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鯨の世紀(恋詩)
【鯨油は安価な油として庶民の灯りのために用いられました】……へえ。ふたりはおどろく。飼育員さんのつくった解説ボードのまえに立つと、マッコウクジラとシロナガスクジラのちがいがわかる、わかるわかる……【シロナガスクジラは白くありませんが】おおきな鯨の死体が沈む水槽に、死んでいるのか生きているのかわからないため息を溶かしながら、教室ではわかりあえないふたりが出会えている。ほんとうに白い鯨が、十九世紀の海にいたことにおどろいて、こ指とこ指が結ばれる。【死体は海底に沈み、多くの生き物のごはんになります】なった、みたいだ。ほんとうにしろいふたりが、またあした。今日の学びをレポート用紙に記述して交換する。