【痛みの総論】❝痛み❞の理解と「徒手理学療法」での痛みの捉え方!!
はじめに/INTRODUCTION
わたしたち「徒手理学療法士」は,主として,❝痛み❞や❝身体機能障害❞を有する患者/クライアントが対象となります。ということは,当然ですが,その痛みに関する豊富な知識を持っていなければなりませんし,痛みと身体機能障害の関係性を十分に考察できなければなりません。患者/クライアントの立場に立ってみても,ご自身の痛みや症状を正しく理解し,認識できていなければ,回復への障壁となる可能性があります。
治療/施術における一連の流れを考えてみると,「主観的評価」においては,①患者/クライアントと対面(すでに始まっています)し,②問診/医療面接/カウンセリングを通して,様々な仮説を立案し,問題点をピックアップしていきます。そして,③身体機能評価のプランニングをした上で,「客観的評価」においては,④仮説の検証作業を行いながら,仮説の追加・修正を図り,豊富な知識とエビデンス,過去の経験などに照らし合わせて,専門職としての考察に基づく⑤臨床的意思決定(Clinical decision making)を下します。その上で,患者/クライアントに対して,納得の得られる⑥説明を行い,理解を促進し,共同的推論のプロセスで,その意思決定に患者/クライアントが参加することが必要です(いわゆるインフォームドコンセント:説明と同意)。意思決定に基づいて,⑦試行的な治療を提供し,⑧再評価にてその効果検証を行い,効果判定とともに,マネジメントから予後に至るまでを総合して⑨説明を行い,必要に応じて,⑩ホームエクササイズを指導して1セッション終了という流れが一般的ではないでしょうか。
①対面
②問診
③計画
④仮説検証
⑤意思決定
⑥説明
⑦治療
⑧再評価
⑨説明
⑩指導
この①~⑩の流れの中で,「何が?」痛い,「なぜ?」痛いのかを,身体機能障害という側面から熟考し続け,患者/クライアントと❝意思を共有❞し,共同的なプロセスで問題解決を図っていくものですよね!? (共同的推論/Collaborative reasening)
◇患者/クライアントの理解が得られること。
◇論理的な説明ができること。
◇臨床的/科学的根拠が明確であること。
これらを,高いレベルで遂行するためには,❝痛み❞や❝身体機能障害❞に関する豊富な知識を有しており,それらの知識がしっかりと整理され,いつでも引き出せる状態で,自分のものとして使いこなせなければなりません。言い換えると,そう言えば聞いたことがある,教科書にはこう書いてあったような,たまたま思いついた,というレベルの知識では,臨床現場では,ほぼ役に立たないということです。
このテキストを通して,痛みと身体機能障害に関する基礎知識を整理し,ご自身の考察や臨床に落とし込むお手伝いができれば幸いです。
※一般的な教科書や文献で学べる知識はそちらからお願いします。
※あくまでも臨床的な/臨床家としての捉え方だと思ってください。
<CONTENTS & PURPOSE>
※本テキストには,以下の内容が含まれます。
◇医学的診断(病理解剖学的診断)vs. 理学療法診断(身体機能的診断)の視点で痛みを正しく理解すること。
◇疼痛メカニズムの理解と考察ができること。
◇臨床推論における8つの仮説カテゴリーの目的と意義を理解すること。
1.活動/参加能力および制限
2.経験に基づく患者/クライアントの考え方
3.病理生物学的メカニズム
(組織治癒メカニズム/疼痛メカニズム)
4.身体機能障害とそれに関連する原因組織
5.症状の進行や持続に関与する関連因子
6.評価および治療における禁忌・注意事項
7.対処方法と治療
8.予後
◇臨床推論の柱である共同的推論の意義を理解すること。
◇診断的推論vs.物語的推論の意義を理解すること。
◇考える力(思考力)を養うこと。
◇国際生活機能分類(ICF)を前提に,健康やQOLまでをも踏まえて,痛みを考察できること。
◇人体にとっての「有益な」vs.「有害な」痛みを理解すること。
◇生物心理社会的枠組みの中で,痛みを考察すること。
◇急性vs.慢性の痛みを区別し対処できること。
◇外傷性の痛みvs.自然発生的な痛みを区別し対処できること。
◇炎症性の痛みvs.機械的な痛みを区別し対処できること。
◇筋骨格系vs.神経系の痛みを区別し対処できること。
◇疾病スクリプトを念頭に,個別の物語を構築できること。
◇Immobilizationと痛みの関連性を理解し説明できること。
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