アガサ・クリスティー『三幕の殺人』映像化作品 紹介と感想
ピーター・ユスティノフ主演 ドラマ版 第3作『三幕の殺人』Murder in Three Acts（1986／米）
舞台がアカプルコに変更されており、それに伴い登場人物名や使用されている毒が変更されていますが、物語のプロットは米版原作に忠実に製作されています。
前2作と同じく舞台が制作当時に変更されており、ポアロがロサンゼルスでパソコンに苦戦しながら回顧録を書いているという驚きのシーンもあります。
捜査パートでは原作ではあまり深く触れられなかったストレンジ邸の秘密の抜け穴も登場するなど、展開部分に若干の変更があります。
この当時のアメリカテレビ映画らしい軽さが受け入れられない人もいそうですが、そこを受け入れれば原作の映像化としてしっかり楽しむことが出来ると思います。
なにより、全盛期を過ぎた二枚目俳優というチャールズの役柄にトニー・カーティスがピッタリハマっており、ピーター・ユスティノフとトニー・カーティスを観ているだけでも楽しめます。
もちろん粗が無い訳ではありませんが、今観ても中々楽しめる娯楽ミステリー作品となっています。
スタッフ
脚本／スコット・スワンソン
監督／ゲイリー・ネルソン
時間／94分
キャスト
エルキュール・ポアロ／ピーター・ユスティノフ
アーサー・ヘイスティングス／ジョナサン・セシル
チャールズ・カートライト／トニー・カーティス
エッグ／エマ・サムズ
リカルド・モントーヤ／フェルナンド・アレンデ
コル マテオ／ペドロ・アルメンダリス Jr.
シンシア・デイトン／リサ・アイクホーン
ストレンジ医師／ダナ・エルカー
ミルレー／フランシス・リー・マッケイン
ディジー・イーストマン／マリアン・マーサー
アンジェラ・スタフォード／ダイアナ・マルドア
フレディ・デイトン／ニコラス・プライアー
ジャネット・クリスプ／コンチータ・トメイ
バビントン夫人／ジャクリーン・エヴァンズ
デヴィッド・スーシェ主演『名探偵ポワロ』（英） シーズン12 第1話『三幕の殺人』Three Act Tragedy（2010）
原作に倣って舞台を意識した演出が特徴的な一作であり、登場人物の顔と名前を覚えるのが苦手な人も嬉しい人物紹介もあります。
サタースウェイトがカットされ、そのポジションにポワロが収まる改変がありますが、基本的には原作に忠実な物語です。
エッグとオリバーの描写の追加を中心に、原作だと存在感の薄い容疑者達の印象が台詞の追加などで強化されていたり、原作では会話で済まされていたイベントを実際に描写することで各キャラクターの存在感やドラマ性を増しています。
ポワロが最初から入っていること、全体的にシリアスな空気で映像化していることもあり、素人探偵達の探偵ごっこ感が原作よりも薄まっています。
何より、ポワロとチャールズが友人の設定となったことで、原作のオチに強い悲劇性が加わりました。
細かい部分だと、ミルレーの母親が既に死んでいたりもします。
また、ホワイトヘイヴンで捜査会議をすることが多く、ジョージの出番も意外と多いため、レギュラー好きとしては嬉しかったです。
イギリスドラマに馴染みがある人にはお馴染みのマーティン・ショー演じるチャールズの主演舞台を楽しみながら、最後まで面白く観ることができる良いドラマ化でした。
スタッフ
脚本／ニック・ディア
監督／アシュレイ・ピアース
時間／89分
キャスト（NHK版／ディアゴスティーニ版）
エルキュール・ポワロ／デビッド・スーシェ（熊倉一雄／大塚智則）
ジョージ／デイビット・イェランド（坂本大地／真田雅隆）
チャールズ・カートライト／マーティン・ショー（佐々木勝彦／西垣俊作）
エッグ・リットン・ゴア／キンバリー・ニクソン（坂本真綾／筒井絵理奈）
メアリー・リットン・ゴア／ジェーン・アッシャー（相沢恵子／浅井晴美）
バーソロミュー・ストレンジ／アート・マリック（押切英希／龍波しゅういち）
シンシア・デイカーズ／アナスタシア・ヒル（唐沢 潤／渡辺ゆかり）
デリク・デイカーズ／ロナン・ヴィバート（水内清光／畠山豪介）
ミュリエル・ウィルズ／ケイト・アッシュフィールド（山像かおり／御崎真美）
オリバー・マンダーズ／トム・ウィズダム（浜田賢二／佐藤俊介）
ミス・ミルレー／スザンヌ・バーティッシュ（安芸けい子／岸越麻都住）
バビントン牧師／ナイジェル・ペグラム（曵地伸之／中台吉一）
バビントン夫人／アンナ・カートレット（羽鳥靖子／北林早苗）
その他の映像化
『クリスティーのフレンチ・ミステリー』Les petits meurtres d'Agatha Christie（仏）
シーズン2 第21話「Drame en trois actes」（2018） ※日本未紹介
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