住野よるさん『告白撃』を読みました。綱渡り青春小説 (ネタバレはないよ)
住野よるさんの新作、『告白撃』を読み終えました!
↓『告白撃』のあらすじ
住野よるさんの『君の膵臓をたべたい』を読んで以来、小説というものをよく読むようになり、よるさんの作品は全て読んでいる僕。今回の告白撃も発売日に購入してゆっくり読みました。
今作とよるさんらしい青春感が全開で良かった。帯にある青春"再始動"っていうのも頷ける。登場人物が大人たちだから、大人ゆえにできることや大人だからできないこと、そういうモヤモヤっとムズムズっとするような設定やシチュエーションに心惹かれました。流石よるさん、僕はよるさんが描く青春が大好きです。
でも、今回の小説、正直言って「主人公や登場人物に共感できる」とか「こんな青春が私にもあったらな」とか、そういうことは思えない。登場人物に共感することはできないし、もしかしたら、この小説の登場人物がみんな嫌いだと思う人もいるかもしれない。そういう設定だと感じた。
僕はこのお話好きです。でも、物語が好きなのとキャラが好きなのは別の話。ぶっちゃけ受け入れ難いなーと思うシーンもあったけど、それを一つの魅力的なストーリーに仕上げているよるさんが純粋に凄いと思った。
自分的に、このお話全体で描かれているのは『幼稚さ』なのだと思った。大人になっても持ってる、持ってしまってる、巣食ってるとま言っていいような幼稚さと大人ゆえのずる賢さが入り乱れて大人の青春が再始動していく……。この大人の幼稚さが共感しづらい所以なんだろうな。
幼稚さとか子供らしさっていうのは誰でも大人になるにつれて失ってしまうもの。それを良いことと捉えるか悪いことと捉えるかは人それぞれだし、0か100かじゃなくて、「こういう幼稚さは良いけど、これはダメ」みたいなこともある。
そんな幼稚さと恋心をぐちゃぐちゃにミックスしながら突き進んでいく人物たちが魅力的で目が離せなくなる。主人公の選択がベストなのか、ベターなのか、判断しかねるし、それはバッドだろと思うようなこともあり、でもそういう選択が人間味を出してて面白い。
ここまで感想を書き起こしてて思ったけど、青春だけど理想じゃないのがこの本の面白いところなのかもしれない。青春って聞くと、自分もこんな青春を送りたかったとか、胸がキュンキュンして堪らないとか、そういうことを連想するけど、この物語はそうじゃなくて、起こってる事は青春なんだけど、その中身は人間のモヤモヤした部分とか、うじうじした部分とか、それは間違いなんじゃないかと思うところとか、そういうものになってる。結果的に青春になってるだけで、一歩間違えればドロっとした物語になってしまうというか、言葉に表せないけどそんな感じ。
綱渡り青春って感じの物語だ。だから、共感できる部分もできない部分が分かれるのかもしれない。そういう意味では、他のよるさんの作品と今回の作品は同じ青春でもちょっと違うのかも。
この本を通して、登場人物の人間性そのものを体感するようなそんな本だった気がします。そういう意味ではよるさんの三歩シリーズに近い部分もあるかも。
なんか、面白かったはずなのに全体を通してモヤっとした感想になっちゃったかも。それもこの物語の醍醐味ということにしておこう。
以下ネタバレ含むので有料エリアで隠しときます。
結果的な響貴も千鶴もお互いの想いを知ることができてて、よかった。道中色々あったけど、全然ハッピーエンドじゃないか。終わりよければ全て良し。
でも、最後まで読んで、少し引っかかったことがある。もちろん、道中で「おいおい」と思うようなことも色々あった訳だけど、僕的に気になるのは、
(普通にどこかで書かれてて忘れてるだけだったらごめなさいだけど)
大賀さん、あなたは終始どう思ってたんですかね。
大人仲良し6人組の中でも、特に大人として描かれてた(と思う)大賀さん。舞や華生たちと一緒に作戦を遂行してたけど、イマイチ大賀さんだけ内心を見せるような場面がなかった。千鶴と買い物する時には、作戦を無視して千鶴に想いを伝えていたけど、でもそれだけだった。僕は大賀がどういう想いで行動してたのか、それが気になる。
大賀さんだけは、他の人と違って本心で本気でやってたわけじゃないんじゃないかなぁ。そう考えるとこの物語で1番可哀想かもしれない。
それがなんだか気になるぞ、ということでした。
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