする。
仮名表記ごとに (発音が同じであっても) 異なるローマ字表記を割り当てる。
ワ行に関しては、「わ」以外の音がア行の音になってしまっているため、w は「空」の子音と定義し、wa だけ例外とする。
「ゐ」は wi と書くが、実際は i と読む。
音のある w の子音を示したい場合は、ww とする。つまり、ウィは wwi となる。ウァ wwa と ワ wa は同じ音の扱いになるが、ウァの方が円唇化している気がする。
クヮとグヮは kwa と gwa と表記するが、w は空の子音として、実際は ka と ga と読む。
音のある w の子音を示したい場合は、同様に kww と gww とする。つまり、クァは kwwa となる。
「シークヮーサー」のクヮはカではなくクァを発音されていたりするが、例外的という扱いで… (そもそもカナ表記が安定していない)
ヴァ行に関しては v を使う。ヷ行に関しては、ヴァ行と同じ音だと考えられるが、表記を分けるために vw とする。この w も空の子音である。
日本式ローマ字と対応する仮名表記が違うものは ' を挿入して区別する (ti は日本式で「ち」であるため、「ティ」は t'i とする)。ただし、混乱無い場合は、' を省略可能とする。
ア゙行に対しては、[h] の有声音と解釈し h` という表記を使う。` は濁点のイメージ。
小書き文字の単体表記としてサーカムフレックスを母音に付ける。簡易表現では文字の前に ^ を付ける (î → ^i)。
なお、下付けの意味合いで _ も考えたが、_ は空白の代わりなどで使用頻度が高いので使用を避けた。
長音目的の小書き母音は、y', w', h' を使った簡易表現を認める (キィ → Kiy')。
長音表記は仮名表記を極力保存する。
台詞などで、長音記号で本来長音でないものを伸ばす場合は、マクロン使わずに ~ を使う。
長音記号を重ねる場合、同様に ~ も重ねる (あーー → A~~)。
小書き母音を重ねて長音表記する場合の簡易表現では、y, w, h を重ねる (あぁぁ → Ahh')。
簡易版
外来語用のカタカナなどを排除した (行を非表示にした) 簡易版だとこうなる。
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ローマ字と発音の関係
参考までに、今回の仮名表にあるローマ字と発音の関係も示す。発音は、「日本語教師のための入門言語学-演習と解説- (原沢伊都夫)」や「日本語音声学入門 改訂版 ( 斎藤 純男)」などを参考にし、さらに一部改変している (おそらく間違いがある…)。
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[補足] インターネット上の案
Google で検索してみたが、この種のトピックはあまり見付からなかった。検索キーワードが良くないのか、ドマイナーなのか。後ろ2つは本稿とは主旨が違うようである。
泉谷双藏氏による。日本語学習者を考慮した発音と仮名表記の関係、外来語用の仮名表記に主眼を置いており、主旨は近い。
しかし、既存の行を分解していたり、拗音や濁音は別立てになっており、本稿と差がある。
個人的には、別立ては散らかった感じがあり、拗音と濁音もまとめた方がすっきりするのだが、この感覚は少数派なのかもしれない…
また、ヴァ行は実際に [v] の音で発音している日本人はおらず混乱を呼ぶだけと、排除されている。しかし、実際にはこの表記は使われている (「外来語の表記」にも含まれる) わけで、考慮すべきと考える。ただ、[v] で発音している日本人がいないだろう、という点には同意する。[β] ならばいる気がするが。
「三十世紀の森」というローマ字表記を考察しているサイト内のコンテンツ。
日本式 (訓令式) ローマ字で対応できていない「外来語の表記」のローマ字表記を考察しており、主旨は似ている。
本稿はヘボン式ベースなのが異なる。
日本ローマ字会が現代仮名遣いの翻字として1999年に提案したものだそう。が、一次情報は見つからなかった。
長音記号は直前の母音の繰り返しに置き換えるルールのようだが、それは翻字として良いのだろうか…
カタカナが苦手な子に試してほしい新時代のカタカナ表 (youtube.com)
言語系 VTuber はちあ氏によるカタカナ表 (外来語表記向け)。やはり、拗音や濁音は別表記である。また、ひらがな表 (和語表記向け)は既存の五十音図がよいだろう、としている。
外来語用のカタカナ表記に特化しており、若干主旨が違う。
五十音表を改定することについての考察 : 新・新しい日本語を作る会 (blog.jp)
「新・新しい日本語を作る会」というサイト内のコンテンツ。
仮名を追加したりして、色々変えている過激 (?) な案。
現実的には実用性に欠けるように見え、大きく主旨が違う。