見出し画像

東京の話


みんな、田舎の方が好きだって言う。
そっちのほうが疲れないって。
でもわたしには合わないな、狭くて苦しいから。

東京に来てから、気持ちが楽になった。
大体みんなわたしのことを知らなくて、わたしにも街を歩いてる人が誰かなんてわからない。
声も名前も知らないけど、たくさんの人生がたしかにそこにある。
他人を知らなくても、他人に知られなくても、
全然どうでもいいような人と足並みを合わせずとも生きていける、そういう雰囲気が好きだと思った。

田舎って苦しい。
いやいや、待って待って、わかってる。
全部の田舎がそうじゃないっていうことは知ってる。
そもそも人には人の生き方があるし、どういう生活が自分に合っているのかなんてみんな違う。
ともかく、わたしには合っていなかった。
どこに行ってもそんなに話したことがあるわけでもない知ってる人がいて、すぐに近所の人のことをなんでも知りたがる。
プライバシーとは何なのか?
そして個人でいることをよく思われない。
わたしは本当にこれが嫌いだった。
だって他人なんて心底どうでもいいのだ。
興味深いことをしてるわけでもない、関わりのない他人のことをどうしてそこまで知りたがるのか、わたしにはわからない。
これはわたしの人生であり、わたしの生活なんだから、他人が勝手に住みついていい領域じゃないんだ。

それから、ちょっとガチの話をすると、外に繋がる窓が少ない気がする。
ここでいう「外に繋がる」ということは「知らないものに出会う」ということ。
たとえば美術館とか博物館、大学とか。
わたしの地元で高校生までの学生がすぐに行けるような美術館は2つしかなかったし、大学もまばらにしかない。しかも学校と学校の間の距離が広い。
東京にはありとあらゆるテーマの美術館や博物館があって、アクセスもいいから学生でも行きやすい。
大学どうしの繋がりも国公立・私立関係なくたくさんあるから、繋がろうと思えばわりと簡単にいくらでも他の大学の学生と出会える。
あとこれはわたしにとってはかなり嬉しいことなんだけど、本屋がたくさんある!
なんと地元には徒歩・自転車で行ける距離には1軒しか本屋がなかった。
本が好きで、知識の半分は本から吸収したようなわたしには大問題なのだ。
神保町に初めて行った時は天国のように思えた。
そういう意味で、東京にいるってことは人によってはかなり大きなアドバンテージになりうるし、自分の世界が広がるんじゃないだろうか。

だから東京は楽しい。

閉鎖的じゃない。
常に外側の世界と繋がっている。
今は田舎でもそういう機会は増えたけど、東京に比べたら本当に雀の涙ほどでしかない。と思う。
わたしはそう感じた。
それだけでわたしは安心する。
自由でありたい。
責任は自分で取る。お金も頑張って稼ぐ。
もう子供じゃないし。
自由ってそういうものだ。

あとはもう、単純に東京の景色が好き。
人も建物も含めて、そこにある景色が好き。
みんな自分の好きな格好で生きていて、好きなように生きていて、他の人と違う生き方をしていてもそんなに文句を言われたりしない。
みんながみんなそうだとは思わないけどね。
多分、そうせざるを得なくて今の生活をしてる人もたくさんいる。
でも人と違うということが認められやすい所だなあとは思う。
わたしは東京のそういうところが好きだ。

星は見えないけど、それでいいかな。
と、思ったよ。

いいなと思ったら応援しよう!