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雨の近江②-琵琶湖を望む公園の野鳥たち-
雨が降る休日。
人混みが苦手な私は混雑している所を避け、三井寺を拝観した後近くの長等公園に移動した。
長等公園は三井寺と同じ長等山に位置し、琵琶湖を望む桜で有名な公園だ。
野鳥も観察できるらしい。
三井寺の敷地内ですでにエナガ・コゲラ・メジロに出会えたが、他にも野鳥が見られるのではと期待する。
雨は随分小降りになったが、空は厚い雲が覆っている。
周囲を歩く人はいない。
心細くなりつつ、歩みを進める。
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三井寺から長等公園までは徒歩5分程度。
小雨が降り続いている。
これだとカメラに水滴がついちゃうなあと思っていた私の目の前に、屋根のあるベンチが救世主のように現れる。
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この日は土曜の午後。
普段は遊ぶ子供たちで賑わっているんだろうが、雨のせいで人っ子一人いない。
あと1週間もしたら桜が開花してきれいなんだろうな。
ここだと傘をささずに済むし、しばらく雨宿りしよう。
ベンチに座り、鳥たちを観察すべく双眼鏡とカメラを準備する。
ベンチからすぐ近くの木々に、澄んだ声で鳴く鳥がいる。
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ムクドリほどの大きさでブサカワなイカル。
昔、奈良の斑鳩(いかるが)にたくさんいたのが名前の由来だとか。
滋賀県にも当たり前にいるらしい。
2週間ほど前に八王子で初めてイカルを見つけた時に「声が聴きたい」と思っていたが、恋の季節なのかあちこちでイカルが鳴いている。
口笛のような声、「キーコーキー」とも「月日星(つきひほし)」とも聞こえる。
澄んで心地よいさえずりがあちこちからシャワーのように、雨とともに降りそそぐ。
ベンチに一人座りながら、じっと耳を傾ける。
(イカルの声はこちらから↓)
雨が小降りになると、小鳥たちがおしゃべりを始める。
雨が強くなると静かになる。
雨の公園。小鳥たちも雨が上がるのを待っているようだ。
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地面をトコトコ、ツグミが現れる。
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ツグミのそばにシロハラあり。
関西にもシロハラが当たり前にいるんだね。
枯葉でガサゴソというイメージだったから、苔をまとう岩に留まる姿が新鮮だ。
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ヤマガラだけでなくシジュウカラもあちこちにいたが、今日はなかなか小鳥達をカメラでクリアに捉えられない。
私の優秀なカメラも、雨上がりの曇天で暗いせいか鳥にピントが合わせづらいようだ。
仕方ない。私の腕が良くないんだからと開き直る。
少し離れた芝生に小鳥たちが舞い降りるのが見える。
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さっきの声の正体はあなたたちね。
黄色いクチバシと、羽に差す青色が鮮やかだ。
芝生に落ちる餌を探している。
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シメとイカルは同じスズメ目アトリ科。
大きなクチバシがそっくり、固い殻を持つ種子もバキバキ食べてしまう。
イカルの群れにシメが混じることがあるそうだ。
冬はその方が効率よく餌を見つけられるんだろうね。
「ヒッ、ヒッ」と声が聞こえるなと思っていたら、目の前の岩にシュッと鳥が現れる。
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3月から4月にかけて北に帰る冬鳥、ジョウビタキ。
温暖化が進めば、そのうち見られなくなるんだろうか。
彼はこちらを一瞥した後、プイッと飛んで行った。
雨は上がったが、雲は厚いまま。
昼を過ぎて少しずつあたりが暗くなりだした。
人気のない公園で暗くなるまでいる度胸はない。
今日は早めに引き上げよう。
1時間程だったけれど、多くの小鳥たちに会えた。
当たり前だが、東京も関西も同じ本州。
登場する野鳥が似ていることで、陸続きなんだと肌で感じることができた。
東京に比べると京都や滋賀は山が近く、野鳥がより身近に存在することも。
雨の長等公園。屋根付きベンチは鳥見の特等席だった。
雨で人がいないうえ屋根が私の姿を隠してくれるせいか、鳥たちに警戒されにくいようだ。
公園にはさらに野鳥が観察できる森が広がっているが、今日はこれ以上鳥たちを見つけるのが難しそうだ。
また日を改め、晴れた日に来よう。
長等公園を後にし、母たちの待つ実家へ戻る。