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雪柳あうこさん「骨を撒く海にて、草々(思潮社)」(感想)

詩がうまれる瞬間を逃さない反射神経、とでもいえばいいのだろうか。

日々の忙しない生活――身も心も削り取り、己を殺しにかかってくる「生きる」という波のなかで、雪柳さんの眼は常に詩情を求めているように見える。日常という激しい濁流のなかで、もがき、手を伸ばし、詩情という一本の杭のようなものに触れたとき、雪柳さんはそれを強く握りしめ、一篇の詩に昇華させるまでは決して離さない握力を持っている。

第一詩集「追伸、この先の地平より」(土曜美術社出版販売)のころから感じていたことを、無理やりにことばにするのであれば、きっとそういうことなのだろう。

雪柳あうこさんの詩を読むとき、わたしはいつも作中に描かれる景色に懐かしさを感じる。この場所を知っていると、思う。見たこともないはずの景色を。

祖母の家の玄関、野原、川、浜辺、町を見渡すベランダ、葬儀場……。

雪柳あうこさんは詩と生活がコインの裏と表のようにぴったりとくっついたひとだと思う。そしてそれは、詩と生活が同一だということではないだろうか。

わたしはここで、誤解のないように言っておきたい。「生活」という言い方は「日々の暮し」的なある種のライトな詩を想像させてしまうかもしれない。しかし、そうではない。生活とはそんなに軽いものではない。もっと大きく言うのなら、雪柳あうこさんの詩に表出される「生活」は「生存活動」そのものだ。電車の中でベビーカーのなかの子供を気にかけることも、洗濯物を干すことも、子供の欠席届を書くことも、街を歩くことすらも、暮らしの一部でありながら、生きることそのもののスリルのなかにある。だからこそ、詩のなかで「生きる」ことは輝き、読み手にまざまざとその明暗を同時に提示する。


骨を撒く海にて、草々 | 雪柳 あうこ |本 | 通販 | Amazon

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⇩思潮社様のサイトにも情報ありました。

思潮社 新刊情報 » 雪柳あうこ『骨を撒く海にて、草々』

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わたしは「枝」という詩に、とても個人的にですが、救って貰えた気がします。




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