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#131. 英語史をお茶の間に
子どもたちに英語の歴史に興味をもってもらうにはどうすればよいか。
自分が住んでいる国の歴史については、毎日目にする歴史的建造物や記念碑が入口になるかもしれない。ドラマや映画でもごく自然に歴史的なエピソードが繰り返されると、自然と歴史に関する興味が湧くものだろう。
英語については、英国に影響を及ぼしたアングロ・サクソン人やバイキングたちがブリテン島に侵入してきた痕跡や、ローマやフランスが圧倒的な影響力を行使した遺構は、遠い外国にいると肌で感じることはできない。
英語を学習するにつれ生じる、「なぜ」という素朴な疑問を大切にしてあげたい。ある程度学習の蓄積や人生経験を重ねるにつれ、言葉で説明するのが比較的容易になっていくが、まだ実体験の少ない子どもたちが抱く疑問に対して、子どもたちの目線や語彙で回答するには、やはり視覚的な教材は欠かせない。
文法的な説明もさることながら、アルファベットの成り立ち、ラテン語・ギリシャ語の影響、アングロ・サクソン人やバイキング...こうしたことは、ただ口でそういう歴史があったと説明しても、子どもたちにとって想像するのは難しい。
一つ一つの事例について資料を探してくることはできるが、「英語史」という観点からひとつにまとまった何か良い教材はないだろうか?
この冬、その必要に応える本に出会ったのは衝撃的だった。それは、KADOKAWAの『英語解剖図鑑 (原島広至)』。とにかく手にとってほしい。英語史に興味のある方なら、その内容の濃さとカバーする範囲の広さと分かりやすさにとにかく感動するだろう。
接頭辞・語根・接尾辞の説明など語源で語彙を解説する本はほかにもあるが、ラテン語・ギリシャ語の違い、ケルトやゲルマンの背景、ローマやフランスとの関り、そしてインド・ヨーロッパ祖語にまでさかのぼる系譜について、ここまで正確でわかりやすく、かつ視覚的に簡潔な本はみたことがない。
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何も言わずそっと、子どもたちの図書にまぎれ込ませておいたら、早速手に取って眺めている。もちろん、その意味の深みを知るのはまだ先のことであろう。しかし、視覚情報を見せるだけでもしっかりと土台を据えることができるのではないかと思う。
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