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〜他愛もないショッキング〜 2025/02/09

 地元の道を歩いた。最近運動不足だし、なんだか頭がスッキリしないから散歩がてら長めに歩いてみた。

 地元の道は知り尽くしている。新しい発見はそうそう無い。どこの道がどこに繋がっているかもほとんど分かるし予想ができる。新しい発見があるとすれば空き地だった場所に家が立っていた時ぐらいだ。

 久しぶりに高校の頃歩いていた道を歩いた。実家とは反対方向へと続く道だけれど、その時は自分にとって大切な人がいて、その人と一緒に歩くためにその道を通っていた。

 その人とは残念ながら疎遠になってしまった。いまや連絡を取る手段も無い。久しぶりの道を歩くと、奥深くに埋まっていた記憶が勝手に掘り起こされる。

 変な名前の薬局を見て笑ったり、いつも閉まっている食事処を見て考察したり、寒空の下公園のベンチで話したり、その記憶をまるで数週間前のことのようにはっきりと思い出す。

 ノスタルジーではない。ただ昔を思い出すだけではなく、あの時の情景や想いを細部まで思い出し、現在と比較する。ノスタルジーではなく、これはもっとグロテスクな現象だ。一人で歩く自分の周りに誰もいないことがショッキングだった。

 人が多い場所に行くと、自然と自分が知っている顔を探してしまう。自分と共に笑いあった彼や自分を救ってくれた彼女の姿が、人ごみの中にありはしないか、目を光らせてしまう。

 そんな都合よくいるはずもない。そう思って下を向き、ふと顔を上げると目の前に見覚えのある顔があった。

 それに驚愕する。まさか本当にいるとは思わなかった。しかし、それは自分の求めている人なのかは分からない。声は聞こえず顔はほとんどマスクで覆われている。目元や背格好が似ているだけの別人かもしれない。

 数秒見つめ、それから目を逸らした。恐らく、違う人だと思った。

 道を歩いていても、群集の中にいても、今を生きているはずなのにいつまでも過去を探している自分に嫌気がさした。前を向いていると思っていたのに、チラチラと後ろを振り返っている自分にショックを受けた。

 用を済ませ、また1人で歩き続ける。

 帰り道は影が多い道を、音楽を聴きながら歩きたくなった。


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