#8 母子保健って? −乳幼児健診 (4ヶ月児健診)−
さて、保健師の仕事の話に戻りましょう。
母子保健の続きで、乳幼児健診についてです。
今まで、母子保健について
を述べました。
このイベントの流れとしては、
妊婦面接→両親学級→新生児訪問
で、その後に、乳幼児健診があります。
乳幼児健診は、保健所や保健センターなどの公的機関で実施される、乳幼児とその家族を対象とした健診です。
健診時期・費用・形式は、自治体によって異なりますが、
私の所属している自治体では、
無料で
4ヶ月児・1歳半児・3歳児の時期に
医師の診察、保健師・栄養士・歯科衛生士・心理士などの専門職による相談・情報提供
を行っています。
(自治体によって異なる、というのは、地域のクリニックなどに委託している、ところもあるという意味です)
まずは、4ヶ月児健診について。
赤ちゃんが生まれて、退院すると、
病院では、2週間健診 or 1ヶ月児健診があります。
その前後で、新生児訪問を実施。
ここまでは、
個人 × 病院
個人 × 公的サービス
ですが、
乳幼児健診は、
同じ時期に生まれた乳幼児とその家族を集めて行う「集団」健診になります。
つまり、「集団」を対象に、その時期に必要と思われる情報を、一斉に発信します。
4ヶ月児健診では、この「集団」であることに着目して
保健師は、事故予防・予防接種・乳がん健診
栄養士は、離乳食
歯科衛生士は、歯磨き
などについて、お話しし、その間に、
問診→診察→個別相談
を実施し、月齢相応の発育発達か、養育者の健康はどうか、チェックしていきます。
そうすることで、個別相談では、
保護者・養育者の「本当に不安なこと」
への相談対応に時間を費やし、スムーズに支援に結びつけることができるように努めています。
なんとなく「集団」健診という形が想像できたでしょうか。
………………………………………………………
では、この4ヶ月児健診の個別相談で、支援が必要だと考えた事例について、ご紹介します。
母親:Cさん 28歳
赤ちゃん:生後4ヶ月10日
健診にて体重増加やや不良で、要経過観察となる
これまでの関わり:
妊婦面接で特に大きな不安事なし
出産経過異常なく母子ともに健康で退院
新生児訪問は生後2ヶ月で実施、産後うつスクリーニング問題なく、その場の助言で不安解消
Cさんの個別相談にて、
診察結果を見ながら、赤ちゃんの体重の伸びが緩やかなので、授乳方法の助言を行い、また1ヶ月後に追加の健診に来てくださいね、と伝えました。
Cさんは、ニコニコと笑顔で私の話を聞いていました。
赤ちゃんは、Cさんのお膝の上に座り、きゃっきゃとお喋りしながら、私の方を見ていました。
「ご機嫌なんだね〜、今日はたくさん人がいるから楽しいでしょ。ママ頑張ってるから、大きくなってるんだもんね〜🎶」
と赤ちゃんに声をかけ、
「じゃあこれで健診は終わりです」
と言おうと顔をあげると、Cさんの目から涙が溢れ出てきました。
「ごめんなさい、私、もう全然自信なくて…」
と。
その後、ポツリポツリと
「母乳だけで育てたかったけど、生後2ヶ月を過ぎたあたりから、だんだん量が減ってきてしまった。」
「ミルクもあげなきゃいけないことはわかってるけど、ネットをみると、母乳育児のメリットばかり書いている。ミルクに切り替えると、母乳が出なくなるのではないか、と不安になる」
「母乳外来に通ってみたけど、うまくいかず」
「出産直後、うまく授乳できず、初乳をあげられなかった。その罪悪感があり、母乳が出なくなっている自分を責める」
「結果、赤ちゃんの体重が増えてなくて、今日も言われると思ってたけど、やっぱり言われてしまって、、、」
こう、涙ながらに辛い気持ちを教えてくれました。
私は、
Cさんが笑顔だから、大丈夫だろう、と
さらっと個別相談を終わりにしようとした、自分の選択を悔やみつつ、
傾聴・状況整理
をし、Cさんの気持ちを繰り返し、確認しました。
少し、Cさんの涙がおさまったところで、
Cさんの気持ちは、間違っていないし、恥ずかしいものでもないこと、同じような相談をよく受けること、を伝え、
その上で、
母乳とミルクのそれぞれのメリット
と、
一番大切で優先すべきなのは、
「赤ちゃんが健やかに成長すること」
であることを説明し、その理由を説明しました。
(乳児期は、脳の発達が活発なため、摂取した栄養を、そこにたくさん使います。)
Cさんは、
「ミルク足してみます」
と言ってくれました。
私の考えですが、
Cさんはきっと、ミルクをあげなければいけないことはわかっていたのでしょう。
でも、母乳育児に対する、
妊娠中からの考えや予想
出産後に経験した予想外のこと
から、「母乳で育てたい」という思いが強く、それができないことによる辛さを感じていた。
相談する機会がなく、4ヶ月児健診で体重増加不良を指摘され、
今まで避けてきた問題に直面しなければいけなくなった。
ちょうどこの時のタイミングが個別相談だったのでしょう。
誰だって、避けてきた問題に直面した時は動揺したり、強がったり、また避けたくなっちゃったり、しますよね。
これがひとりだけの問題だと、また時をおいて考えればいいこともある。
でも、育児となると、自分の子供の成長に関わること。
自分一人で決めたり、考えたりしていいものなのか…今日いま、この瞬間決めなければいけないかもしれない
そんな時は、
私たち専門職の知恵を借りて一緒に考えるのも一つの方法で、
そのために、保健師という存在があるんだ、と思います。
何度も言いますが、
保健師は「一緒に考える人」
ですから。
ちなみに、Cさんは1ヶ月後、追加の健診にきて、体重増加は順調でした。
次は、離乳食ですね、とお話しし、後日相談の電話がかかってきたことを記憶しています。
ここが相談できる場所である、と認識してくれたんですね。
追記ですが、
母乳育児に関する相談は
健診の場面に関わらず、よく聞きます。
「母乳って普通にでるもんだと思ってた」
「おばあちゃんに、赤ちゃんは母乳で育てなきゃいけないって言われた」
など様々。インターネットに書いてることも色々です。
でも、こればかりは、授乳する立場になってみないと、実際どうなるかわからないし、何が正解だなんて、ない、と私は考えます。
「母乳で育てたい」
その思いを持つママはたくさんいるし、その思いはママとして間違っていませんよね。
でも、ミルクをあげずに、体重増加が思わしくなく、脳の発達の遅れなどの他の悪影響が出てきてしまったら…?
ママも赤ちゃんも辛いはず。
育児に正解もマニュアルもありません。
でも、たくさん方法はあります。
起こりうるリスクを予防し、
健やかに成長すること
健やかに生活すること
を可能にするために、私たち保健師は、その人にあった方法を提供し一緒に考え続ける存在でありたいです。
さて、今回は、乳幼児健診の概要と、集団健診のかたち、その中でも4ヶ月児健診を、説明し
個別相談の事例をお話しました。
これはどうなの?こんな相談ある?
というのがあったら、教えてください。
次は1歳半児健診・3歳児健診についてお話します。
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