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#73. 合金同盟を信頼すると降格する義務を負う *leyǵ- [alloy/ally/league]

製品ジャンルを代表する強いブランドはそのまま製品ジャンル名として用いられることがある。

仕事をし始めたときよく混乱したのは Allen key六角レンチのこと。他にも hex head wrench, hex wrench という言い方もあるようだが、特にUSでは Allen wrench とか Allen key と言う。Allenという語には六角の要素のかけらもない。

Allen はそれを最初に発明した工具メーカー Allen Manufacturing Company のブランドだ。日本工業規格では「六角棒スパナ」 Hexagon socket screw keys となっていて商標を避ける表現になっている。

Allen とよく思い違いをしたのは Alloy という単語。似ていて一瞬勘違いしそうになる。Allen は人名だが、alloy は「合金」という意味。

alloy は ラテン語 alligō がフランス語を経由して入って来た語だ。分解すると ad- (“to, towards, at”) +‎ ligō (“tie, bind up or together; bandage”) という意味だ。ligō / ligāre は印欧語根の *leyǵ-/ *leig- (“to bind”) に遡る。

*leyǵ- の派生語は ally, liable, league, religate, rely, obligation, oblige, ligate など。各単語の lig- の部分になっているようだが、だいたいは ラテン語 ligō を起点にしているようだ。いずれもガッチリとくっついている様子が共通している。

relyreligate は 意味が反対のようにも思うが、どちらも re- + ligo から成り立っている。どちらも「再びくっつける」のだが、当てにしている対象だと「信頼」になり、もどりたくない対象だと「降格」になる。本当はもう少し複雑な経路を辿っているので、途中の意味の移り変わりはそう単純ではないようだが、religateの意味を覚えるためにはそうやって想像を膨らませてみるのも良い。

KDEEでは、religion の語源のラテン語 religio も 前述の religare (re+ligāre “to bind”) から来ているとする説と、relegere (re+legere “to collect, select, read”) から来ているとする説の両方を紹介している。古くから議論があり、音韻的にはどちらも可能で、古義からすると前者もにわかには捨てがたいが、今では後者の方が有力とのこと。この独善的でない取り上げ方がKDEEらしい。

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