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最後の晩ごはん20『最後の晩ごはん 優しい犬とカレーライス』(2024)紹介と感想

椹野道流『最後の晩ごはん 優しい犬とカレーライス』KADOKAWA, 2024


あらすじ

今日も海里は淡海邸で朗読の練習を行っていた。
サンドイッチを食べながら様々な話をした日の帰り、淡海邸の前に現れた黒い犬に導かれた海里と淡海は、近所にある邸宅でとあるものを見つけてしまう。
淡海は、行き先の無かった黒い犬を成り行きからマヤと名付けて一緒に暮らすことにした。
その頃から海里は不思議な声を聞くようになって…。


シリーズ概要

スキャンダルに巻き込まれ芸能界を追われた五十嵐海里は、故郷へと帰って来た。しかし、実家に帰ることも出来ず困り果てていた時に、芦屋の定食屋・ばんめし屋の店主、夏神留二に拾われ、ばんめし屋に店員として住み込むことになった。その後、長い時を経て意志を持った眼鏡・ロイドにも出会い、時折幽霊と関りをもったりしながらの新生活が始まった。

大好きなマリみても新刊が出なくなり、次なるシリーズ小説を求めていた時に出会った本シリーズ。その時点で3巻位まで出ており、面白くて一気に読みました。以降、新刊を楽しみにしているシリーズになります。
連続アニメや連続ドラマのように、次が楽しみな定期的に刊行される小説のシリーズがあると日々の生活の中に張りのある楽しみが出来て嬉しいので、どこまでも続いて欲しい反面、シリーズの終わりが見えて来た気がして寂しくもあります。


紹介と感想

1年以上というシリーズ最長の期間をあけて出版された20作目は、淡海先生に新しい家族が出来るまでの物語でした。

前回は海里と一憲をメインに、少しずつ前へ進んでいる五十嵐一家の姿を描いてシリーズの終わりを意識させるものだったが、今回は海里はサポートに回り、妹・純佳が旅立った淡海へのプレゼントと、繰り返す体調不良に鬱屈を募らせる李英の姿を描いた回でした。

とはいえ、物語では海里の役者修行の様子もしっかり描写されており、朗読でチップを貰えるようになったりと役者として前進している様子がありました。

15作目『初恋と鮭の包み焼き』以来の淡海先生当番回になります。
今回はレギュラー以外は明確な人間キャラは登場せず、シリーズでも珍しいタイプの霊と一匹の犬がメインの物語です。
人間じゃなくても相手を思う気持ちがあるはず。古来から、人は擬人化を通して他の生物について考えてきましたが、今回は正にそんな物語でした。

色々と問題がある部分はありつつも、淡海五朗も本作の登場人物らしい優しさを持っている人物であることが改めて分かり、ほっこりとしました。
読後は、無性に手作りサンドイッチとカレーライスを食べたくなる一冊でした。

次回は誰に焦点があたるのか。少しずつ進んでいく物語の次も楽しみに待ちたいと思います。

「もっと早く、気づいてやれたらよかった。ごめんよ。でも……松の葉を落として知らせてくれたってことは、僕にもまだ、君のためにできることはある? 教えてほしい。君は、マヤの家族みたいなものだからね。きちんとお別れできるようにしたいよ」

椹野道流『最後の晩ごはん 優しい犬とカレーライス』KADOKAWA, 2024, p.181
「四章 もの言わぬ目」より 魂の願いを叶えたいと伝える淡海

シリーズ一覧

01.最後の晩ごはん ふるさととだし巻き卵(2014)
02.最後の晩ごはん 小説家と冷やし中華(2015)
03.最後の晩ごはん お兄さんとホットケーキ(2015)
04.最後の晩ごはん 刑事さんとハンバーグ(2015)
05.最後の晩ごはん 師匠と弟子のオムライス(2015)
06.最後の晩ごはん 旧友と焼きおにぎり(2016)
07.最後の晩ごはん 黒猫と揚げたてドーナツ(2016)
08.最後の晩ごはん 忘れた夢とマカロニサラダ(2017)
09.最後の晩ごはん 海の花火とかき氷(2017)
10.最後の晩ごはん 駆け出し俳優とピザトースト(2018)
11.最後の晩ごはん 聖なる夜のロールキャベツ(2018)
12.最後の晩ごはん 秘された花とシフォンケーキ(2019)
13.最後の晩ごはん 閉ざした瞳とクリームソーダ(2019)
14.最後の晩ごはん 地下アイドルと筑前煮(2020)
15.最後の晩ごはん 初恋と鮭の包み焼き(2021)
16.最後の晩ごはん 後輩とあんかけ焼きそば(2021)
17.最後の晩ごはん 後悔とマカロニグラタン(2022)
18.最後の晩ごはん ゲン担ぎと鯛そうめん(2022)
19.最後の晩ごはん 兄弟とプリンアラモード(2023)
20.最後の晩ごはん 優しい犬とカレーライス(2024)

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