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青春とは深くもぐること!映画「サマーフィルムにのって」

配信で「サマーフィルムにのって」を鑑賞しました。
タイトルもアイキャッチも季節外れですが、面白かった。
感想を書いてみようと思います。

はじめに

簡単な情報です。

2021年公開 日本
監督 松本壮史

高校3年生ハダシは時代劇映画が大好きだが、所属する映画部で作るのはキラキラとした青春映画ばかり。自分の撮りたい時代劇がなかなか作れずくすぶっていたハダシの前に、武士役にぴったりの理想的な男子、凛太郎が現れる。彼との出会いに運命を感じたハダシは、幼なじみのビート板とブルーハワイを巻き込み、個性豊かなスタッフを集めて映画制作に乗り出す。文化祭での上映を目指して順調に制作を進めていくハダシたちだったが、実は凛太郎の正体は未来からタイムトラベルしてきた未来人で……。
映画.comより

令和版学園もの

この映画の特徴として、悪人は出てこない、余計なものが出てこない、というところがあります。
女子高生の部活ものですが、先生や親は一切出てきません。
また、主人公は一風変わった仲間たちと映画を作るのですが、その「変わった」部分を肯定しています。
同じ映画部内のライバル的存在の子も、最初はいけすかない奴として描いてますが、実はめっちゃいい子。

そもそも、主人公も「時代劇好きな女子高生」「勝新太郎のファン」ってな感じで、いわゆる女子高生学園ものの王道からは外れていますが、それも肯定しています。

つまり、違いはあるけどそれを認めよう、というのが出発点にある映画です。
素敵です。
イマドキというか、もう令和なんだから、「悪い奴出してそれを倒す」って時代じゃありませんよね。

ど青春映画

となると、今度はじゃあ何を描くのか、ってことになります。
いい人ばっかりだし、親や先生も出てこないから見返す相手もいない。
それで果たして映画になるのか?

少し話を変えると、この映画のジャンルは青春映画です。
上記にあるように、「部活」や「時代劇」、あと恋の相手が未来人なので「恋愛」「SF」という要素はあるのですが、それはまあ枝葉であって、太い幹は「ど青春映画」。

なぜかというと、主人公が自分の本当に好きなものに気付くから。

最初、主人公は同じ映画部内のライバルが撮るキラキラ恋愛映画を馬鹿にして見下していました。
でも、シナリオ作りや撮影時のトラブルを共に解決していく中で、見方が変わっていきます。

ライバルも一生懸命、自分の信念で映画を作っている。
むしろ面白いと思うものに自分よりまっすぐだ、と。
ライバルと思っていたのはこっちだけで、相手は歯牙にもかけてなかったのですが、ようやく主人公はそれに気づくわけです。

そこから主人公は自分の心の中をより深い方へもぐるようになります。
自分が見下していたキラキラ恋愛映画のことが実は大好きで、自分にしか撮れないキラキラ恋愛映画は何かと、問い始めます。
そして、自分が好きだった時代劇のなかにあるキラキラ恋愛映画的部分にたどり着くのです。

やっぱり、ここですよね。
大事なのは周りや他人じゃなくて、自分。
うんうん。

ラストシークエンスがちょっとメタ(舞台)っぽくなるのでびっくりする人もいると思うけど、自分はそこまで気にしなくていいんじゃないかなと思いました。

大林宣彦監督ならフィルムに直接入っていく表現をしそうなところで(「海辺の映画館」ではそんなシーンがあったような)、もしかしたらその方が分かりやすいのかもしれない。

けれども、それをやったら大林的表現になっちゃって、この映画の肝である「自分が本当に好きなこと・やりたいことに気付く」から離れてしまう。
主人公が自分の心の中を深くもぐっていった結果、あのシークエンスにたどり着いたと思うので、自分は受け入れられました。

もぐるって水面から遠のくから息が続くかどうか不安だし、もぐったからといっていつも底に何かあるわけじゃないけど、もぐらないと見つけられないものがある。
あのシークエンスは、主人公の心象風景(現実の底を突き破ったもの)に近いものと捉えれば理解しやすいのかもしれません。

最後に

当たり前の話だけど、高校生が主役だから「青春映画」ってわけじゃないですよね。
年齢関係なく、自身と深く向き合っている人は、いつだって青春なんだと思います。

総合評価 ☆☆☆☆

☆☆☆☆☆→すごい。うなっちゃう!世界を見る目がちょっと変わる。
☆☆☆☆ →面白い。センス・好みが合う。
☆☆☆  →まあまあ。
☆☆   →う~ん、ちょっと。。。
☆    →ガーン!

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