マガジンのカバー画像

江國香織が好き

2
大好きな江國香織さんの本の感想を書いています。
運営しているクリエイター

記事一覧

すいかは苦い。薔薇のアーチは痛い。

江國香織の本が好きすぎる私だが、もっとも衝撃を受けたのは『すいかの匂い』という本だ。 小学生の女の子が主人公のお話を描いた短編集なのだが、いずれも ・小学校3年生~5年生くらいの女の子の話であること ・夏の話であること ・小学生のころの話を、大人になった語り手が回想するかたちであること そして ・懐かしいんだけど、いやーな感じのちょっとうしろめたさや怖さがあって苦い感じで終わる ところで共通している。 そしてそのいやーな感じの苦さのために心から離れない。 嘘をついたり

ふつうとちょっと変。ふたつの世界に引っ張られる|江國香織『神様のボート』

中田敦彦さんのyoutubeチャンネルで、文学は課題定義だ!と言っていたのを聞いて学生時代の授業を思い出した。そう言えばそうだった。 江國香織の本が好き。読んでいたら切なくなる、でもどこかふわふわ気持ちよくなる。 でもこの本も、課題定義なんだよな、と思って読み解いてみた。 『神様のボート』あらすじ 葉子と草子は母娘2人暮らし。葉子が骨ごと溶けるような恋をして生まれた草子。“あの人”(葉子にとっては好きな人、草子にとっては父親)と出会うために2〜3年おきに関東近郊で引越しを