現代版人魚姫 アニメ映画「バブル」感想
め~め~。
Netflexで独占配信され、劇場公開もされるアニメ映画「バブル」。
現代における日本の有名クリエイターを集めて、かなりの資本力が投入されたと思われる作品となっております。
「進撃の巨人」でお馴染みの荒木哲郎監督。
「魔法少女まどかマギカ」で大ヒットをたたき出した虚淵玄。
「デスノート」や「バクマン」で、圧倒的な画力を誇った小畑健によるキャラクターデザイン。
そのほか、音楽や脇を固める声優陣の豪華さ。
設定にお金と時間もかかるであろうパラレルワールドな東京を舞台に、そうそうたる面々が作品をつくったとなれば、一度は見てみたいと思うのが人情と思います。
ネタバレはほぼ無い状態で、感想めいたことを書いていきたいと思います。
人魚姫×エクストリーム
映画「バブル」は、アンデルセン童話で有名な「人魚姫」が作品の土台に据えられています。
人魚が泡になる話ではなく、泡が人魚になる話、というので作られたとインタビューで語られていますが、内容はまさにその通りの物語となっています。
また、人間の体だけをつかって障害物を駆け抜けていくスポーツ、パルクールに、チーム対戦要素を追加したバトルクールなるものが本作品の中では登場しています。
肉体のみをつかって動くような、この手の人間の動きを、重力が一定ではない世界で、アニメーションにより表現するというのは、意欲的ではあります。
また、アニメの中で、エクストリームスポーツというのが、特殊環境で取り入れられているという点は、非常に面白いところです。
現実の人間がやる分にはすごいですが、アニメの場合は、それだけではすごさは伝わりにくいところです。
謎の泡がそこら中にあって、且つ、重力異常がある世界という設定があると、アニメーション的には映えますが、それをうまく表現するのは難しいでしょう。
さて、具体的な内容に触れる前に、ムービーメーメーが本作品を見たときに思い出した作品や、クリエイターの周辺状況を語ってみたいと思います。
虚淵玄
冒頭でも書きましたが、脚本を担当しているのは虚淵玄です。
ゲーム会社ニトロプラスでシナリオを担当し、「吸血殲鬼ヴェドゴニア」や「鬼哭街」といった作品を生み出していました。
また、「まどか☆マギカ」の大ヒットもありますし、フェイトゼロシリーズを手掛ける等、幅広い活躍と、時に残酷な結末があったりと、目を離せないクリエイターとなっています。
映画「バブル」は、水没した東京が舞台となっておりまして、虚淵玄というフィルターを意識してしまうと、テレビシリーズ「翠星のガルガンチュア」を思い出してしまうのはやむ得ないことかと思います。
「翠星のガルガンチュア」は、イカのような敵と戦いながら、水上で暮らす人たちを描く壮大なSFとしてつくられていました。
物語の最後のほうは、虚淵らしい強烈な設定がわかる内容となっており、映画「バブル」にもついついそのあたりを期待してしまう人もいるかと思いますが、最終的な落ち着きどころとしては、新海誠「天気の子」のような結論に向かっていきます。
映画「バブル」を一度は見ておかなければいけないというのは、虚淵玄による作品において、内容を確認しておかなければならないというファン心理もあるかもしれません。
小畑健
多くを語る必要はないかと思いますが、「ヒカルの碁」ですとか、「人形草紙あやつり左近」でお馴染みの漫画家です。
作画のすごさはデスノートにおいて頂点にいったといってもいいと思いますが、映画「バブル」のキャラクターデザインでは、「バクマン」寄りなデザインとなっています。
と、いうことで小畑健の動く絵が見たい方は、アニメの「バクマン」も観て頂きたいところです。
ちなみに、キャラクターデザインとは関係ありませんが、本作品はウィットスタジオが手掛けています。
映画「バブル」の演出の中に、同じくウィットスタジオによる「甲鉄城のカバネリ」を思い出すような、キャラクターの作画の雰囲気を変えてのアップがあったりしておりますので、「バブル」で気になった方は、そちらの作品もご覧頂きたいところです。
荒木哲郎監督
監督は、「進撃の巨人」シリーズを手掛ける荒木哲郎氏です。
進撃の巨人においては、立体機動と呼ばれる装置をつかって、町の中や森の中を縦横無尽に飛び回る姿が印象的です。
映画「バブル」においても、人間があちらこちらと飛び回る姿が躍動感をもって描かれるのは、このあたりの経験が生かされているのかもしれません。
いずれにしても、日本のアニメ関連の作品をつくるにあたって、このようなコラボがよく実現したな、と思うところです。
さて、続いては、本作品をみた中で、全然作品とは関係ないのですが、思い出した作品を列挙していきたいと思います。
泡によって孤立した東京
東京タワー、と聞くだけでCLAMP作品を思い出しそうになりますが、映画「バブル」を見てすぐに思い出したのは、谷口吾郎監督の「スクライド」でした。
「スクライド」は、突然日本の一部の地域が隆起したことで、アルター能力者と呼ばれる子供たちが生まれるようになった世界の話です。
完全独立自治領連(むらじ)経済特別区域となった場所に生きる、漢(おとこ)と漢(おとこ)の戦いが描かれる作品となっています。
日本の一部がどうにかなって、という点で思い出したところですが、映画「バブル」においては、東京が泡に包まれて、重力異常や、謎の泡が存在する世界を、少年少女たちが活躍するという点で思い出しました。
地球外生命体による警告や、人類の進化を促したりするSF設定があるのかと思いましたが、すぐに東京限定の現象ということでしたので、どちらかというとスクライドっぽいなと思ったところです。
また、泡がなんの前触れもなく地球に降り注いでいく映像は、漫画「寄生獣」の冒頭を思い出したりもしたところです。
映像の美しさについては、新海誠「君の名は」であるとか、「天気の子」を思い出させることから、もしかして、新海誠っぽい作品を要望されていたのだろうかという邪推もしたぐらいです。
さて、それでは、ごくごく簡単に本編の感想を触れて結びにしていきたいと思います。
本編のゆるやかな感想
アニメーションの動きについては、エクストリームスポーツを取り扱っているだけあって、非常に自然な描写となっていました。
体を回転させるときに「脇の筋肉を引き寄せるように」といったことをいうぐらいなので、違和感の無さはすごいものです。
あくまで、ボーイミーツガールものとなっているのですが、クール系の主人公が、女の子と仲良くなりながら、まるで「バクマン」における、主人公サイコーとヒロインの亜豆のような、どぎまぎ感は、合う人と合わない人に分かれるところではないでしょうか。
登場シーンは、クールガイだったはずのヒビキが、なぜか、女性慣れしてないだけの少年のようになっていくのは、じわじわくるものがあります。
世界設定が壮大である為、東京の外側がどうなっているのかよくわからず、親のいない主人公たちの経済状況や、日本の復興状況含めてよくわからないことから、入りこめない人もいるかと思いますが、基本的には、人魚姫をモチーフに、少年と少女が自分にとって、何が大切かを理解するというのが大きな流れとなっています。
特に、物語のラストにいたっては、「天気の子」をみたときと同じ感想を得たところです。
どういうラストだったかはぜひ作品をみてもらいたいと思いますが、作品の作り方や結論含めて、変わってきているのだな、ということをしみじみ感じたところです。
主人公が、いわゆる熱血系から、昔であれば、脇役にまわることの多かったクール系の男が主人公となっていたりするのは、求められるキャラクターというのも変わっているのかもしれないと思った次第です。
スラムダンクでいえば、桜木ではなく、流川が主人公といえば、わかる人にはわかってもらえるのではないでしょうか。
そして、物語の結論が、だれもが納得するような規範的なものではなく、他人からみたら、それでいいのか!、と思ったりするところも見どころではないでしょうか。
「天気の子」において、主人公たちが、自己犠牲によって晴れた世界を選ぶのではなく、自分たちの為に雨が降る世界を選んだように、物語による結論が変わってきている、ということも、映画「バブル」で再確認したように思います。
グローバル展開の為に、作品化するまでに何か圧力がありそうな雰囲気を感じたりはしましたし、好きだからといってトロとヒレステーキとカレーライスを同時においしく食べられるかどうかはわかりませんが、少なくとも、日本を代表するクリエイターが、巨大資本を背景にアニメ映画をつくったという事実は、長年作品を見続けている人間としては、胸が熱くなるところですので、本記事を見て、ひっかかるものがある方は、ぜひ本記事を参考に確認してもらえればと思います。
以上、現代版人魚姫 アニメ映画「バブル」感想でした!