【いいところを語る映画評】「スキャナーズ」 自分でできる範囲の超能力
「スキャナーズ」を配信で鑑賞しました。
で、感想を書いてみようと思います。
はじめに
40年前のカルト作品なので、まずは情報をどうぞ。
どSF映画
というわけで、今回はちょっとマニアックな「スキャナーズ」です。
映画通の間では有名らしいですが、自分は知りませんでした。
(監督の名前と「ザ・フライ」は知ってました)
SF好きの自分は、あらすじを読んで「超能力」というところにピクッと反応したので、観てみました。
まずジャンルです。
ネットで調べると、「SFホラー」という言葉が散見されますが、ホラー要素はほとんどありません。
序盤のショッキングな頭部破壊シーンですが、ホラー的演出ではなく、「強い超能力者だとこんなことができますよ」っていうシーンなので、怖い印象はなかったです。
びっくりしたけど、思わせぶりではありませんでした。
終盤の主人公と悪役の対決もグロい感じで描かれてますが、これも「超能力者同士の頂上決戦」なので、ホラーとは違う気がします。
それよりも「どSF」ですね。
この映画は、超能力のシーンで始まり超能力のシーンで終わります。
映画の芯にずーっと超能力があって、ブレてません。SF好きな人は萌える作品です。
「マトリックス」に影響を与えてる
ストーリー全体としては、それなりの物語がそれなりに展開して、ラストもそれなりに意外性があります。
「それなり」を多用したのには理由があって、なんかどこかで見たことがある感じがするんですよね。
この作品の公開年は1981年なので、実はこっちが元ネタの可能性はあるのですが、2022年からみた率直な感想をいうとそんな感じです。
ただ「超能力者が公衆電話からコンピュータにハッキングする」とか、「エンドロールの黒バックに緑の文字」とかは、もろマトリックスだったので、自分が知らないだけで、いろんな作品に影響を与えているのだと思います。
プロトタイプ的な作品といえるかもしれません。
超能力の線引き
さて、ここからが自分の思うこの映画のいいところです。
「超能力」ってよく聞く言葉だけど、具体的にはどういう力か分かりませんよね?
なので、超能力とは何ぞやというか定義を示さないと、作品自体がふわふわしてしまいます。
この映画も最初に、超能力者のにらんだ相手が呼吸困難になって倒れる、という描写があって、「おお~そうきたか。でもそれって、なんでもありでやばいんじゃないか」と思いました。
超能力って何か制約があった方が、お話としては面白いんですよね。
何でもできちゃうと面白くない。
だから大丈夫かなあと思いながら見ていたのですが、意外なところで超能力の「線引き」がされていました。
創作姿勢がけなげなんだよなあ
その線引きは何かというと、当時の撮影技術で実現できるかどうか、です。
当たり前のことを言ってますね。。。
でもCGのない時代です。全部モノを撮影しなければなりません。
この映画の超能力の表現はいろいろあって、他人の声が聞こえる、頭部破壊、相手の意識乗っ取り、発火、幻覚などがあるのですが、どれもアナログな手法で撮影が可能です。
頭部破壊は特殊メイクだし、発火はスタントマン、幻覚(相手が自分の母親に見える)は俳優の入れ替え。
意識を乗っ取るとか呼吸困難は俳優の顔芸と演技だし、上記の公衆電話からのハッキングも最後コンピュータは爆発し電話は溶けて終わる。それを美術で表現しています。
内容はどSFなのに、撮影の仕方は力業というか、現場主義。
SFを表現するための現実主義。
クローネンバーグ監督も今でこそ名が通ってますが、当時はまだそんなに力もなくて予算も多くもらえない。
でも自分の世界観をなんとか表現したい。
きっと、「この撮影方法ならこういう超能力を表現できる」ってぶつぶつ言いながら脚本を書いていたんじゃないかなあ。
この方法ならこれぐらいの予算だからプロデューサーも納得してくれるだろう、とかね。
映画を観ながら、監督のけなげな創作姿勢が透けて見えて、好感が持てました。
自分で撮影できる範囲の超能力って、親近感わきますよね。
よく考えれば、携帯電話だって昔は肩から下げてたんだし、まずはできることから始めなきゃですね。
最後に、画像はフォトギャラリーからいただきました。
超能力の第一歩といえば、スプーン曲げ。
よし、俺もできるところからやるぞ。
ってできるか!
総合評価 ☆☆☆
☆☆☆☆☆→すごい。うなっちゃう!世界を見る目がちょっと変わる。
☆☆☆☆ →面白い。センス・好みが合う。
☆☆☆ →まあまあ。
☆☆ →う~ん、ちょっと。。。
☆ →ガーン!