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『わすれていいから』

はじめておれがこの家にきたとき、
生まれたばかりのおまえがいた。
ここは、おれたちのなわばり。
おれがどんどん大きくなって、おまえはゆっくり大きくなった。
お気に入りの場所も、遊びも、ご飯の時間も一緒。
嬉しい時も、悲しい時も、おれはそばにいる。
おまえは少しずつ家にいないことが多くなって、
すっかり大きくなった頃……。

成長のスピードは違うけど、”なわばり”は一緒。
どんな時も気持ちの良い距離感で同じ時間を過ごしてきたおれとおまえ。
賢く悟ったおれは言います。

おまえ あたらしいなわばりをみつけたんだね 
げんきでな おれのことわすれていいから 

それまで淡々と読み進めていたのに、ここで涙が…。
誰かが死ぬわけじゃない。永遠の別れじゃない。
それでも漂う淋しさに引き込まれます。
我が子が巣立つとき、同じように言えるかしら…言えない言えない。
なわばりから外を眺めるネコの背中が、小さくも頼もしいラストです。

大森裕子・作
ページ数:36ページ
対象年齢:5歳から
2024年2月

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