残像とか薄暮れとか(短歌5首と解題っぽいの)
江ノ島が月桂冠をかぶった日 恋人が犬かきを覚えた日
息子らは透明傘を逆さ持ち桜流しを集め始める
土竜たちの憂鬱すべて束ねれば人鳥(ペンギン)も空を羽ばたくという
残像と薄暮れに眼を冒されてザクロの花の紅色のひと
双星を深宇宙に見送って喝采をあげる母の歌声
〈解題なのかどうかもわからない解題〉
江ノ島が月桂冠をかぶった日 恋人が犬かきを覚えた日
大学時代に作った歌その3。当時まだ結婚していなかった妻に犬かきを教えたことがあります。9月の江ノ島で。ひともいなければ出店もシャワーもないので、トイレで着替える羽目に。シーズンがある観光地には、そのシーズンに来るべきだな、と反省しました。妻は犬かきしながら「なるほど、進めるね」と得心顔で沈んでいきました。
息子らは透明傘を逆さ持ち桜流しを集め始める
桜流し。すごくきれいな言葉ですよね。方言で「桜を流してしまう長雨のこと」を言ったり(季語としても使われるらしい?)、「桜の花びらが川面に流れている情景」を言ったりするそうです。私は前者の意味で用いました。宇多田ヒカルの「桜流し」は名曲ですね。日本語に豊かな人は信用できます。
土竜たちの憂鬱すべて束ねれば人鳥も空を羽ばたくという
どうでもいいですけど、この歌を作って初めてペンギンを「人鳥」というのだと知りました。由来はヒトみたいに二足歩行するから、らしいです。
残像と薄暮れに眼を冒されてザクロの花の紅色のひと
途中から本歌取りのつもりで作りました。本歌は
〈目を病みてひどくはかなき日の暮れをきみはましろき花のごとしよ〉
福島泰樹
ことあるごとにこの歌を思い出します。名歌だと思います。
私はいつも、仕事からの帰り道で短歌を作っています。自転車びぃーんって走らせながら。短歌を作ってると、同じ帰り道でも日々いろんなことに気づかされます。ザクロの花が桜の散る時期に咲くことや、その色が実と同じく赤いことなどなど。
双星を深宇宙に見送って喝采をあげる母の歌声
小川一水「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」がとてもよかったよ、という歌です。
お読みいただきありがとうございました。
説明文臭い短歌からまだまだ抜け出せないなーーーーーーーーーと思いながら作ってます。皆様いかがお過ごしでしょうか。緊急事態宣言は出ましたが、私は仕事柄出勤を余儀なくされているので、しばらくはまだ自転車に乗りながら短歌を考える時間が持てそうです。
そして私事ですが、29歳になりました。
生きていくってことがだんだんとわかってきましたが、もうすぐ人生の折り返し地点に来ていることに気付いて戦々恐々としています。
もっと上手に生きられている人を見るにつけ、あーあ、がんばろってなります。
とにかく次の五首ができるまで頑張って生きるぞ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!☺☺☺