進撃の巨人最終話に向けてこの記事を捧げる【リヴァイ兵長の魅力を改めて考える】
進撃の巨人が残すところ、あと一話になった今こそリヴァイ兵長の魅力を改めて考えていきたい。
※最新話138話のネタバレがあります。アニメ、単行本派の方はお気をつけください。
リヴァイ兵長は進撃の巨人の最も人気なキャラと言っても過言ではない。進撃の巨人アニメseason1放送当時から人気を集めていた。当時、彼が人気だった理由はおそらく、イケメンで人類最強の男で立体機動装置をかっこよく使いこなし、そして強いからだろう。
しかし、話が進んでいくにつれて、私は彼の違うところに強く惹かれ始めた。それは、強いが故に味わう「残酷な別れ」と彼の「人間味溢れる」ところだ。進撃の巨人は後半になるにつれて、かなりの鬱展開になり、さらに残酷な世界がそこには広がっている。
その残酷な物語を、アルミンやミカサなどの104期視点ではなく、リヴァイ兵長視点で読み返してみた時、このキャラクターほど常人では抱えようのない苦しみを背負っている人はいないのではないかと私は思った。
まず、リヴァイ兵長は強い。これは誰もが知る揺るぎようのない事実だ。ただ、強すぎるが故に彼はどんな窮地でも死なない。必ず生き延びる。だから、彼はいつも仲間の死を見送る側なのだ。
まず、調査兵団に入ってすぐ共に地下で暮らしてきたファーランとイザベルを失った。この時のリヴァイ兵長は悲しみと怒りのあまり冷静さを欠き、感情的に行動してしまう。(「悔いなき選択」を参照)
そして、調査兵団に入った後もリヴァイ兵長は次々に仲間を失う。まず、印象的なのがリヴァイ班の班員である。しかし、彼は班員の死体を見ても動揺した様子は見せない。
しかも、その後すぐに起こる「女型の巨人」との戦いではエレンを連れ去られ動揺するミカサに対し、リヴァイ兵長はいたって冷静に現状を判断している。班員の死体を見た後だとは思えないほどの落ち着きぶりだ。基本的にその後の物語でも、リヴァイ兵長は目の前で兵士が死んだ時や憲兵団との戦いで対巨人ではなく対人間になった時、動揺するエレンたちに対して、彼はずっと冷静である。その姿は読む人によっては「冷酷」に見えるかもしれない。(王政篇ではケニーとリヴァイの過去の関係も描かれていますが、ここでもリヴァイは、父親代わりであり、この世を生きていく術を与えてくれたケニーに置いて行かれ、孤独「1人」になってるんですよね。そして、王政篇では皮肉にもケニーと敵対する立場になる)
そして、彼にとって決定的な残酷な別れがエルヴィン・スミスとの死別だ。ミカサがエレンを拠り所としているようにリヴァイはエルヴィンが拠り所だった。元々、調査兵団に入ったのだってエルヴィンのためにと言っても過言ではない。そんな拠り所のエルヴィンに対してリヴァイは
という言葉を放つ。
獣の巨人が石を投げてきてどんどん立体機動装置に使えそうな建物が破壊されていく。あと少しで更地になって全員死ぬという残酷すぎる状況の中で彼は瞬時に、最善だと思うものを選択しなければならなかったのだ。
リヴァイには地下の仲間を失った経験から「自分の選択を信じようと、仲間の選択を信じようと結果は誰にもわからない。だから、せめてでも悔いが残らない方を自分で選ぶ。」という信念がある。
だから、こういう状況においてリヴァイの判断は速い。そして、彼はその結果がどうなろうと後悔しない。
いや、後悔しないようにしている。
しかし、そんなリヴァイが初めて選択に迷いを生じる場面がある。それは、注射をエルヴィンに打つかアルミンに打つかの二択の場面だ。こんなにも、うろたえたのは、やはりエルヴィンが選択肢の中にいたからだろう。
実際に「エルヴィンがもしかしたら一命をとりとめているかもしれない」という考えが彼の中に過ったせいで、ジークを仕留めることができなかったことからも、エルヴィンの死を選択しながら、この時のリヴァイはかなり動揺していることがわかる。この辺りのシーンのリヴァイは人間味があって私は好きだ。リヴァイ兵士長ではなくただの「人間リヴァイ」が垣間見える。結局は、エルヴィンを夢と団長の使命の狭間での苦しみから解放するため、彼をこれ以上悪魔にしないために「純粋に壁の外を夢見ているアルミン」を選択する。
つまりは、自分の選択で「エルヴィンを殺す決断」をしたのだ。
そんな重要な選択をしたと時でさえ、「なぜ、僕に注射を打ったんですか??」とショックを受け悔いているアルミンに対し、当の選択したリヴァイは
と自分の選択を悔いている様子は(周りには)全く見せない。
そして、33巻では同世代の仲間のなかで唯一残っていたハンジが死を選択し、先に逝ってしまう。この時のリヴァイはもう身体的には怪我も負っていて指も何本かなくてボロボロの状態だ。そんなリヴァイにハンジは
と言って去っていく。そんなハンジを見て部下であるミカサやコニーらは大号泣しているのだが、リヴァイは「じゃあな。ハンジ。見ててくれ。」と一言放ち、一切取り乱さない。ここまで読んできて感じたのは、リヴァイは泣くわけにはいかない立場にいるのだということだ。人類最強のリヴァイは多くの兵士から慕われており「リヴァイ兵長さえいれば!!」という安心感を与える。戦闘面において常に兵士たちの心の柱だった。
そんなリヴァイが悲しみで泣いたりしたらどうだろう。兵士たちも不安になるに違いない。そして、リヴァイと同世代の仲間がいなくなった今、ミカサやアルミンたちを支える大人はリヴァイ兵長しかいないのだ。余計に涙を見せるわけにはいかない。だから、彼はどんな残酷な状況下でも冷静なのだ。冷静でなければならないのだ。
そして、ハンジの死後の世界のシーンは、リヴァイと長年共に戦ってきた仲間は全員死んでしまったのだということを改めて私たちに認識させる。皆、自分の番が来たとでも言うかのように死んでしまっている。残されているのはリヴァイただ一人。そんなリヴァイの136話のモノローグがとても印象的である。(よくこのシーンを見ると、泣きそうな目をしてるんですよね…)
このモノローグ、リヴァイ兵長にしてはかなり心の内の弱さのような部分を感じる。
「海に届けるまでが役目だったのかもしれない。」という言葉には自分が生きていることに対する後悔というか、死ぬべきところで自分は死んでいないのではないかという意味にも聞こえる。
「エルヴィン、お前を選ばなかったことに悔いはない。」と敢えて自分にそう思い込ませるために言い聞かせているようにも見える。
「今の世界は心臓を捧げてまで俺たちが見たかった世界じゃない。」と悔いているようにも見える。
もしくは、私たち、読者が知らなかっただけでリヴァイはずっとこのような葛藤を心の内に抱きながら戦っていたのかもしれない。
でも、このモノローグでリヴァイは「自分を含め、死んでいった仲間たちがした選択を後悔なきものとするために生きている。」のだとわかる。今までもそして今も。
だからこそ、一人で立ち向かっていったハンジに向けた言葉はこれだったのだ。
そして、無事にエルヴィンとの最後の約束を果たすことができたのだが、そんなリヴァイにまた残酷な選択が課せられることになる。138話で巨人化する煙が放たれた時、誰もが動揺する中、瞬時に判断するのだ。
「アッカーマンと巨人の力を持つものは例外だ。ファルコに乗れ。早くしろ!!!」と。
白夜の時と同じだ。どうしようもない残酷な状況でいつも切り捨てる判断をしなければならない運命にいるのだ。リヴァイは。きっと彼はそんな役目をこの物語で任されている。
ここまで進撃の巨人を読んできて、リヴァイは強いが故に仲間を見送ってきたが、後悔などしている暇はないし、立場上、自分が悲しみで泣くなんてことはありえない。それでも、やはり心の中では常に葛藤していたことがわかる。
「エルヴィンの選択を後悔あるものにしないためにジークを殺さなければならない。」
「ハンジたち、死んでいった仲間が心臓を捧げたことを後悔あるものにしないために、望んだ世界を見出さなければならない。」と。
リヴァイの強さの理由は、希望を見出したいという思いから生まれるのかもしれない。
そういえば、リヴァイ兵長は初期のシーンで死にゆく兵士にこう言っていたではないか。
連載終了を経て。(リヴァイとエルヴィンの関係について言及しています)
アニメ完結を経て。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?