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小市民シリーズ番外編『巴里マカロンの謎』(2020)紹介と感想

米澤穂信『巴里マカロンの謎』東京創元社, 2020


収録作品あらすじ

巴里マカロンの謎(2016)
新しくオープンした店のマカロンを食べに名古屋まで来た小佐内さんと小鳩くん。美味しくマカロンを堪能するはずが、ティー&マカロンセットについてくるマカロンは3種類のはずなのに、席を離れていた小佐内さんの更には4種類のマカロンが乗っていて……。

紐育チーズケーキの謎(2017)
礼智中学の学祭でお菓子作り同好会が作るニューヨークチーズケーキを目当てに、日曜日に学祭まで出向いた小佐内さんと小鳩くん。無事にチーズケーキを味わい、小佐内さんは自身を慕う古城秋桜と一緒に学祭巡りへと出向いた。一人で学祭を回っていた小鳩くんが、ふと窓の外を見ると小佐内さんと走って来た男子がぶつかる現場を目撃した。急いで現場に走った小鳩くんは、一つの謎を解くことになる。

伯林あげぱんの謎(2018~2019)
クラスのアンケートを届けに新聞部の部室へ向かった小鳩くんは、〈4つの揚げパンのどれかにマスタードが入っていたはずだが、誰もマスタードを食べたことを認めない〉という謎の解明を健吾に頼まれた。本当は良くないけど健吾の頼みだからと納得させて、小鳩くんは不可解な謎の解明に乗り出す。

花府シュークリームの謎(2020)
年明けから甘味を食べに行った小山内さんと小鳩くんは、古城秋桜が無実の罪で停学になったという相談を受け名古屋へと足を運ぶ。「あなたの敵が誰なのか、本当に知りたい?」と小佐内さんに問われた秋桜は、「はい」と首肯した。その返事を受けて、小佐内さんは誰がなんのために嘘をついているのかを明らかにするために動き出す。


紹介と感想

小鳩くんと小佐内さんが1年生の9月から1月にかけて遭遇した謎を描いた連作短編集になります。

どの作品も小市民シリーズらしい苦みがありますが、番外編らしく小鳩くんや小佐内さんの業は描かれつつもメインではありませんでした。
そのため、苦みはありつつもユーモラスな面が強く感じられる作品集になっていたと思います。

特に、巻き込まれ体質の小佐内さんの一挙手一投足が過去最高にかわいく感じました。
かわいらしく感じながら、それは彼女の表面しか見えていないぞと自分に対して声かけしていました。

もちろん、小鳩くんのナチュラル失礼な心の声も冴えわたっており、良いユーモアを感じさせてくれました。

事件自体も面白いものが多く、特に「伯林あげぱんの謎」が、不可解な〈なぜ誰もマスタード入りのあげぱんを食べなかったのか〉という謎を少しずつ情報収集しながら丁寧な推理で解いていき、物語としてのまとめ方を綺麗だったので好きでした。

 ぼくは小佐内さんと共に小市民の道を歩むことを誓っている。小市民たるもの、無関係の団体の困りごとに軽々しく首を突っ込んだりはしない。
 けれど、ほかならぬ堂島健吾に助けを求められたとあらば、まことにやむを得ない。苦渋の決断だけれど、少しでも健吾の力になれるのなら、どんな相談でもおやすいご用だ。
「いいとも、なにがあったの」
「嬉しそうな顔しやがって……」

米澤穂信『巴里マカロンの謎』東京創元社, 2020, p.153
内心で言い訳をしながらも謎に関われることで嬉しそうな小鳩くん

メディアミックス一覧

アニメ『小市民シリーズ』(2024年7月~9月)
 第5話「伯林あげぱんの謎」

小鳩くん達が2年生の時の事件へ変更になっており、新聞部のメンバーが杉が五日市へ、飯田が瓜野へ変更になっています。大筋は、時間内に収まるように一部省略はありますが、原作に忠実な映像化となっています。


シリーズ一覧

01.春期限定いちごタルト事件(2004)
02.夏期限定トロピカルパフェ事件(2006)
03.秋期限定栗きんとん事件 (上)(下)(2009)
番.巴里マカロンの謎(2020)
04.冬期限定ボンボンショコラ事件(2024)

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