モズ日記ー開口・後編ー
動物もビビったら口開ける。
コウモリ以外にもこんなことがあった。
あれは自動車学校に通っていた時のこと。
自転車で自転車学校に向かっていた僕。いつも近道を使っていた。
その近道はほっそい道路で、車だと対向はまず無理な道路だった。
いつものようにMDウォークマンでお気に入りのバンド・JELLY→を聴きながらママチャリを漕ぐ。そのほっそい道路に差し掛かった時、何かが動くのが目端に見えた。
ちょうど左側にママチャリに乗っている僕の目線と同じくらいの高さの塀があるのだが、その上にイタチがいた。
イタチと僕の進行方向が一緒だったので、並走する形になってしまった。
まぁ動物苦手の僕は普通にびっくりし声が出てしまった。
その声でイタチも僕の存在に気付いたのかこちらを見た。
僕の顔を見るなり口を開けびっくりするイタチ。
それを見て僕もびっくりして口を開ける。
「うぅぅぅわぁ〜」と叫びスピードアップする僕!
その叫び声にびっくりし、スピードを上げるイタチ!
思いもよらぬ並走!前を見なきゃ危ないけど、イタチも気になる!僕は前とイタチを交互に見ていたが、イタチも僕が気になるらしく前と僕を交互に見ていた。
数回に1回、お互いがビクッてなって、それにびっくりして更にビクッてなった。何だか仲良し。
ある意味、イタチと心を通わせる事になっていたが、もうすぐT字路。僕は右に行くので、多分イタチとはお別れ。
メッチャ怖かったし、一秒でも早く別れたい!僕はスピードを緩めることなく右に曲がった!
そして曲がりきれずに電柱にぶつかり転ける僕…。ものすごく痛い…。服が破れてしまった…。イタチにビビって転けるなんて何て情けない…。
無理矢理立ち上がり怪我の有無を確かめている最中、視界の外に何やら動く物の気配を感じた。
そう、あのイタチである。
イタチは僕の方をじーっと見ていた…。そして無事(?)を確認したのか一目散に去っていった。
イタチ…お前とのレース、面白かったぜ…。
転けちまった俺の負けさ…。
でも次のレースは負けねーぜ。
僕は右足を庇いながら自転車を漕ぎ、自宅へ戻った。そう自動車学校に行くのを完璧に忘れて。
動物もビビれば開口する。その事実を知る事によって動物苦手な僕でも、動物と心を通わせる事ができる。
その事だけでも…充分さ…!
終わり。