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混沌と愛の国インド、美しき冬のラダック旅②レー上陸編

 11月24日(木)、早朝。犬も人間も総じてうるさい。痺れを切らし起床。まったく、インド人、24時間休みなくうるさいな。空港に向かうため、uberをチェックすると、朝6時台にも関わらずごろごろ走っていた。行きの空港送迎は1000ルピーもかかったが、uberだとたったの150ルピーで、さすがにため息。まあ、片道だけでもまともな金額で動けただけよしとしよう。

 6時ごろ空港に到着した。国内線のターミナルは、国際線のターミナルとずいぶん離れていた。ターミナルの中は案外充実していて、スターバックスなんかもあった。久しぶりのスタバにテンションが上がり、チャイティーラテなんて頼んでみたが、まあ普通だった。そりゃそうか。ショートで330ルピーくらいして、ずいぶん高級だなあと思ったりした。

 滞りなくチェックインし、搭乗。前日ろくに寝られていなかったので、すぐに深い眠りに落ちてしまった。ふと目覚めた時、飛行機はもう降下を開始していた。
 窓の外をふとみると、とんでもないほどの別世界が広がっていた。
 見渡す限りの山々。人間どころか、道路すら見えない。ぴんととんがった、裸の無数の山が、砂漠の砂丘みたいに眼下に広がっていた。私は一気に眠気が吹き飛んで、子供みたいに窓の外の写真を撮った。ついに、LEHにきたのだ!

飛行機の外の景色

 着陸。飛行機の外に出て、息を吸い込む。事前の情報ではマイナス15度程度というお話だったのだが、それほどまでに寒いとは感じなかった。とはいえ、DELHIに比べるとずいぶん冷えていて、私は持参したスキーウェアのジッパーを決意的に上まで閉めた。
 空港で陰性証明を求められたので、とりあえず日本で取得していた証明書を提出した。72時間以内では全然なかったが、問題なく受理。適当らしい。空港スタッフの柔らかな笑みにほっとし、DELHIでささくれ立った気持ちがふわっと凪ぐのを感じた。

 空港の外に出ると、案の定威勢のいい「TAXI!」という呼び込み。使っても良かったが、バスがあるという噂を聞いていたので、空港職員に聞きながらバスの停留所らしき場所へ向かった。道中、あちこちからタクシーの呼び込みがかかったが全て無視。ふと横を見ると、同じようにタクシーの呼び込みを全く無視する青年がいた。私は勇気を出して、バスを使うつもりかと話しかけると、イエスのお返事、これ幸いと二人並んで待つことにした。

空港から山を望む

 バス停らしき標識はまるでなかったが、ほどなくしてバスがきた。私は青年と一緒に乗り込み、グーグルマップとにらめっこしながらどこまで乗ればいいかを観察した。バスの料金はどこまで乗っても(多分)10ルピーらしかった。タクシーが500ルピーくらいする(らしい)ことを考えると、かなりの安価である。青年や周りの乗客に助けられながら、私はなんとか目的の「メインゲート」に到着した。

 LEHの街は、メインゲートから坂を上った先にメインバザールがあるので、どうしても上り下りは避けられない。私は細心の注意を払い、ゆっくりと坂道を登った。高山病にならないよう、深呼吸とゆっくりした動きをするように気をつけていたが、やっぱり空気が薄く、すぐ息が切れた。吐く息はもちろん白かった。
 LEHは、チベット仏教が色濃く残る街で、色とりどりのフラッグが街中に飾られており、遥か昔に訪れた内モンゴル自治区に少し雰囲気が似ていた。国は違えど、共通する文化があることは興味深かった。街のゆるやかさと、人の穏やかさが、少しいただけですぐに感じられ、居心地のいい街だと思った。

色とりどりのフラッグ
羊肉は店先で解体してる
くるりと回すと、マントラを唱えたことになるらしい

 道中、偶然にもインドでメジャーな通信会社であるAirtelのオフィスを発見し、simカードを作ってもらった。事前情報では、やれ開通に顔写真が必要だの、半日ぐらいかかるだのといわれていたが、実際には数十分であっさりと開通した。拍子抜けするほど簡単だった。

 メインバザールを抜け、事前に予約しておいたホステル(Le hostel)に向かった。ホステルのゲストは、オフシーズンのためか、ほとんどがインド人だった。メインバザールから少し脇道に逸れて5分くらいの距離にあり、使い勝手のいい立地でありながら、価格は1泊1000ルピー未満と破格の宿であった(Wi-fi も爆速だった)。

 Check-inして、ちょうどお腹が空いたので、スタッフに聞いたランチのお店に行った。なんてことない見かけのお店だったが、そこで食べたラダック料理(thentuk という)がもう感動するほど美味しく、私は一気にLEHが大好きになってしまった。

Fried Thenthuk おいしすぎました

 ランチ後、ラダックでは有名な日本人の女性が窓口を務める旅行会社「Hidden Himalaya」の日本人女性とお会いした。事前情報から、信じられないくらい親切に対応いただいており、お会いする前からファンだったが、実際にお会いしているとそれはもう快活で素敵な女性だった。一気に大好きになってしまい、私はすぐにその旅行会社に、LEHでは車をチャーターして行くのがメジャーなスポットである「ヌブラ渓谷」「パンゴン湖」のツアーをお願いすることに決めた。

 その日は、高山病を警戒して何も予定を入れていなかったので、ゆっくりメインバザールを散策した。軒先に飾られているパンジャビドレスがあまりに綺麗で、思ったよりも安価(2300ルピーだった)であったことから、勢いで購入。パンジャビドレスは、布を買って仕立ててもらうことができるので、その足で街のTAILORに行って採寸してもらい、数日後に取りに来る約束をした。日程に余裕がないとなかなかできないことで、すっかり浮かれた気持ちだった。

 事前に飲んでいた薬が聞いたのか、高山病の症状が露ほどにも出ないので、その日のうちにレー中心部から歩いていける観光スポットである「LE PALACE」に向かった。高台にあるその城は、夕暮れ時のLEHの街を一望できる。眼下に臨む見知らぬ街並みを見て、ああ遠いところに来たなあと、私は小さくため息をついた。

レーパレス
レーの街並み

 宿に戻った。11月のLEHは街全体が断水しており、シャワーどころか、トイレを流すにも、バケツから水をタンクに汲み入れないといけない。お湯を使いたければ、電熱線でバケツの水を温める必要がある。
 想定していたよりも水がない環境に、一周回ってワクワクするとともに、私はここから7日間風呂に入れないという事実を脳内でじっくりと噛み締めた。

 高山病の症状がなかったことから、翌日もあちこち出歩いても大丈夫そうだと判断し、宿のスタッフと相談して、タクシーを借り切って「ラマユル」「アルチ」という比較的低地方面の観光地に行くことにした。せっかくなので翌朝早く出発することにして、私は早々に就寝した。インド人たちは相変わらず夜夜中まで爆音で音楽を流しており、私はその安定感に却って清々しさを覚えるほどだった。

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