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浅見光彦シリーズ長編12『美濃路殺人事件』(1987) 紹介と感想
内田康夫『美濃路殺人事件』徳間書店, 2015
あらすじ
愛知県犬山村の明治村で殺された高桑雅文。凶器は小刀で、和紙に包まれて捨てられていた。
美濃紙の取材で岐阜県美濃市を訪れていた浅見光彦は、旅館のニュースで事件を知るが、被害者の顔に見覚えがあった。
数日前に東京の宝石商・月岡和夫が車の中に大量の血痕を残して失踪した事件がワイドショーで報じられた際に、月岡家へ押し寄せるマスコミを制している被害者をテレビで見ていたのだ。
月岡和夫には借金があり、狂言誘拐ではないかと騒がれていた。
その後、明治村で和夫の娘・三喜子と知り合った光彦は、自分が事件を捜査することを告げるのだった。
光彦は、凶器を包んでいた和紙に導かれて、岐阜県美濃市から宮城県白石市へと事件の影を追いかけていく。
紹介と感想
ドラマでは数えきれないほど観てきた浅見光彦シリーズですが、原作を読むのは多分3冊目くらいです。
疎開児童の背景や和紙の知識は興味深く、事件の結末も浅見らしいと思いましたが、それぞれの要素の絡み方がやや物足りないかなと思いました。
特に、事件発覚のきっかけとなった高桑殺しに引っかかりを感じる箇所が多かったです。
捜査を誤魔化す為とは言え、なぜ明治村だったのでしょうか。また、足が付きにくいとはいえ和紙を使ったのにも疑問はありますが、そもそもなぜ40年以上も和紙を手に取りやすい所に保存しておいたのでしょうか。
和紙やクリ小刀を身近に置いておいたところに、疎開当時の屈折した思いが残っていると見ることも出来ますが、そこまで深読みするには犯人の存在感が作品の中で弱いと思ってしまいました。
とはいえ、読んでいる間はしっかり面白く読ませてもらいました。
浅見に限らずですが、ドラマで見ることが多かった作品はもう少し原作を追いかけたいところです。
これ以上の悲劇を招いてもいいなどとは、浅見はとても思えない。事件に関わった当事者たちだけが裁かれて、残された者たちには、彼等が失ったのと同じ程度の平穏と幸福を贈られる権利があってもいいではないか——と浅見は思いたかった。
自分の方法が正しいのか懊悩する浅見
映像化
水谷豊・主演『浅見光彦ミステリー』
第4話「美濃路殺人事件」(1988)
中村俊介・主演『浅見光彦シリーズ』
第34話「美濃路殺人事件」(2009)【中村版のみでは第20話】