「社会的学習」とリモート勤務――『組織変革の教科書』を読み解く
おはこんばんにちは、成田です。(昔好きだった実況者の挨拶をお借りします…)
どこまで続くかわかりませんが、「学びの切り抜き」というnoteマガジンを作りました。本や記事で得たトピックを切り取り、自分なりの視点でまとめていくシリーズです。今回はその記念すべき第一弾!
現在読書中の今城志保さん、古野庸一さん、武藤久美子さんによる『組織変革の教科書: リーダーが知っておきたい人と心の動かし方』の第Ⅰ部の序盤に出てくる「集団の機能③ 社会的学習」が非常に興味深かったので、今回はこのテーマについて触れていきたいと思います。
「社会的学習」という人間の特性
本書では「集団の機能」としていくつかの視点が紹介されていますが、その中でも特に面白いと感じたのが、2つ目に挙げられている「社会的学習」についての解説です。
簡単に言えば、社会的学習とは「他者の行動を模倣することで学ぶ能力」です。この特性が、私たち人間の集団生活や文化の発展に大きく寄与しているという内容です。
▼内容要約・まとめ
ドイツの進化人類学研究所に所属するエステル・ヘルマンとマイケル・トマセロが行った研究では、チンパンジーとドイツ人の子どもを対象に、以下の4つの領域について認知機能テストを行いました。
1. 空間認知能力: 空間に置かれた物体の位置を記憶する能力
2. 量概念: 相対的な量を比較する能力
3. 因果把握能力: 形や音を手がかりに物を見つけたり、道具を選んで問題を解決する能力
4. 社会的学習: 他者が行ったことを模倣する能力
結果として、空間認知・量概念・因果把握の3つの領域では、チンパンジーと人間の子どもに大きな差は見られませんでした。しかし、「社会的学習」の領域では、人間の子どもがチンパンジーに圧倒的な差をつけたのです。
また、この研究結果から、「模倣する能力」は以下のような役割を果たすことがわかりました。
社会に秩序をもたらす
協力を促進する
学びを効率化する
さらに、この模倣能力に向社会性(他者と協力しようとする態度)が加わることで、人類が繁栄してきた理由を説明できるとされています。
たとえば、子どもが友だちや家族の言葉や行動を自然に模倣し、母国語を習得することは、社会的学習の代表的な例です。
また、日本の伝統芸能や職場での「見よう見まね」の学びも、この能力が基盤となっています。
このように「社会的学習」は、人間が他者との関わりを通じて進化してきた背景を理解する上で欠かせない要素であることが理解できました。そして、この話題を読んでいるうちに、私はふと現在の働き方――特にリモート勤務と出社勤務の違いに思いを巡らせました。
以下では、「社会的学習」の視点から、リモート勤務と出社勤務がどのようなメリット・デメリットを持つのか、私なりの考えを整理してみたいと思います。
リモート勤務 vs 出社勤務:社会的学習の観点から
近年、リモート勤務を希望する人やフルリモートを導入する会社が増えています。一方で、「社会的学習」や「オン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)」を最大限に活かすには、出社勤務の価値も大きいのではないかと感じました。本書を読んで、これまで言語化できなかったモヤモヤが整理され、深く納得できた瞬間がありました。
もちろん「出社大肯定派」に見られるのは少し恐縮ですが、やはり出社勤務には、リモートでは得られない「学びの瞬間」が確実に存在していると感じます。
リモートでは埋められないギャップ
リモート環境の利便性は非常に高いものの、オンラインコミュニケーションはどうしても計画的・断片的になりがちです。例えば、ミーティング中の「ちょっとした一言」や、先輩社員の何気ない行動から学べる暗黙知は、リモートではキャッチしにくいですよね。
また、リモートでは評価や指導が「結果」に基づくものになりやすく、プロセスの途中でフィードバックを得る機会が少なくなります。一方、出社していれば、リアルタイムでのアドバイスやサポートがあり、早期改善が可能です。
出社勤務で広がる可能性
特に若手社員や新入社員にとって、先輩の仕事ぶりを観察しながら学べる環境は非常に重要です。こうした「暗黙知」を吸収する機会は、リモートでは再現が難しいものです。
また、対面でのやり取りが増えることで、職場全体の一体感が生まれ、心理的安全性も向上します。これは、単なるスキルアップにとどまらず、チーム全体の成長にもつながる要素です。
ただし、「出社」を強制するのではなく、その価値をきちんと共有し、「学びの場」としての意味を社員に伝えることが大切だと思いました。ハイブリッド型勤務など、リモートと出社のバランスを取る働き方も一つの選択肢です。
まとめ――「社会的学習」がもたらす未来へ
出社勤務は、社会的学習やOJTを通じて、社員個々の成長を促し、組織全体の知識の蓄積やチームの一体感にも寄与します。リモート勤務のメリットを尊重しつつ、「学び」の視点から出社勤務を再評価することは、これからの働き方を考える上で重要なポイントなのかも?と思いました。
ちなみに、自社(mov)では「働き方をパフォーマンス最大化のための手段」として捉えています。環境はあくまで目的ではなく手段。そのため、社員一人ひとりが自分の価値観やキャリア目標に合わせて選択し、最大限のパフォーマンスを発揮することで、会社の事業を通じて社会に貢献することが重要だと思いました。
(会社が何の理由もなく出社勤務を強制するのも、自分の都合だけでリモートを希望するのも、どちらも少し違うのかなと感じています…)
賛否あるテーマかもしれませんが、それも含めてぜひ皆さんと一緒に考えていきたいですね!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
「学びの切り抜き」マガジン第一弾は以上です。また次回の記事でお会いしましょう!ではまた。
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