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公開中の映画感想文2本!「本心」「ドリーム・シナリオ」

現在公開中の映画を2本観てきました。
感想を書いてみようと思います。
師走が近づいているこの時期の、映画ライフのご参考になれば幸いでございます。

先に結論を軽く書いてしまうと、
「本心」→面白い。オススメ。
「ドリーム・シナリオ」→まあまあ。
って感じです。

ではでは1本ずつみていきましょう。
公開中なのでネタバレはできるだけ避けますが、気になる方はご注意くださいませ。


「本心」

石井裕也監督作品。原作は平野啓一郎氏の同名小説。
これ面白かったです。おススメします。

予告編を見ると、ちょいとミスリードされるんですよね。
主人公の青年が亡くなったお母さんの真意を知りたくて、ヴァーチャル・フィギュアというバーチャル空間上のお母さんを作ってもらう。
お母さんは生前自由死という制度(自ら死を選ぶ)に申し込んでいて、息子はそれを知らなかった。自分の知っているお母さんはそんな人じゃない、息子は母の「本心」が知りたくてーーー。

ここからだと、バーチャル空間上のお母さんを通して過去に遡っていき、息子の知らない一面が浮かび上がる、みたいな母親の人生を巡る物語を想像しますよね。
もちろんそういう要素もあるのですが、主題はそうじゃない。
これはいい意味で裏切られました。
上記の感じだと、まあ母親の人生エピソードで盛り上がって、なんか感動しそうだなって思っちゃいますよね。
正直、この映画にあまり感動的なエピソードはない気がします。

じゃあ何がオススメなんだと問われると、この作品は、個人の価値観や考え方の揺れ・ズレの大きさみたいなものを描いていて、そこにグッときたのです。

映画史を少し紐解けば、「カサブランカ」のハンフリー・ボガードは好きな女性と気持ちが通じ合っていても、大義のため離れることを決断する。
「男はつらいよ」の寅さんは、観客みんなが「この女性のこと好きだな」と分かられていても、好きだとは言わない。

そいういう反語の美学や軽妙さが映画の共通文法になっている時代がありました。
あとはお互い好き同士なんだけど素直になれなかったりすれ違ったりしてなかなか結ばれなくて涙だったり、結ばれてよかったね、というパターンもたくさんある。

言葉と行動が一致してなくても良かった時代があり、言葉でちゃんと伝える時代がきた。
で、今はその言葉が正しいかどうかが問われる。
何げなく言ったことが、1年後にはNGになる時代ですよね。

ネタバレになっちゃうから言えませんが、主人公の終盤のセリフが自分にはとても多層の意味を持つ言葉に聞こえて、ハッとさせられたのです。
この言葉はストレートに捉えていいのか、それとも裏返しなのか。
どの言葉が「本心」なのか言っている本人にも分からないんじゃないか。

ただ石井監督はそういう価値観の変容を描きながら、大きな部分では「愛」というものを肯定しています。ここが石井節の真骨頂ですよね。
不安定な時代だけど、それでも「愛」はあると。
「信じるに足るものはある」と。そこにシビレました。

石井監督の作品を何作か観てますが、自分の中ではベストです。
超オススメします。

「ドリーム・シナリオ」

2本目いきます。
今をときめくA24製作。
監督はクリストファー・ボルグリ氏。
主演の大学教授にニコラス・ケイジ。

ごく普通の暮らしをしていた大学教授が何百万もの人々の夢の中に現れ、一躍有名人に。しかし、ある日を境に夢の中の自分が悪事を働き始め一瞬にして大炎上。夢のような日々は悪夢へと変わっていく。

公式サイトより

いつもなら「本心」のようにシアター入り口でポスターをパシャっと撮るのだけど、撮り忘れたので証拠写真を。
でもポスター、劇場に貼ってあったかなあ。記憶を辿ってみてもどこにもなかった気が。
丸の内ピカデリーに久しぶりに行ったけど、豪華さはあるけど親密さはあまり感じなかった。
二階席もある立派な劇場だけど、なんだかなあ。
まあ東京のど真ん中で映画を観る時代は終わろうとしてるのかもしれない。
金曜日、ロードショー初日の夜の回を観るなんて映画ファンにしたら夢のような時間なのだから、もう少し共有したかったな。


作品の感想に移ると、ニコラス・ケイジがいろんな人の夢に出てくるアイデアはとっても面白いのだけど(自分はそれに惹かれました)、その後の展開はパッとしない。
きつい言い方をすると、こういうパターンが考えられますっていう選択肢の提示に過ぎない気がする。
ありそうなエピソードをつなぎ合わせてるというか。

ネット社会の怖さを描いてるけど、小粒な作品です。
まあ夢っていくらでも風呂敷を広げられちゃうから慎重になるのは分かるけど、うーん、ネット社会への照射ばかりに意識がいっちゃって、「夢」の摩訶不思議な魅力がしぼんじゃうのがもったいない。
個人的にこっちはおすすめしないかな。
ニコラス・ケイジのファンのかたにはおすすめします。ほぼ出ずっぱりですので。

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