「食品添加物」の授業
こんにちは。中学校家庭科の授業実践をあげています。今回は「食品添加物」の授業です。
基本的には授業を、フラッシュカード→教科書の音読・問題→主活動の流れで行っています。ここでは主活動のみを記録します。
*本時は2時間で計画していますが、飲料作りを行わなければ1時間に変更することも可能です。
【食品添加物について】
今からある食品の原材料を提示します。何でしょうか?
水/炭酸→炭酸水
緑茶(日本)/ビタミンC→お〜いお茶
砂糖類(加糖ぶどう糖液糖(国内製造)、砂糖)/炭酸、香料、酸味料→三ツ矢サイダー
*それぞれの原材料表示の画像を提示する。
一般的に原材料名の「/」の後に書かれているのが食品添加物です。
炭酸水に含まれる食品添加物は何ですか?
→炭酸
お〜いお茶に含まれる食品添加物は何ですか?
→ビタミンC
ビタミンCの使用目的は何ですか?
→酸化を防ぐため
三ツ矢サイダーに含まれる食品添加物は何ですか?
→炭酸、香料、酸味料
食品添加物には、食品の製造にどうしても必要なもの、保全性を高めるもの、栄養価を向上させるもの、風味や見た目をよくするものがあります。
【食品添加物を使った飲料作り】
〜フレーバーウォーター作り〜
*画像を提示して
今日は原材料表示を参考にしてフレーバーウォーター(「い・ろ・は・す みかん」風飲料)作ります。
果汁は何%入っていますか?
→0%
無果汁なので0%です。香りと酸味のつけた砂糖水ですので、簡単に作ることができます。
水を500mL用意しなさい。
(栄養成分表示を提示しながら)
無果汁ですので、含まれている炭水化物は砂糖の量になります。
100mL当たり4.6gです。ペットボトル1本が500mLだとすると何gですか?
→23g
ステックシュガー(3g)を8本入れなさい。
紙コップに100mLずつ分けなさい。
クエン酸をスプーン1杯(少なめ)を入れて、よく混ぜなさい。
オレンジエッセンスを1滴入れて、よく混ぜなさい。
*コップに氷を入れて回る。
味見をどうぞ。半分以上は残しておきなさい。
〜20%オレンジ果汁入り飲料作り〜
*画像を提示して
次に20%オレンジ果汁入り飲料を作ります。残ったフレーバーウォーターに100%オレンジジュースを20mL入れて、よく混ぜなさい。
*正確に20%果汁入り飲料ではないですが、そのあたりはご愛嬌。
味見をどうぞ。
食品添加物を使えば、安くて美味しい飲み物が簡単にできてしまうのですね。
あなたは100%オレンジジュースと20%果汁入り飲料のどちらを飲みたいですか?(挙手で確認)
*100%オレンジジュースが多いと予想。
*食品群別摂取量のめやすを参考にすると、中学生の1日の砂糖摂取量は20g。この飲料1本でオーバーすることを補足する。
*砂糖は正確には食品添加物ではなく、原材料として表記されることを補足する。
あなたが会社の社長なら、100%オレンジジュースと20%果汁入り飲料のどちらを売りますか?(挙手で確認)
*20%果汁入り飲料が多いと予想。
準備する物(1班4名分)
計量カップ(1000mL) 1個
水 500mL
紙コップ 4個
スプーン 5本
ステックシュガー(3g) 8本
クエン酸 適量
オレンジエッセンス 適量
100%オレンジジュース 100mL
氷 適量
【食品添加物の役割】
食品添加物は大きく2種類に分けられます。天然のものから作られた添加物と、化学的に合成された添加物です。
天然のものから作られた添加物の歴史は長く、奈良・平安時代には着色料がありました。何から作られていたと思いますか?
→花
クチナシやベニバナなどです。食べ物を美味しそうにキレイな色に見せたいと思うのは、昔の人も同じだったようです。
また、豆腐を固めるためのにがりは海水から作られますが、この時代から使用されていたようです。
対して、化学的に合成された添加物の歴史はまだ浅く、世界初の化学合成添加物は1851年にできた香料です。
その後、様々な化学合成添加物が作られますが、日本で初めて指定されたのはタール色素と呼ばれる合成着色料です。原料は石油です。
それ以外にも、合成甘味料、合成保存料など多くの化学合成添加物が世に出されていきました。
しかし、その後の研究で長期にわたる摂取によって健康を損なう可能性があったり、発がん性がみつかったりして、今では使用が禁止されているものもあります。
1851年に初の化学合成添加物が開発されてから170年。この間、新しい化学合成添加物が生まれ、危険性があると判断され禁止されていく。今もその流れの中にあるのです。
あなたは食品添加物に対して、どう思いますか?
→できれば食べないようにしたい、天然のものを使用した食品を摂取したい、など
このグラフのタイトルは何ですか?
→食中毒死者数(1954年ー2015年)、日本人の平均寿命の推移
食中毒死者数(1954年ー2015年)から、食中毒による死者数はどのなっていますか?
→1955年から急激に減っている、1975年頃からはほぼ横ばい、など
大昔から食品の最大の危険は、食中毒でした。厚生労働省の統計を調べてみると、終戦後の1955年頃、日本は食中毒で亡くなってしまう人は数百人もいました。安全な食品をおなかいっぱい食べること、それが戦後の日本人の夢だったのです。そんな中で、食中毒の減少に非常に大きな役割を果たしたのが、冷蔵庫と保存料です。
昔は、生鮮食品がほとんどで、加工食品というと塩漬けや干物、缶詰ぐらいしかなかったそうです。しかし、この保存料の登場で、食品の腐敗や変質を長期間にわたって防ぐことができるようになりました。保存料をはじめとする食品添加物の誕生で簡単に安全な食品を手に入れることができるようになったのもまた事実なのです。
このグラフのタイトルは何ですか?
→人の平均寿命、乳児死亡率の推移
急に平均寿命が上がり、乳児死亡率が下がった年があります。何年と何年の間ですか?
→1920年と1925年の間(大正9年と大正14年の間)
大正10年。当時の東京市長であった後藤新平が、水道水の塩素殺菌を開始した年です。水道の生水は様々な雑菌を含んでいるため殺菌されない水道は非常に危険。大人は腹をこわす程度で済むかもしれませんが、体力のない乳幼児にとっては命の問題となるのです。
塩素は食品添加物ではありません。ただ近年では水道水の残留塩素があるので体に良くないといった意見も聞かれますが、それによって違うところで多くの命が救われていることも知っておくべきでしょう。
あなたは食品添加物に対して、どう思いますか?
→使われていても仕方ないのかもしれない、それでも避けたい、など
我々の安全で快適な生活は、見えないところでそういった科学の力に支えられています。ただそれが本当に大丈夫なものかどうかは自分で判断する必要があります。そのためには、自分から情報を取りにいかなければいけません。
では、食品の情報を得るためには、どこを見ればいいですか?
→食品表示
*今日の授業の感想を書いて終了する。
【参考書籍及びサイト】
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