|#祖父母宅にて
「スライド映すやつ、買ってきてくれないかな。」
祖父が1年前からずーーーーーっと、しつこく言われていたこと。こんなにも自分の欲を剥き出しにするのは珍しい。一体。。。
とある日に、3人の夕食時に聞かされるいつもの過去の話の流れで、祖父が書斎から取り出してきたものがあった。スライドフィルム。
見たことはあっても、馴染みはない。天井の明かりにかざして微かに見える。
「これを映す機械を探して欲しい。どこにいけばあるかな。」
「たしか町内の◯◯先生、持ってたけど、でももう捨てたっけな。」
「カメラ屋さん行けば貸してくれないかな。」
正直、全然乗り気じゃなくてテキトーに返事をしてしまっていた自分。(じいちゃん、ごめん。)
でも、その後会うたびにしつこく頼まれ続け、流石に申し訳なくなった。
まちのカメラ屋さんに行って、お店のおじさんに尋ねる勇気はなかったので、ネットで調べる。
できるだけ安く済ませたいので、メルカリを漁る。
でもそもそもなんていう機械なんだ?映写機?でいいのかな。
やっと目当てのものを見つけた頃には、結構ワクワクしている自分がいた。
「探す」という行為にはものすごく熱中してしまう。
ミノルタのスライドプロジェクター「Minolta Mini35」とスライドフィルム
購入したことは祖父には内緒のまま、休日にこの機械を抱えて祖父母宅へ向かう。自分にとっては人生初の体験となり、久々に感じるドキドキ感。
祖父母宅に到着して早々、勝手に上映会をスタート。祖父から預かったスライドを一枚一枚セットし、モノクロの写真が白壁に映し出されていく。感慨深いような眼差しでじっと見つめる祖父。その後も上映を進める。
同じ盛岡なはずなのに知らない景色ばかりなことに興味を示す自分だったが、改めて後ろを振り返ると涙を浮かべる祖父がいた。
特に多くは語らなかったが、静かに「ありがとう」と感謝された。
今度から、一緒に食べる夕ご飯の時間の祖父の昔話、もうちょっと詳しく聞いてみよう。