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大川橋蔵主演「銭形平次」(1966~1984/全888話)+映画1本(1967)

1966年5月4日から1984年4月4日まで全888話が放送された、大川橋蔵が銭形平次を演じたシリーズです。
初期の10年位は毎週休みなく放送されていました。

同一主演で全888話を演じたドラマシリーズは世界最長の記録となります。
(ちなみに、松平健が徳川吉宗を演じた「暴れん坊将軍」は、全823話になります)
また、この時期のドラマとしては珍しく、全888話の映像が全て残っているドラマでもあります。


ドラマ『銭形平次』(1966~1984)について

勧善懲悪捕物帳ドラマとしてのすべてが表現されているドラマであり、自分が時代劇全般に興味を持つ事になった大切な作品です。

個人的にドラマに感じる魅力を幾つかあげると、

・2.5枚目を演じるのが上手い大川橋蔵だからこその、かっこいいだけじゃない、日常の場面などに感じる庶民としての平次親分の魅力(2.5枚目としての魅力が分かりやすく見られるのが、大川橋蔵が全編に渡って二役を演じた第644話「にせ平次奮戦記」(1978)だと思います)。

・大川橋蔵の美しい殺陣が存分に堪能できること。しかも、二丁十手という唯一無二の特徴により、十手でも派手で面白い立ち回りになったと感じる。

・八五郎、お静、万七など、平次以外のキャラクターもしっかりと際立たせており、レギュラーキャラクターたちのやり取りだけでも楽しい。
 特に遠藤太津朗が演じる万七は、愛嬌溢れる憎めないライバルポジションとして、その後に与えた影響や完成度を考えても唯一無二の素晴らしさがあります(『日本個性派俳優列伝〈3〉遠藤太津朗』という本に、大川橋蔵と遠藤太津朗を中心に、銭形平次についての記述がありオススメです)。

・分かりやすい人情物から謎解きがメインの話、派手なアクションがメインの話まで様々な種類の物語が楽しめる。

・結構な異色作に思える話でも、根本の所で「銭形平次」というシリーズであることを守っているため安心して観ることが出来る(自分はシリーズの中で異色作を作る場合も、シリーズである以上は守るべき枠があると考えているので、重要な評価ポイントになります)。

などなど、枚挙に暇がありません。

ソフト化は過去にビデオが3本出たのと、映画版がDVDになっているのみですが、配信では現役で観ることができます。
全ての話が残っている貴重な作品でもあるので、是非いつの日か全888話がいつでも見られるような環境が整うように願っています。

執筆時点では、YouTubeの東映時代劇チャンネルで、毎週土曜日に第1話から順番に1週間限定で配信されており、2024年10月時点でそろそろ放送4年目の話数に入ります。また、Amazon Primeの東映オンデマンドでは2024年10月時点で646話目まで配信されています。

テレビ大阪では、2022年から第520話辺りから昼の再放送枠で放送されているようで羨ましい。
時代劇専門チャンネルでも、たまに特集でセレクション放送をしています。昔みたく全話放送を実施してほしいです。


オススメ話数紹介

自分もまだ700話ちょっとしか見ることが出来ていませんが、その中でもお気に入りの話の一部を簡単に紹介していきます。

ドラマ化初期には原作をドラマ化した作品も多く見られます。
第8話「刑場の花嫁」、第12話「狂った火」、第36話「平次屠蘇機嫌」、第43話「お由良の罪」、第72話「五十両うら表」などは、原作に+αの魅力を追加しており特にオススメです。
後期では、第749話「平次・忍術入門」や第799話「雪の夜の密室殺人」辺りが原作ドラマ化作品で面白かったものでした。

敵陣へ潜入するなどの目的で平次が変装する話も定期的にあります。
第177話「人斬り弥平太」、第487話「鬼の棲む町」などが面白く感じました。
後期にも、第710話「御用船大爆破」のラスト、お面をつけた平次が唄い踊りながら絵解きをする場面や、第790話「平次軍団仕掛ける!」のチームでの大掛かりな潜入作戦などが印象に残っており好きな話です。

江戸を離れて事件を解いたり、犯人を護送したりするタイプの話は、いつもと雰囲気が違う事もあり良いアクセントになります。
万七・清吉も一緒の第176話「荒海の虹」、居酒屋の看板娘・お弓ちゃんのおばさんの家へ行く第182話「海猫の唄」、平次と護送中の囚人が命を懸けた旅の中で奇妙な絆を紡いでいく第252話「地獄街道」、お静に万七だけでなく同心・矢吹様も駆けつける第830話「みちのく御用旅」などがお気に入りです。

殺人事件が話に関わらないタイプの話もあります。
旅物でもある第21話「湯治場の休日」、角兵衛獅子の子ども達をメインに描いた第240話「角兵衛獅子の唄」、年に一回ほどある万七メイン回の一つ第441話「万七なみだ酒」、他にも第480話「三十六番目の若様」、第499話「金貸し武士道」、第519話「騙しちゃいけねぇ」、第554話「銭埋む…百三十五両」、第574話「大泥棒平次」、第855話「身代金五百両」など、ドラマの全期間を通して面白い話が揃っています。

第184話「武家の世の中」、第218話「十手の怒り」、第499話「武士道無残」など、原作の銭形平次でも描かれることが多い、武家階級の理不尽に平次が立ち向かうタイプの話(勝手に「侍って奴はもの」と呼んでいます)にも面白い話が多いです。

第52話「幻の二万両」(この話は後に北大路平次と村上平次でリメイクされています)、第102話「御前様は誰か」、第186話「平次の恋」、第220話「螢火の女」、第289話「いつか青空」、第434話「御典医の夢」、第540話「わくら葉の女」、第588話「白浪ざんげ」、第784話「三匹の蟻」、第859話「目撃者」、第869話「平次、暗殺!」、第882話「十手が泣いている」など、まだまだ面白い話が無限にあげられるので、今回はここまでにしておきます。

ただし、最後に最終回である第888話「ああ十手ひとすじ八八八番大手柄」をあげなければなりません。全888中2回しかないスペシャル時間枠で描く(もう一回は第689話「大江戸十手祭り」)、最後の平次の活躍です。
過去のレギュラー陣も出れるだけ再集合しているのも嬉しいですが、ゲストも豪華です。久しぶりの美空ひばりや舟木一夫は、いかにも平次ゲストで出る時の役柄で安心感をくれ、悪役達も内田朝雄に管貫太郎など誰もが見た事ある有名どころが一堂に介しています。他にも、汀夏子、里見浩太朗、高橋元太郎、なべおさみ、松山英太郎、火野正平など書ききれない程のゲストが揃っています。
話は変に奇をてらわず、大きな陰謀にみんなの協力のもと平次が立ち向かう話で、平次親分最後の大立ち回りは、既に体調が悪いとは思わせないほどの迫力に満ちています。エンディングで流れる一連の映像は、後の再放送で観ていた自分でも感動してしまいました。

まだ見てない話も多く、既に見た話でも再見したいものは多いので、これからも平次親分と仲間たちには沢山お世話になると思います。
時代劇になじみがない人にも、少しでも銭形平次の魅力が伝わると嬉しいです。

映画『銭形平次』(1967)

映画は一年目の終わりに製作された「銭形平次」(1967)があります。
平次・万七・清吉以外はドラマ本編とキャストが違い、話のノリもテレビドラマの延長ではなく、東映娯楽時代劇映画の路線です。
映画オリジナル設定で平次が正式に岡っ引になるまでを描いており楽しめますが、やはりドラマとのつながりが薄いのが残念でした。
できれば、ドラマの流れを活かした映画版(できれば原作長編を利用した)が見られると嬉しかったなと、ないものねだりをしてしまう時があります。


レギュラーメンバー

銭形平次/大川橋蔵

八五郎/佐々十郎(1~52)
    林家珍平(53~888)
 お静/八千草薫(1~157)
    鈴木紀子(158~208)
    香山美子(209~888) 

万七/藤尾純(1~52)
   遠藤辰雄(太津朗)(53~888)
清吉/池信一(1~780)
   田井克幸(868~888)(ゝ松もやってる)
留吉/有光豊(780~867)
善太/京本正樹(788~867、888)

笹野新三郎/神田隆(1~52)
      黒川弥太郎(53~104、469)
      根上淳(108~144)
 樋口一平/永田光男(131~787、888)
  榊 兵助/下塚誠(625~665)
青柳伸之介/森田健作(666~787)
矢吹圭一郎/森次晃嗣(788~867、888)
   森川/滝田裕介(868~888)

お弓/鈴村由美(1~157)
   土田早苗(158~260)
為吉/神戸瓢介(53~475)

他にも、一年目の準レギュラーである女岡っ引のお品(宮園純子)と下引の太吉(川浪公次郎)など、ある時期にレギュラー・準レギュラーだった人はたくさんいます。


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