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映画「ソウX」感想
※ソウXだけでなく、1~9までのシリーズネタバレも含みます。
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■ 全体感想
ジョン・クレイマーの威厳というかオーラというか、やっぱりそういうものがとんでもなくかっこよかった。そして懐かしい師弟愛溢れるアマンダとのやり取りも味わい深かった。配信で映画を見ていた自分が、ついにリアルタイムで物語を目撃出来たことに感動した。(スパイラルも映画館で見たけど、実感具合が違った)
あらすじは公式の情報で知っていて、序盤はこれ詐欺なんだよな?ジョン騙されてるんだよな?と思いながら見ていて、もしかしてコンフィデンスマンJP式で全員グルか?wwwと察してしまい、そこからもうとにかくジョンが可哀想で面白かった。病気が治るという可能性が見えたことで、拷問器具を考える思考が途絶える描写もあったりして切なかった。やっぱり癌さえなければ、癌が良くも悪くもジョンのエネルギー源なのだとわかってしまった。
で、ジョンがもぬけの殻のアジトに訪れた時、まじでコンフィデンスマンJP式だったwwwwって面白さが最高潮になり、最後のホフマンの台詞通り「よりにもよってジョン・クレイマーに目をつけるとはな」って感じで笑った。ダー子も真っ青だよ。ちゃんとターゲットの素性は事前に調べないと。
というかホフマン!!!!
入れてた情報はあらすじぐらいだったから、ホフマンが登場するなんて思ってなかった。ちょっとだけの出演だったけど、相変わらずかっこよくて鳥肌たった。ホフマンの追い詰められていくオチはアレでも、刑事時代の協力者として威厳があった時は本当にかっこいいホフマン。
話を戻して、、、ジョンの死後に後継者候補達が続々と現れる中、今作は”なぜジョン・クレイマーでなければ『ソウ』ではないと感じてしまうのか” ”何が今までの自称後継者達や模倣犯に足りなかったのか”を改めてジョンが示す、原点回帰の物語のようだった。
ゲームの参加者を選ぶ動機は私怨でも、ゲームに感情は持ち込まない。ゲームの参加者には必ず勝利のチャンスを与え、命と向き合う過程を通して更生を促す。結果死亡したとしても、それは参加者の選択によるものであり殺人にはならない。そしてこのゲームシステムを開催者は守り続ける。
ジョンの理念を端的に表すとこんな感じだけど、これがなかなか難しい。
そして今回ジョンに相対したのは、(1と2の間の話ではありながら)過去最強クラスのメンタルを持ったサイコ女。ジョンはゲームを通して、セシリアに命の尊さを学ばせることが出来るだろうか。セシリアはゲームを通して、更生することが出来るだろうか。・・・というのが見どころではあったが、結論から言うとそれは全くもって無理だった。し、無理だということを見越してジョンは手を打っていた(だからこそ最初から顔を見せていた)。自称後継者達や模倣犯が”参加者に更生の余地などないのだから最初から勝利のチャンスなど無くていい”と主張して度々ジョンに怒られてきたが、ジョンからすれば理念を曲げずとも良い話で、”更生しない者には更生するまで何度でも二重三重にゲームを行い、その途中で手遅れであるような勝利条件を明示し敗北させ、二度とシャバに出られないよう監禁すればいい”というのがジョンの答えだった。これはかつてのエリックやホフマンにも言えたことで、結構力業ではあるけどジョンの理屈的には通るので許される。らしい。やっぱりジョン的にもそれでいいいんだ!という発見。なにこれ。いやでもそうなんだよ。
またゲームに勝利した後、さらにジョンを追いつめることはジョンに殺されるリスクを考慮しない=死への選択を続けた罪になる、ということを今回改めて理解した。今まで数々の警察関係者も何かしらの理由をつけてゲームに参加させられており、それは警察である以上ジョン側も仕方がなくしていたのだろうと思っていた。しかし今回初めて警察以外でジョンを追い詰め(無傷で勝利したにも関わらず)、その場から立ち去る行動をとらなかったセシリアの異様さによって、その選択の愚かさが際立って伝わってきた。どんな立場であろうとも、ジョンに接触することがそもそものあらゆるリスクなのだ。セシリアはパーカーとのゲームには勝った。しかしジョンとのゲームには”最終的に”負けた。だからあの部屋に一生閉じ込められることになった。
で、そんなセシリアが自分はくっそタイプだった。あの悪人顔、綺麗すぎる。ジョンとの並びもかっこいい。オーラがえぐい。今までも美人で強気な女はいたけど、過去最強の悪役に相応しい美貌だった。あと周りのゲームが始まった時に律儀に全員のことを鼓舞してたけど、全然嫌味とか煽りに聞こえなかったのが面白かった。だってたぶん、セシリアだったらあのゲーム全部クリア出来たはずだから。セシリアはやればできると本気で思ってる。無茶言うな。それにこれまで何回も繰り返されてきた、部屋に閉じ込められるという拷問オチ(2の布石のような毒ガス付き)に、彼女が最後の最後までみっともなくジグソウの名を叫んだり恨み節を叫んだりしなかったのが良かった。あくまでも彼女は自身の負けを最後まで認めなかった。生きて出てやるという希望を抱きながら、最後の瞬間までもがき続けるために。好きすぎる。
あとセシリアが言ったことで刺さったのが「お前にモラルの話をする資格はない」というジョンへのブーメラン台詞。似たようなことをジョンに言った人はいれども、ここまでストレートに(ジョンの台詞を使って)言い返した人はいなかったように思う。いやそうなんだよな。シリーズが続いて、模倣犯が現れて、ジョンが神格化していく度に、いやでもそんな大した人だったっけ?てなっていた感覚が可視化されたような気がした。ジョンだって感情は捨てろと言いながらゲームの始まりは大体私怨だし、たまにめっちゃ怒るし、前述の通り本当に許せないやつは永遠にゲームに参加させて再起不能にさせる。それに元妻ジルとジョンの関係性を振り返ると、本当に他人を更生させるような立場か?となる。他人の人生を前向きにさせる趣味なんて簡単に言うなよwと思う。ジョンは自身の理念を揺らぎのない確固たるものに昇華させる力が強いだけで、土台はやはり「お前にモラルの話をする資格はない」というのが核心をついている気がする。そしてそれを、ついにジョンに言い放ったセシリアに自分はスッキリしたのだ。ありがとうセシリア。でもこれは、映画を見る自分のような観客にも言えることだとも思った。ジョンにモラルを問う資格はこちら側にもないのだ。だってジグソウゲームを期待して見に来ているのだから。あの台詞は自分にとっても痛烈で、そしてソウシリーズをこれからも楽しんで見続ける上で、忘れることのない台詞だろうと思った。
一つだけ残念だったシーンを挙げると、タクシー運転手のディエゴのゲームの時に、見た目の割にあまり痛くなさそうな反応が続いてちょっと物足りなかった。その後のヴァレンティーナのターンがめちゃくちゃ最高で、絶叫に次ぐ絶叫が良かったから、そこですっきりはしたけれども。というか、それまでは劇場にポップコーンの食べる音が響いていたのに、ゲームが始まったらぱったり止んで無音になったの笑った。ポップコーン美味しかったな。
■ ジョン・クレイマーのエピソードおさらい
今作においてジョンの不運話が増えてしまったので、改めてジョンのエピソードを時系列順にまとめてみた。(文の後ろにあるナンバーはそれが起きたor判明した作品ナンバー)
研修医の不注意により癌の発見が遅れる⑧
妊娠中の妻ジルが薬物中毒者セシルに襲われ(事故)流産④
末期癌の診断をうける①
車に乗ったまま崖から落ち自殺しようとするも生還④
セシルをゲームに参加させ、ジグソウの活動を本格的に始める④
?研修医だったシェンクをゲームに参加させ、後継者候補へ⑧
ジグソウの模倣をしていたホフマン刑事を協力者にし、後継者候補へ⑤
癌の宣告をしたゴードン医師をゲームに参加させ、後継者候補へ①
アマンダをゲームに参加させ、後継者候補へ①⑥
癌患者の会で知った治療法を試そうとするも医療詐欺集団だった⑩
治療に向けて保険金を請求するも保険金詐欺会社に却下される⑥
詐欺集団を全員ゲームに参加させた、1人以外?死亡⑩
アマンダ主導のゲームに付き合い、エリック刑事にボコボコにされる②
脳手術を行うためリン医師を拉致、関連ゲームの結果その夫に殺害される③
-死後、遺言などを通じて-
ホフマンにゲーム参加者のリストを渡しゲームを続けさせる⑤
保険金詐欺会社をゲームに参加させ、過半数が死亡⑥
ホフマンの暴走を懸念してジルにホフマンのゲームを託す⑤
ジルがホフマンに殺害される⑦
ジルを通じてゴードンにホフマンのゲームを託す⑦
ゴードンによりホフマンは監禁され生死不明⑦
-約10年後-
ローガンによる模倣事件発生⑧
ローガンにより墓から遺体が回収され、現在の遺体の行方は不明⑧
-時系列不明-
不良品のバイクを掴まされ、甥をバイク事故で亡くす⑧
バイクを売った人物はゲームに参加し死亡⑧
シェンクによる模倣事件発生⑨
⑥で保険金を請求しようとした時の「ノルウェーの臨床実験」が⑩の治療話と繋がるらしいですね。何もかもがうまくいかない。ジョンの運勢大凶。
あと今回の血責めジョンを見た時、死なないで~がんばれ~!!って気持ちになったのが不思議だった(時系列的に死ぬはずないのに)。ボコボコにされた②でも思ったけど、やっぱりジョンが因果応報で断罪されるような事態は自分的には望んでないんだなと思う(いやもう死んでるんだけど)。そう思ったことを踏まえて③のジョンの死に際を振り返ると、あくまでゲームの中でゲームの参加者の選択の結果として散っていったのは、すごく綺麗な終わり方だったなと思う。殺害するのが警察とかだったら、全然違っただろうから。
■ 後継者候補をまとめてみた
で、なぜ原点回帰とも言える⑩が展開されたのかを考えると、いよいよ次の⑪から後継者争いを発展させていくような気がしなくもなくもない、ということで改めて候補者達(死亡済み含め)をまとめてみた。
■ アマンダ
「伝説を作ればいい、人の記憶に刻まれれば永遠に生き続ける」②
エリックに証拠をねつ造され麻薬所持の罪で逮捕される②
その後薬物中毒者となり、ジルが経営する診療所に通っていた③
セシルに診療所の強盗?をさせ、ジルが流産した原因を作った⑥
薬物が原因でゲームの参加者となる、勝利し生存①
薬を断ち更生、ジョンの協力者として動く②
拉致①⑩③、セッティング①⑩③、ゲーム参加者として誘導②
エリックをゲームに参加させる②(のち④にて死亡)
協力者としてジョンからジルに紹介される⑥
③のゲーム開始前、生存者となる予定の人物に、ホフマンがジョンの協力者であることを(裏切りに備え)伝えていた⑥
ゲームの勝利者を殺害する&勝ち目のないゲームを行う&自傷行為を辞めないなどの問題行為を行い、ジョンとのゲームに負け死亡③
※流産の件を知っていたホフマンに脅されていた⑥
⑩においても、度々ジョンに諭されながらなんとかゲームを続行していたアマンダ。ジョンの更生理念をどこか信じることができず、自身も再び自傷行為を繰り返してしまうなど、感情面での弱さがジョン亡き後の後継者としては向かなかった様子。そこにつけ込んだのがホフマンだった。そして苦しんで生き永らえるより、死は救いになることもあるという破滅思想も垣間見えていたので、いずれにせよいつかは暴走していたのかもしれない。ジョンの理念に対しては一番理解があっただけに、惜しい人物だった。
■ ホフマン
「因果応報とも言えるが、私は正義と呼ぶ」⑤
妹を妹の恋人に殺害され、ジグソウの手法を模倣し犯人を殺害した⑤
ジョンに捕まるが、見逃してもらう代わりに警察内部の協力者となる⑤
捜査の誘導、警察関係者の拉致、身辺調査などを行う①②⑩
ジョンの死後も共犯者の捜査を続ける刑事をゲームに参加させ殺害⑥
アマンダが仕込んでいた告発があり警察の追求は止まず、ゲームと関係なく警察官を殺害⑥
ジョンの遺言を受けたジルにより逆トラバサミを仕掛けられるも、無理矢理外して生存⑥
ゲームと関係なく警察官を大量に殺害⑦
逆トラバサミを悪用し、ジルに装着し殺害⑦
ジョンの指示により動いたゴードンにより、バスルームに監禁される⑦
生死不明
ゲームと関係なく猟奇殺人鬼としての才能を発揮し始めたことによって印象が悪くなってしまったホフマン。しかしジョンの死後も、ジョンのやり残したゲームをきちんとこなそうとしていた辺り、義理堅い人だったなと思う。でもやっぱりジョンの恩を忘れジルを軽視した殺害を行っているので、最終的な印象は最悪。一応生死不明なので再登板もありだけど、恐らくゴードンへの復讐ぐらいしか動機がないので、後継者としては怪しい。
■ ゴードン
「君は最も重要な存在だ」byジョン ⑦
ジョンに対し不誠実な末期がんの宣告をした、家庭を顧みず不倫をしていたためゲームの参加者となる①
右足を切断しゲームから脱出、生存①
ジョンに認められ、医療知識が必要となるゲーム関連に協力者する②④
リンをジョンに紹介した③
ジグソウゲーム生還者の会に所属⑦
ジョンから”ジルに何かあったら行動するように”と頼まれたため、生還者の会の人員を協力者として、ホフマンを拉致監禁⑦
情報の参考にさせていただいた記事→http://saw-world.cocolog-nifty.com/blog/cat41698696/index.html
恐らく生存中
後継者有力候補のゴードン。ジョンが消えても暴走しない、勝手なことをしない、というのが有能の証。逆に言えば、言われたことしか出来ないのが弱み。ジョンのやり残したことがほぼ無くなったため、自発的にゲームを企画することが必要であり、ジョンの死後10数年に及んで模倣事件がなかった(⑧)ことを考えると、本人的には前向きではなさそう。
■ ローガン
「死者の声を代弁する」⑧
研修医時代、自身の不注意によりジョンの癌発見を遅れさせた⑧
ゲームの参加者となるもジョンのミスによりゲームに参加できず負傷、ジョンに助けられる⑧
(その後?)退役軍人となり精神を病むも、ジョンの協力者となることで生きる意味を見出し立ち直る⑧
ジョンと共同で逆トラバサミなどの装置を製作⑧
表向きは検視官として働いており、娘がいる⑧
妻を殺されており、犯人を見逃した警察関係者に復讐を果たすためゲームを行う⑧
生存中
8作目で突如現れた新星。ただし中身はジョンの教育虚しく理念を履き違えた勘違い男。ゲームとは名ばかりで、復讐の対象者には勝つ条件を与えずに殺害した。「俺に選択肢はないのか?」「選択肢は、叫ぶか、黙るかだ」違う、そうじゃない。あとは自身の復讐の範疇で行動が終わっているので、ゴードンと同じく今後の動機が不明。
■ シェンク
「どうして個人に限定して、社会全体に適用しない?」⑨
15年前、刑事に父を殺された(警察の不正を証言しようとしたため)⑨
その刑事は辞職したが事件は揉み消された⑨
復讐のため刑事に就職しゲームを行う⑨
15年前助けてくれた刑事を計画の相棒にしようとしたが、その刑事がゲームに負けたため1人で逃走⑨
生存中
ついに現れたジョンと全く接点がない新星。ジグソウシステムを神格化しており、個人の復讐に留まらず、社会を見据えた動機を有しており前向きなため行動力は随一。しかし行ったほとんどのゲームの勝利条件が絶望的であり、死ぬこと前提で物語が進んでいたため、結局こいつも理念勘違い男。やはりジョンが再三提唱する”更生”という側面が理解出来ない様子。ホフマンとどこか似ているので、またゴードンが止めないといけない。(大変)
■ 他予想
ジグソウの影響力が半端なく広がっていることは判明しているので、もしかしたらジグソウの思想に共鳴した集団なるものが結成されて、集団で行動を始めるかもしれない。そのリーダーになるとしたら誰か。ゴードンは既にジグソウゲーム生還者の会の人員を手中に収めているようなので、もしかしたら集団を率いるカリスマ性があるのかもしれない。
あと大穴候補で思ったのが、⑩で助けられたメキシコの少年カルロス。ジョンが関わった故に巻き込まれたと言えばそうだけど、大金が手に入ってジョンに恩義があるだろうし、成長して英語が喋れるようになって後継者として立派に活躍してくれたら嬉しい。・・・嬉しい?嬉しい。予想外の出来事だとジョンが言っていたので、カルロスが巻き込まれたのは偶然だと思っているけど、自転車?のタイヤを直してあげたシーンの後に、きこきこ三輪車を漕ぐビリー人形を見た時、あぁもしかしたらジョンはカルロスをギデオンのように錯覚したのかもしれないなと思って、切なくなった。ジョンの友人であり、”息子”としてカルロスが模倣犯を一掃する計画があったら、アツい。
他にもゲームに巻き込まれた子供と言えば(ゴードンの娘はなんとなく置いといて)、エリックの息子やジェフとリンの娘もいる。ジグソウの死後、10年以上模倣犯が現れなかったのは、その成長の準備期間だったのかもしれない。既に子供の頃の復讐を果たしたシェンクという先輩もいるし、ジグソウの変な影響を受けたチルドレンが大暴れする未来がきたら・・・どうなるのだろう。
単純に自称後継者を集めたデスマッチとか見たい。()
ジョン・クレイマー『ソウ5』
「”模倣は最大なる賛辞”と言われる、だが私にとっては不愉快だ」
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