#125. Avalanche(雪崩)の語源
『Frog and Toad』を読み聞かせしていて、恥ずかしながら知らなかった単語があった。
・avalanche なだれ
日本語の「なだれ」の語源は「傾る(なだる)」なのか「斜垂れ (なだれ)」なのか諸説あるようだ。漢字で書く「雪崩」は熟字訓なので、「なだれ」はかならずしも「雪」が滑り落ちることが絶対ではないようだ。英語の avalanche も雪以外のものが崩落してくることに使えるようで、現に Frog and Toad では岩が落ちて来る場面で出てきている。
avalanche の語源はフランス語だが、アルピタン語(あるいは フランコ・プロヴァンス語)の avalançhe からとのことだ。アルプスの最高峰 Mont Blanc のある、フランス・イタリア・スイス国境付近で話される方言から来ているのがさすがだと思った。
avalançhe の語源はフランス語の à + val (to valley=downstream) と、イタリア語で valanga の元になった俗ラテン語の *labanka の合成ではないかという可能性が示唆されているがはっきりしない。後期ラテン語の lābīna (“landslide”) とおそらく関係があるのだろうとみられている。そうであれば “to slip, slide” を意味する lābor から来ていることになり、ドイツ語の Lawine とつながるかもしれない。
ヒンディー語で「なだれ」は हिमस्खलन himskhalan だが、ずばり हिम (him, “snow”) + स्खलन (skhalan, “falling”)と「雪崩」の意味そのままである。アルプスと並ぶ最高峰のあるヒマラヤ山脈だが、Himalaya の語義は हिम (hima “snow”) + आलय (ālaya “house”) で「氷室」となんとなく意味も音も似ているなといつも思っている。
斜面が崩落してくるような高くて急な傾斜のある山には雪が積もっているので、「なだれ」と「雪」が密接にかかわっているのは当然だろうなと思った。
対してイングランドはその大部分が低地で、山岳地帯はウェールズとスコットランドにある。なので、snowslide や snowslip と言った英語本来語は avalanche の持つ迫力には勝てないのも不思議ではないなと思った。