公園で探鳥:舌が長い鳥と嘴が長い鳥
9月末の夏季休暇が明けて途端に忙しくなった10月。
日曜日も研修や仕事があり、久々のお休みとなった平日。
本当は休息を優先したいが、晴れ予報に我慢できなくなり自宅を飛び出す。
そう、いつもの公園で探鳥のために。
最近は夜明けが遅くなり、早起きする必要が無くなってきた。
7時でも園内は人影まばらだ。
東京湾に面する公園。今日の干潮時刻は朝9時。
満潮の時とはまた違う様子が見られるのかな。
朝日に照らされ高鳴きするモズ。
この時期はキイキイ鳴いてくれるから、探しやすい。
海岸へ向かうと、潮が引き出している。
水位が下がった海のあちこちにサギたちが立っている。
満潮の時は足がつかない海も、干潮が近づくと歩けるようになる。
各々が干潟のあちこちで餌を探している。
彼らは潮の満ち引きのタイミングが頭に入っているようだ。
この日はシロサギとアオサギが中心で、シギチはどうやらいないようだ。
海岸を歩いていると、いつものハクセキレイが元気にチチン、チチンと飛び回っている。
ハクセキレイを見ていた私の前に、シュッと一羽の鳥が留まる。
イソヒヨドリさん、おはよう。
今日一番近くに来てくれた。
君を間近で見るのは初めてかも。
海岸だけでなく、最近は東京の西側の陸地にも住むイソヒヨドリ。
私が住むエリアではあまり見かけない。
近くに住んでくれないかな。
その素敵な声を毎日聞きたい。
水鳥が羽を休める上の池に行ってみる。
渡り鳥たちはまだ少ないようだ。
池を眺める私の横に立つ木に茶色い鳥がシュッと留まり、大きな声で「クイクイクイクイ」とさえずりだす。
モズかな、とカメラを向けるが、初めて見る姿だ。
ヒヨドリでもない。
何だ?
初めまして、アリスイさん。
最近この公園で見かけるという前情報が無かったら、私分からなかった。
アリスイはキツツキの一種だが木をつつかない。
アリが大好きで、長い舌でアリを食べるからアリスイと呼ばれている。
体長17㎝なのに舌の長さが10㎝もあり、体長に比べて舌の長さが最も長い鳥としてギネス記録を持っているそうだ。
アリスイの学名は”Jynx torquilla”
「ジンクス」の語源ともいわれている。
「ジンクス」とは「縁起の悪い言い伝え」を意味する。
アリスイは相手を威嚇する時に首を振ったり180度曲げたりしてヘビの真似をすることから、こんな不吉な名前が付いたそうだ。
えらい不名誉な名前を付けられたもんだね。
地味な出で立ちで不気味に見えるのかな。
漂鳥として日本あちこちを移動するアリスイ。
個数が少なく出会える確率が低いから、会えた私はラッキーだ。
森は鳥が少なそうなので、海岸に戻る。
干潟の上空をトンビが6羽、旋回しながら飛んでいる。
トンビも干潟の魚を狙っているのかしら。
眺めていると、トンビは遠くで獲物をくわえたアオサギに向かっていく。
遠目に、アオサギの羽根が逆立っているのが分かる。
結局アオサギは魚を死守したけれど、トンビって自分で狩りをせずに他の鳥の横取りするんだね。
自分で魚摂ったら良いのに。
この日干潟にいたのはウミネコとダイサギ・アオサギが中心だった。
他にいないか双眼鏡で確認すると、少し離れた所で餌を探す大き目の鳥がいる。
初めまして、ホウロクシギさん。
体長62㎝でシギの中では一番大きいという。
特徴的なのがその嘴。
長さ19㎝近くあり、砂に隠れたカニなどを上手に食べるという。
嘴の曲がりが焙烙(ほうろく)という素焼きの土器に似ていることから名付けられたそう。
基本的に春・秋訪れる旅鳥だが、この公園では夏の間も見られたらしい。
渡るのを諦めたのかな。
日本の暑い夏を乗り越えられたんだね。
朝晩涼しくなったが、この日も夏日予報。
木陰の無い海岸に長時間いるのはまだ辛い。
木陰のある所に戻る。
今日もまだ暑めであまり期待していなかったが、ライファー(初めて出会った鳥)2種類に会えた。
夏を越して元気に生きていた留鳥たちの姿に、私も頑張ろうと元気をもらえる。
これから冬に向けて、渡り鳥たちが増えていくのも楽しみだ。
広い公園と海の景色に、疲れた心もリフレッシュ。
今度はいつ来ようかな。
お昼を前に、公園を後にする。