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【いいところを語る映画評】「スキャナーズ」 自分でできる範囲の超能力

「スキャナーズ」を配信で鑑賞しました。
で、感想を書いてみようと思います。

はじめに

40年前のカルト作品なので、まずは情報をどうぞ。

1981年 カナダ
監督・脚本 デビッド・クローネンバーグ

浮浪者のべイルは自分がスキャナーと呼ばれる超能力者であることを知らされる。その頃、もうひとりのスキャナー、レボックがコンセック社の会議場で人の頭蓋骨を破裂させるという事件が起こる。自らの能力を使って、世界征服をたくらむレボック。女性スキャナー、キムとともにレボックを追うベイルは、やがて自分とレボックにまつわる秘密を知ることに……。

映画.comより

どSF映画

というわけで、今回はちょっとマニアックな「スキャナーズ」です。
映画通の間では有名らしいですが、自分は知りませんでした。
(監督の名前と「ザ・フライ」は知ってました)
SF好きの自分は、あらすじを読んで「超能力」というところにピクッと反応したので、観てみました。

まずジャンルです。
ネットで調べると、「SFホラー」という言葉が散見されますが、ホラー要素はほとんどありません。
序盤のショッキングな頭部破壊シーンですが、ホラー的演出ではなく、「強い超能力者だとこんなことができますよ」っていうシーンなので、怖い印象はなかったです。
びっくりしたけど、思わせぶりではありませんでした。

終盤の主人公と悪役の対決もグロい感じで描かれてますが、これも「超能力者同士の頂上決戦」なので、ホラーとは違う気がします。

それよりも「どSF」ですね。
この映画は、超能力のシーンで始まり超能力のシーンで終わります。
映画の芯にずーっと超能力があって、ブレてません。SF好きな人は萌える作品です。

「マトリックス」に影響を与えてる

ストーリー全体としては、それなりの物語がそれなりに展開して、ラストもそれなりに意外性があります。
「それなり」を多用したのには理由があって、なんかどこかで見たことがある感じがするんですよね。
この作品の公開年は1981年なので、実はこっちが元ネタの可能性はあるのですが、2022年からみた率直な感想をいうとそんな感じです。

ただ「超能力者が公衆電話からコンピュータにハッキングする」とか、「エンドロールの黒バックに緑の文字」とかは、もろマトリックスだったので、自分が知らないだけで、いろんな作品に影響を与えているのだと思います。
プロトタイプ的な作品といえるかもしれません。

超能力の線引き

さて、ここからが自分の思うこの映画のいいところです。
「超能力」ってよく聞く言葉だけど、具体的にはどういう力か分かりませんよね?
なので、超能力とは何ぞやというか定義を示さないと、作品自体がふわふわしてしまいます。
この映画も最初に、超能力者のにらんだ相手が呼吸困難になって倒れる、という描写があって、「おお~そうきたか。でもそれって、なんでもありでやばいんじゃないか」と思いました。

超能力って何か制約があった方が、お話としては面白いんですよね。
何でもできちゃうと面白くない。
だから大丈夫かなあと思いながら見ていたのですが、意外なところで超能力の「線引き」がされていました。

創作姿勢がけなげなんだよなあ

その線引きは何かというと、当時の撮影技術で実現できるかどうか、です。
当たり前のことを言ってますね。。。
でもCGのない時代です。全部モノを撮影しなければなりません。

この映画の超能力の表現はいろいろあって、他人の声が聞こえる、頭部破壊、相手の意識乗っ取り、発火、幻覚などがあるのですが、どれもアナログな手法で撮影が可能です。

頭部破壊は特殊メイクだし、発火はスタントマン、幻覚(相手が自分の母親に見える)は俳優の入れ替え。
意識を乗っ取るとか呼吸困難は俳優の顔芸と演技だし、上記の公衆電話からのハッキングも最後コンピュータは爆発し電話は溶けて終わる。それを美術で表現しています。
内容はどSFなのに、撮影の仕方は力業というか、現場主義。
SFを表現するための現実主義。

クローネンバーグ監督も今でこそ名が通ってますが、当時はまだそんなに力もなくて予算も多くもらえない。
でも自分の世界観をなんとか表現したい。
きっと、「この撮影方法ならこういう超能力を表現できる」ってぶつぶつ言いながら脚本を書いていたんじゃないかなあ。
この方法ならこれぐらいの予算だからプロデューサーも納得してくれるだろう、とかね。
映画を観ながら、監督のけなげな創作姿勢が透けて見えて、好感が持てました。

自分で撮影できる範囲の超能力って、親近感わきますよね。
よく考えれば、携帯電話だって昔は肩から下げてたんだし、まずはできることから始めなきゃですね。

最後に、画像はフォトギャラリーからいただきました。
超能力の第一歩といえば、スプーン曲げ。
よし、俺もできるところからやるぞ。
ってできるか!

総合評価 ☆☆☆

☆☆☆☆☆→すごい。うなっちゃう!世界を見る目がちょっと変わる。
☆☆☆☆ →面白い。センス・好みが合う。
☆☆☆  →まあまあ。
☆☆   →う~ん、ちょっと。。。
☆    →ガーン!

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