ヌクマム、ヌクマム、空芯菜。小エビ小エビ靴下……(恋詩)

このままでは色々なことがむずかしいですよ、と肩に囁かれた。
「色々なことが?」「生きることとか」帰りに知らない駅で降りて雑貨屋を見ている。ひとのため、と書かれた木彫りの象に、たえきれず嘔吐した。ヌクマム、ヌクマム、空芯菜。小エビ小エビ靴下……。

わたしではないから、わたしのものではないから、あどけなく線路に突き落とされている。着ているものをぐちゃぐちゃにぬぐ、せわしなくたたむ、だらしなくしまう。それはそれとして慣性にさからわずにあるく。眠りたいときには犬に会いに行けばいい。オーデューというなまえの、犬。

なんの抒情で拘留されていたのだろう。いちども唱えたことのない呪文のせいで、たくさんの口に顔を覚えられた。夕方が訪れて、作業服のひとびとが靴箱に向かう。明日も待ってます、と伸びるのがせいいっぱいだった蛸。かつてないほどの尾鰭。だった、むずかしく待ってます、明日もここで。




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