VUCA時代の思考法エフェクチュエーションとは
『エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」』という書籍や最近インプットした内容のメモになります。
はじめに
VUCA、不確実性の高い、変化の早い社会、AIの進歩をデイリーレベルで感じている私たちにとって、これらのワードは現実味をもって迫ってくる。
一方で、企業として、個人として、波や山を超え、草を掻き分け生きていく必要がある。
そんな時代だからこそ、この書籍で取り上げられている考え方は一つの指針になる気がする。
エフェクチュエーションとは
エフェクチュエーションとは、不確実性の高い状況下で、自分(たち)のコントロール可能な行動やリソースによって対処し、成功を手繰り寄せていく思考、行動様式のことを意味する。
エフェクチュエーションの対義語として、コーゼーションを挙げており、多くの企業で行われているように、事前に計画予測を立て、調査し、それに基づいて行動を行うことである。
これら2つの考え方は、補完的なものであり、どちらが優れているかは状況によって異なる。だが、冒頭に述べたように、現在のような社会状況においては、企業であっても、個人であっても両方のモードを使い分けていくことが重要になってくる。
では、エフェクチュエーションの行動指針の中身とはどのようなぎものなのか。
エフェクチュエーションには5つの原則があり、これらのフィードバックサイクルを回しながら推進していく。
手中の鳥:手段
許容可能な損失:ダウンサイドの明確化
レモネードの原則:不測の事態をプラスに
クレイジーキルトの原則:共創のパートナーシップ
飛行機のパイロットの原則:予測ではなくコントロール
1.手中の鳥:手段
現在の自分がどういう人間で、何を知っていて、誰とつながっているかを意味する。
いわば、自分の価値観、スキル、リソース、人脈、金、物、情報などが含まれる。
1番根本にあるのは、自分の価値観や、やりたい、やりきる意思があるかどうかである。
『起業は意思が10割』著者の守屋氏も、本書のタイトルの通りではあるが、エフェクチュエーションの書籍とほぼ同じ趣旨の内容をより実践的な知見から書かれていた。それでもこのフレーズをタイトルにしているあたり、最終的な成否や、成功に辿り着くためには継続してコミットする必要があり、そのためには自分がそれを本当にやりたいのか、という意思(WHY)やそれのベースとなる価値観が不可欠であるというメッセージである。
改めて、自分はどういう人間なのか、相対的に何が得意なのか、など整理しておくことが重要だ。そして、人に自分やアイディアを紹介するときに覚えてもらいやすい肩書きをつけると良い。
ちょうど聞いていたラジオ『ただいま発酵中』でのこの回でも、自分を何とブランディングするのかについて触れていて面白かった。
その上で、リソース、スキル、人脈、情報といった手段から、はじめの1歩を踏み出し、手段状況が更新されるにあたって、次の行動へ反映していくサイクルを回していく。
2.許容可能な損失:ダウンサイドの明確化
不確実な状況下に置いて、失敗できる許容範囲を設けておいて、その中でできることを行うという意味である。
起業や新規事業と聞くと、リスクテイクのイメージがあるが、実際はその逆で、いかに致命的なリスクを避けつつ機会の発見や、仮説の検証を行っていくかが重要である。
いわゆる小さく始める、プロトタイピングをする、ということだ。本格的に製品やサービスを作り始める前に、それと同等や類似のアウトカムを擬似的に提供し、検証する事はやりやすい時代になっているので、まずはそのレベルで取り組みを行うといいだろう。間違ってもいきなり爆死するような大きな投資をしないことだ。
ここで損失と言うのは、多くの場合は、お金や時間を指すため、個人や企業の状況によって許容できる下限値は変わってくるが、しっかりと基準を設けて、その範疇で進捗がなければ、きっぱりと辞め、次の可能性進むのが吉である。
3.レモネードの原則:不測の事態をプラスに
新しい取り組みや事業をしていると、当然、予想通りにいかない事の方が多い。そういう事象が発生したときに、ネガティブな側面だけを捉えるのではなく、それをどうやって機会に変えるかの思考が重要である。
これの例としては、コロナ発生時の対応があげられる。普通に捉えれば、ネガティブな状況なのであるが、こうした状況下であっても、企業や個人としてどのようなアクションを行うことができるのか、現場の手段や事業のビジョン等を基にして実行できることが大切である。
4.クレイジーキルトの原則:共創のパートナーシップ
自分や自社にないものをパートナーシップや共感、巻き込みによって実現していくことである。
新しい取り組みの初期の段階では、パートナーとして、能動的な人物を選ぶことが重要である。新しい事業はどうなるかわからず、金銭等の報酬は容易に状況が変わるため、一貫したコミットメントが得られない場合が多いからである。
一方で、単に金銭的なコミットメントだけではなくて、相手方の感情的、社会的メリットなど、様々な動機が考えられるため、そうしたものを引き出すことで、多様なパートナーシップを結ぶこともできる。
このパートでも、予測ではなく、行動することによって、他者と交流することで、新しい機会が見えてくることを説いている。
その例として、わらしべ長者が取り上げられていた。最初から藁が家になると思ってはいないが、行動し、人と交流することで、相手が自分の持っているものやリソースに対して思わぬ価値を見出し、それによって機会が広がっていった。
こうして、その時々の人脈、そして機会を見合わせる事でキルトの生地のように布(事業の規模や実現性)大きくしていくのである。
5.飛行機のパイロットの原則:予測ではなくコントロールできるものを。
これまで見てきたように、エフェクチュエーションは自分が影響を与えることのできる変数に集中することが一貫して主張されている。
顧客や世の中がどう反応するか、マクロ経済や政治の動きは正直どうなるか分からないが、今すぐ知り合いに連絡することはできる、ということだ。
エフェクチュエーションが有効に機能する問題空間の3つの特徴として以下があげられている。
1.未来の結果に関する確率計算が不可能である
2.選好が所与ではない、もしくは秩序だっていない
3.どの環境要素に注目すべきか、あるいは無視すべきかが不明瞭である
こういうシチュエーションにおいては、コントロール可能な変数に作用し、機会を手繰り寄せていくことが大切である。
エフェクチュエーションの実践
書籍の中では、これらの五原則の実践ケースとして、スウェーデンのアイスホテルの成立や発展を取り上げている。
このホテルの成立背景に、日本のとある祭りが影響を与えていたなんて、、面白い事例でしたので、気になる方はぜひ読んでみてください。
アイスホテルにもいつか行ってみたい!
その他フリーランスや企業内でエフェクチュエーションを実践されている、中村龍太氏のパートも具体的で面白かったです。
まとめ
エフェクチュエーションは、単に企業内の新規事業や起業だけでなく、個人の生活、人生においても応用できる考え方であると感じた。
無いもの、不確実なことに無用に脳のリソースを使うくらいなら、今できること、コントロールできることから、未来や機会を手繰り寄せていきたいと思う。
参考
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