Review-#042 映画『グランツーリスモ』が世界を驚かせたのは、そのド直球さだと思う
思い出せ、走る歓び。
「事実は小説よりも奇なり」というコトワザの通りに、筋書きのない現実で起こるワンシーンは、時として創作のそれを上回るドラマチックさに溢れていることがある。
「テレビの見過ぎ」「リアリティが無い」と、そんな言葉で一蹴されてしまいそうな「屏風から抜け出した虎」も少なからず実在している。皆さんもひとりかふたりぐらいは、思い浮かべることができるだろう。
イギリスのレーシングドライバー、ヤン・マーデンボローも、そんな「屏風から抜け出した虎」のような人間だ。しかし、今度の映画『グランツーリスモ』では、逆に彼を劇場のスクリーンという屏風に押しこもうとしている。ひとりのゲーマーからモノホンのプロレーサーに成り上がった稀有なキャリアを基に、一本の映画を作り上げるつもりなのだ。
程度の差こそあれど、創作の世界では特別珍しいものではないサクセスストーリーを、制作陣はどのように調理するというのか。観客の目を惹くために、どのような捻りを入れてくるというのか。
否! 全然捻らない。
もうすンごいコッテコテの内容で勝負に出た。
今回、映画『グランツーリスモ』を観に行った理由は他でもない、ただ「PS5の抽選販売に当選した際に『グランツーリスモ7(GT7)』が一緒についてきたから」、それだけである。
故にモータースポーツの知識は皆無と言っていいし、『グランツーリスモ』というゲームタイトルの知識だって、「(山内一典率いる)ポリフォニー・デジタルが1997年から制作し、主題歌を安藤まさひろ(元T-SQUARE)が担当しているドライビングシミュレータ」ぐらいのものである(一応、『GT7』はGEOらずに時たまコツコツプレイしてはいるのだが)。
そのぐらいあれば…というか、それがなくても全然問題なく楽しめる内容であった。『ダンジョンズ&ドラゴンズ』『スーパーマリオブラザーズ』と、ゲーム作品を原作とする映画が次々と公開され、それぞれで一定の支持を得ている2023年だが、今回はそれらに継ぐ『グランツーリスモ』について思ったことを書いていく。
作品情報
グランツーリスモ (2023年9月15日公開)
監督:ニール・ブロムカンプ
脚本:ジェイソン・ホール/ザック・ベイリン
所感
令和やぞ? (平成の話だけど)
さて、公式サイトや予告では「感動の実話」や「奇跡の実話」と、映画『グランツーリスモ』が取り扱っているのが実話であることを売りにしているわけだが、実際のところは実話を基にした脚色アリのストーリーなのだと留意する必要がある。
本作の序盤の舞台である「GTアカデミー」という企画は2008年~2016年に実施されたもの。2008年当時のナンバリング最新作『グランツーリスモ4』(ただし、GTアカデミーで使用されたのはその次の『5プロローグ』以降)ではリアリティにより磨きがかかり、鈴鹿サーキットやニュルブルクリンクといった、意外なことにそれまで収録されてこなかった実在コースが続々と登場するようになった。
ゲームの中において、現実と大きく違わない精度でタイムを叩き出すことができるようになった、ポリフォニー・デジタルの自信の顕れだといえる。GTアカデミーの開設に至ったのには、そうした背景もあるのだろう。
だが、本作の主人公ヤン・マーデンボローは2011年のGTアカデミーの勝者、すなわち3期生(2009年は未実施)である。「バーチャルからリアルへ」という非現実的にも思えるチャレンジは、別にヤンと共に始まったわけではないということだ。ちなみに2008年の勝者はスペイン出身のルーカス・オルドネスであり、こちらも様々なレースで素晴らしい成果を上げている。
それでも映画化にあたってヤンに白羽の矢が立ったのは、彼にとってGTアカデミーがまさしく「千載一遇のチャンス」であったからだろう。レーシングカートやオートクロスといった、ゲームとは異なるレースの経験がない、根っからのゲーマーであるヤン。
シミュレータだろうが所詮はゲーム、現実のレースの勝手が分からないシムレーサーがプロレーサーになんて張り合えるはずがない…GTアカデミーのトレーナーであるジャック(架空の人物らしい)でさえ、日産のマーケター、ダニーからの誘いを引き受けた後もなお、その態度は変わらない。
そんな中、何千回ものプレイで培ってきたドライビングテクニックを発揮し、時に栄光、時に挫折を味わいながら成長していくヤン。誰よりも彼の実力を疑ることを疑っていなかったジャックもまた、彼の姿に心を動かされ、いつしか強い絆で結ばれていく…
いやもう本当に、ド直球のスポ根が時速320kmですっ飛んできてむち打ちを起こすかと思った。公式サイトで「レーサー版『ロッキー』じゃん」とのレビューも掲載されていたけど、マジでそうだった。何だったら日本としては『あしたのジョー』じゃん、とかそういう感想も出てくる。
『第9地区』など、様々なSF映画を手掛けたことで知られるニール・ブロムカンプ監督。そんな彼がゲームの、それも史実を基にした作品のメガホンを? と思うかもしれないが、現実と非現実が入り混じる世界という点では、『グランツーリスモ』が目指した夢に通じるものがある。
所々監督のカラーを匂わせる演出を挟みつつ、小気味いいテンポで王道を駆け抜けていく2時間15分。予告を観ただけだとピンと来ないかもしれないし、実のところ全体的に淡白な印象を受けたものの、真面目に熱いモノを観せてくれた良い作品だったと思います。
同じ男の夢を追い、北風に立ち向かう
ヤンとジャックとの友情。努力、そして勝利。先に述べた通り、このコッテコテな、物凄いベタなお題目こそが『グランツーリスモ』の真骨頂だ。
ヤンもジャックも、置かれた立場は異なれど現実の中で硬直していた。
プロのレーサーになるという夢を持っているが、レーシングマシンに乗った経験がなければ、下積みから夢を叶えるという自身の志も父親からは理解されず、どこかぽっかりと穴の開いた日々を送っているヤン。
かつてレーサーとしてキャリアを積むも、ある出来事をきっかけに退き、今でもモータースポーツの世界に関わり続けてこそいるが、その熱意はだんだんと失いつつあるジャック。
そこにダニーが仕掛け人となって、GTアカデミーにて二人を引き合わせた。はじめは候補生のうちの一人に過ぎなかったヤンが、トレーニングでのアクシデントを境にジャックとの距離を縮めていく。ヤンは夢への階段を少しずつ駆け上がり、ジャックもヤンに、遠ざかっていた自身の夢を見出すようになるのであった。
現実から夢へ、夢から現実へと変化するストーリーが、ヤンとジャックの関係性の変化と共に展開されていく。
裏を返すと、それ以外のところは軽く済まされている。『グランツーリスモ』シリーズとしての、またモータースポーツ界としての前代未聞の挑戦ともなれば、GTアカデミーそのもののバックボーンであるとか、本作に関わる者たちそれぞれにどんな経緯があるのか、純粋に気になるところではあるのだが…それを律儀に全部やっていたら到底2時間そこらでは収まらなくなってしまうだろう。
サブキャラクターに対しても同じことが言える。例えばヤンのガールフレンド、オードリーはそっと理解を示し応援するヒロインとして、ライバルであるプロレーサーのニコラスはヤンのことをシムレーサーと高を括り、ダーティー(大分クッションをかました表現)なやり方でヤンを妨害する嫌なヤツとして登場する。
ヤンとの距離がグッと近づくことはないし、かといって埋もれていくわけでもない、程良い場所でそれぞれのロールを果たしている感じ。かといって、そこを深堀りしようものならやっぱり到底2時間そこらでは収まらなくなってしまうだろう。
寂しい気もするが、ヤンとジャック、その師弟関係に「選択と集中」の判断を下したのは正解だと思う。どこに注目して観れば良いかがハッキリとするし、他にも色んなシーンが用意されているが変に出しゃばっては来ないから、あまりモヤモヤすることなく鑑賞を続けられる。
「ブロムカンプ味が薄い~!」と嘆くファンがいるかもしれないが、レーシング界の闇とかを持ち出されても「それオモロいか?」となるからなぁ…。少なくとも『グランツーリスモ』でやることではない。そういうゲームじゃあありません。尤も、闇…という程ではないが栄光ばかりでもないことは、別の形で提示されている(後述)。
要は王道スポ根としてキッチリ引き締めた構成のおかげで、本作のリッチな見所を、何かに邪魔されることなく楽しむことができるのだ。それぞれのレースシーンでは、実は筋金入りのクルママニアらしいブロムカンプ監督の趣味性が漂う「マシンパーツがガチャコンと音を鳴らして稼働する」カットが差し込まれつつ、様々なアングルから映像が組まれており、なかなかに迫力のある、熱い仕上がりとなっている。
本作は悪し様に言えば陳腐なんだけど、決してチープではない。最終的には「グランツーリスモや、モータースポーツに興味があるかどうか」が全てではあるが、あまり存じ上げなくても大丈夫、という勧めやすさがある。そこはひとえに評価したい。
そんな面子の中でこそ引き立つのが、オーランド・ブルーム演じるダニーの存在だ。一応ヤンの味方…のはずなんだけど、「大丈夫なのかコイツ」と思わせる危うさが終始出続けている。
ダニー自身の願望(欲望?)を隠そうともしない言動は、作品にどことなくピリッとした緊張感を持たせるのに一役買っている。正直で人間臭くて、それだけに憎めない、なかなか良いキャラクターをしているぜこの男は。
明日はきっとなにかある。明日はどっちだ
中盤における「事故」の話も触れておこう。
観ていた時には「こんな風になるんかいな」と思ったのだが、帰宅して過去のレース動画を検索したら、本当にこんな風になっていた。なってしまうんだなと。ゲームでもこうなるの?
ヤンにとっての大きな挫折。茫然自失とする彼を、誰よりも近くで励ますジャック。そうして再び現実のレースに挑む勇気を奮い立たせ、クライマックスへとクルマを走らせていく…『グランツーリスモ』の王道を行く展開は、とことんなまでに揺るがない。
実は、本作の最大の脚色ポイントでもある。何がどう脚色されているのというと、事故のタイミングが史実とは異なっている。確かに事故は起きているのだが、それはクライマックスのレースを走ってから2年後の出来事。つまり、意図的に時系列を入れ替えている。
この脚色には議論が分かれることだろう。「本作をよりドラマチックに魅せる目的で、本来未だ起こっていないはずの事故を利用したのではないか」と。「モヤモヤせずに楽しめるのが良いところ」と書いておきながら、そこは結構モヤモヤするんじゃないのか、と。脚色の二文字で片づけていいのかと。
ただ、『グランツーリスモ』はGTアカデミーで育ったヤン・マーデンボローのキャリアを振り返るという一面もある。そして極めてセンシティブながらも取り扱うことを決めたこの事故は、当時も今も、これから先もずっと向き合っていかなくてはならない課題である。
序盤から中盤までの、ヤンが駆るマシンは日産・GT-R GT3。「スカイライン」の名を冠していたR34型以前でも目覚ましい活躍を見せていたが、毎年アップデートを続けながら16年以上ものロングセラーを誇る現行のR35型では、「スカイライン」の看板を外すとともに、よりスピード・パワーの深化を遂げた、兵器と呼んでもいい強烈なマシンへと変貌している(フォルムはそんなに私の好みではないが、動くとカッコいいクルマだとは思う)。
だが、言うまでもなく、クルマとは「凶器」である。時速320kmで飛ばしても40km程度であっても、GT-Rだろうとプリウスだろうと軽自動車だろうとゴーカートだろうと、ひとつ誤ればたちまち制御を失い、完全に静止するまで誰であってもどうすることもできない。それでも自損だけで済んだのならばまだマシな方だろう。もし、済まなかったとしたら…。
「ゲームの戦士にまさかなっちゃうなんて嘘みたい」と、ヤンが浮かれ気分で切符を手にしたわけでも、ダニーが手招きしたわけでもない。現実のレースが「リセットできないキビシい勝負」であることは、ジャックがGTアカデミーにて予め忠告した通りだ。
バーチャルとリアルとの融合を描いた本作における、バーチャルとリアルとが完全には相容れない領域。シム上がりだろうと、プロだろうと、レースとは無縁の日常を送っていようとそこに例外はない。ハンドルを握る人間であれば肝に銘じておかなければいけない、大切なことである。
それまでに挫折の一つや二つを経験していないなんてことはない、だからわざわざ未来のことを持ち出さなくてよかった。それも一つの意見だと思います。事故の話を挿入したことは、本作のドラマチックさに寄与していないとは言いきれない。
でも。少なくとも私は、『グランツーリスモ』がエンタメのために「茶化すように消費」していると思えなかったけどね。
実在のヤンにも、ただのゲーマーに戻る選択肢はあったけれど、そうではなくレース界に残る決断をするまでの間に、本作とは違えど様々な葛藤や、立ち直りのエピソードはあったはずだから。
一度でも立ち会った者であれば、ずっと付きまとうもの。一本の映画として多くの人に観てもらうのだと理解した上で、それを盛り込むことを了承したのも、目を逸らさずに向き合い続ける(し、向き合わなくてはいけない)当人の意志の顕れのように見える。
まぁ、ちょっと纏まらなかったのだけど、モータースポーツを志す上では蔑ろにできないことも含めて、『グランツーリスモ』の物語は構成されている。良いか悪いかは別にして、とても真面目だった。
子守唄は、サーキットにゃないぜ
コッテコテの王道を選んだ作品の宿命ではあるが、「全体的に淡白な印象を受けた」と書いた点については、モータースポーツのファンであっても、そうではなくても少なからず感じたところではなかろうか。
個人的には、もっと「ゲーマーとしての視点」が欲しかったかな。
普通のプロレーサーはこう考える。じゃあ所謂「シムレーサー」っていうのはどうなのさ? ゲームの中での経験値が、それまでのキャリアの差をひっくり返せる程にあるのだとしたら、ヤンにはプロレーサーとは違う光景が見えているんじゃないの?
…という視点もまた、この手の題材の王道じゃないかなと思ったんだけれど、あんまりそういうのは無かった。ゲームよろしく、アシスト(走る際の目安となる、通過するとスムーズに運転できるマーカーやライン)が現実のコースに引かれているようにヤンからは見えている演出があるんだけれど、それはある程度タメを張れていたGTアカデミーまでの話。
プロのレースに参加するようになってからは、そうしたゲーマー的センスは抑えられ、純粋なドライビングテクニックが通用するかどうかが勝負の分かれ目となる。
傍から見ると、プロとシムの境目というのが分かりにくくなっているし、むしろプロの方がよっぽどシムレースか何かと勘違いしていらっしゃらない? と突っ込みたくなるレース運びをしていて余計に混乱する。そこはエンタメだし、それだけヤンが見縊られているということの演出ではあるのだろうが…。
まぁ実際のマシンに乗る以上は、ハンドルコントローラのFFB(フォースフィードバック。ゲームの状況に応じて、ステアリングの振動や抵抗が変化する機能)なんてレベルじゃない程あっちこっちからプレッシャーが掛かるわけで、総合的なフィジカルやメンタルが要求される。
特に最初の段階ではゲーマーのカンに頼れないし、それどころじゃない事情があるのかもしれないけどね。
思い返してみると、GTアカデミーでもレースマシン未経験が大きなハンデになることはならなかった。歴代のGTアカデミーの勝者の中には、既にキャリアを積んでいた(が、諸事情あって離れていた)人もいる。
ゲーマーは皆モヤシ体質なんてド偏見を申し上げるつもりではないが、実際その「勝手が違う」ことがどれ程ゲームでの理想と現実の溝を広げているのか、その辺りのお話があるとヤンの成長もよりハッキリと示すことができたのでは、と思う。尺の都合上仕方ないが。
舞台や状況が転々としていく中で、(うぅむ、『グランツーリスモ』っていうゲームを題材にしている感が薄れてるように思えるな…)と考えていたところで、先程の事故、そして再起。
そこでヤンの世界は、かつてのゲーマーとしての自分を思い起こすかのように、リアルとバーチャルが交じり合う。今一度、現実から夢へと立ち返った彼の目の前に見えたものとは…。
カタルシスとはちょっと違う感覚だが、溜め込んできたものをバーンと出してくれたことで、「ここでこう持ってくるのか!」と熱くなれるシーンだった。そういうのちょうだい、もっと! と思わなくもないけれど、土壇場でヤンならでは、『グランツーリスモ』ならではの強みが存分に発揮されており、テンションもぐんぐんと上がっていく。
欲を言えばここで『Moon Over The Castle』が流れていたら最高だったな。ファンだったら脳汁ドッバドバになっていただろうに。
いや、エンドロールに表記はあったし、実際は別のところで流れていたらしい。しかしちょっとだけな上にアレンジ版だそうで、そう言われちゃうともう全然思い出せません…。
物語の最終ラップを抜けた後は、本作らしくあまり余韻を残すことなくエピローグを迎え、そのまま吹替版主題歌『CLIMAX』(T-SQUARE提供曲。なおギターは安藤まさひろではなく渡辺香津美が担当)と共にエンドロールが流れる。
今回は時間の都合上、吹替版を観たのだが、皆さんよくお聞きする方々だったのでキャストの演技は文句無しでした。特にジャックを演じた三宅健太とダニー役の三木眞一郎は、それぞれのキャラクターにピッタリな配役だと思う。しかし、今こうやって振り返ってみるとジャックがヤンを食っていたような感じはするなぁ…。
総括
Need something tangible to hold (歴史に残る、デカい事をやれ)
やっぱ自分は王道に弱いんだなぁ。
変なモノもそれなりに好きなんだけど、それと紙一重な性質があるせいかな。
バーチャルの世界からリアルに飛び込み、リアルを乗り越え夢を現実に。
本当に癖の少ない、コテコテのサクセスストーリー。それだけにメッセージが明快でとても観やすい作品だった。
それはイエローじゃなくてレッドフラッグを振るべきでは? となるクラッシュシーンとか、コレ2011~2013年頃の話なのにUIが最新の『GT7』準拠なんだ…とか、日産ロゴが"Ghone is gone"した後のやつじゃんとか、映画でのゲームキャプチャじゃない方のUI再現度いまいちじゃね? とか、そういう風にゲーム内効果音使うの? とか、これじゃあ『Need for Speed』だよとか、やたら酷使されているハンガロリンク君とか、そうした大小様々な突っ込み所が散見されるが、それは本作の評価には関係しない。クスリと笑って流せる些末なものである。
もう一声…! と言いたくなるような物足りなさは否めないが、その分キビキビとしたスピード感が維持されているおかげで、あっという間に2時間15分が過ぎていったことを考えると、これでも十分引き込まれていたのではと思える。ヤンがレースに魅入られた理由と同じ「自分以外の周りがゆっくりに見える」感覚を、いつの間にか自分まで味わっていたということだ。
あ、そうそう。本作では日本ロケもあって、トンチキじゃない、ちゃんとした日本(東京)の街並みがスクリーンに映し出されていましたよ。ポリフォニー・デジタルもそうだし、新宿の思い出横丁など見覚えのある場所が出てくるのでご安心を。この調子で『GHOST OF TSUSHIMA』も頼む。
「グランツーリスモや、モータースポーツに興味があるかどうか」。F1の中継がフジの地上波で流れていた頃から随分と遠ざかり、クルマそのものへの関心も薄くなりつつある現状、首を縦に振ってくれる人はそんなに多くないかもしれない。平日だったとはいえすんげーガラ空きだったし それでも、少しでも興味があるのならば、足を運んでもらえると嬉しい。身構える必要は全くないので。私が体験した感覚と同じものを、この作品で分かち合うことができれば幸いだ。
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で、ゲームの『グランツーリスモ』の宣伝映画としても幾分か期待されているんだろうが、ぶっちゃけコレを観たからって『GT7』買おうとはならんと思う。あとしれっと映ってたがウォークマンも。
まぁ一応基本情報を乗っけておくわ。
グランツーリスモ7 (PS4/PS5・2022年3月4日発売)
定価:7,590円(PS4)/8,690円(PS5)
(※いずれも税込価格。PS4版ソフトかつPS5本体を所持している場合は1,100円でPS5版にアップグレード可。ただしパッケージ版の場合はディスクドライブ付のPS5が必要、かつアップグレード後も起動毎にPS4版のディスク挿入が必須)
ジャンル:ドライビング/レース
メーカー:ポリフォニー・デジタル
※(チート防止のため)アーケードモード以外のゲームモードではオンライン接続が必須
今や、レースゲームはカジュアルさや皆でワイワイと楽しむのであれば『マリオカート』、実車かつリアルな挙動を楽しみたいのであれば『GT7』や『Forza Motorsport』など、ニーズとそれに対するカラーははっきりと分かれているように思う。
『Need for Speed』など、どちらにも寄り過ぎないデザインのレースゲームもリリースされているが、『リッジレーサー』や『デイトナUSA』などが選択肢として存在していた頃と比較すれば、大分狭まったような感覚がある。スクエニさん、ライセンスがネックなんでしょうけど『レーシングラグーン』のリマスター版出すつもり無いです…?
その中でも『グランツーリスモ』シリーズに触れるドライバーが何を期待してプレイしているか、その実態は様々だろう。それこそヤンのように、現実のレースに憧れ、自分も同じグレードの車を運転してみたいと焦がれる者。ゲームには歴史に残る名レースを駆け抜けたクルマも収録されている。
実際にプロのレーサーになりたいかは別としても、バーチャルだからこそ気兼ねなく、気分に浸ることができる。シミュレータならではの魅力だといえる。
あるいは、様々なクルマを色んな場所で走らせたい、カジュアル寄りのプレイヤー。現在所有しているクルマ、手放してしまったが今でも思い出す昔のクルマ、街中でよく見かけるクルマの数々、写真、テレビ、漫画、アニメ…etc.の中で見た名車。
それらとゲームの中で出逢うもよし、エンジンをスワップするなどしてとことんチューンナップを施し、レーシングカーにも負けないスペックで挑むもよし。リバリーを駆使すれば、いつか見たことのある姿にも、珍妙な風貌にもドレスアップだってできる。
ゲームならではの可能性を探る、そんな体験も良いポイントだ。
私は後者寄りかな。毎月のアップデートの前に、追加車種のシルエットクイズが行われるが、ごめんなさいよく分かんない。クルマというのは数えきれないほど存在するし、外装のみならず内装も作り込みしないといけない現在となっては実装される可能性が限りなく低いのだが、言うだけならタダなのでこの場を借りて言っとく。そうだなぁ…日産だったら、
「エルグランド(APWE50型) バージョン-S ('01)」を実装してくれたら嬉しいでーす。
これね。翌年の2代目にバトンタッチする直前のモデルなんですけど、ウィンタースポーツ用品で知られるサロモンとのコラボレーションで生まれた期間限定車なんですよ。後々調べて結構なレア車だと知って驚いた。
現行とは異なり後輪駆動が基本ですが、4WDにも切り替えられるので雪道も問題無し。スキー旅行する際の頼もしい相棒でした。MDだって聴けたんだぜ凄ぇだろ。
2010年に登場した3代目エルグランドは現在まで続く息の長いモデルですが、スタイルの良さでは未だに初代が一番だと思っています。でもなぁ。いくらライバルのアルファードが追加されたからって…その後ハイメディック(救急車)も来たんだし対抗してせめて2代目パラメディックでも、というわけには……と、かなり望み薄なんですけど。
それは置いといて、これからも皆の夢をバーチャルで、そしてリアルで叶える場所として『グランツーリスモ』が在り続けてくれると良いなと、素朴ながらも思うことではあるのです。
さ、映画も観たことだし。
こういう日にゲームで遊ぶと、なんだかいいことがありそうだなと、帰宅後早速『GT7』でドライブしてルーレットチケットを入手した。
わくわく。
はい。
…あの、山内さん。
あなたはハンドルじゃなくて寿司を握っててください。
(ある意味一番の笑いどころでしたよ)
うそうそ。もうそろそろでアップデートですね。
追加コースの方も楽しみにしてます。
1万字超えちゃったので、今回はこの辺で。おしまい。
《了》