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◯新作編 『アイヌモシリ』

監督:福永 壮志 / 2020年 / 日本・アメリカ・中国

「まるで透明人間になって、阿寒アイヌコタンの人々の日常に入り込み、目の前で生活を見ているような気分であった」
(中川裕=言語学者・千葉大学文学部教授/「ゴールデンカムイ」アイヌ語監修者)※上記公式HPより

限りなくフィクションに近いドキュメンタリー、的な劇映画。

出演は主人公も含め、殆どが「実際の」アイヌの人びと。

アイヌの血を引く主人公・カントが、自分の「ルーツ」と向き合いながら成長していく様を等身大の目線で描く。
カントはバンドをやっていて、劇中では「Johnny B. Goode」を歌っている。

……ってコレ完全に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の展開じゃないか!

カントがマーティで、デボがドクで、お母さんはお母さん。
そして森の中のほら穴=デロリアンで、過去と現在と未来と、なんなら彼岸の世界ともつながる。

という例えは冗談半分ですが。

僕ら和人(アイヌの言葉でシャモ)が漠然と抱いている、アイヌ文化に対するイメージってありませんか。


例えば、消えゆく文化。
あるいは、虐げられた人びと、みたいな。

確かに「アイヌ語話者」というのは、
「日常生活でアイヌ語を使っている」という意味ではゼロらしいです。
映画を見れば分かりますが、アイヌの人びとは普通に日本語を話します。

だから劇中、観光客がカント母に対して「日本語がお上手ですね〜(・∀・)」というシーンでギクっとなる。
(悪気のない無知がいちばん危ない)

それでも、アイヌ語もアイヌ文化も、絶滅したのではない。
彼らの言葉や文化は、今でも生きている。

劇中では、長らく絶えているアイヌ文化の一つ、イオマンテ(熊送りの儀式)をめぐるドラマが展開されます。イオマンテに関してはこちらを参照の事。


イオマンテはその内容からして、現代の倫理観に照らした時に動物虐待と捉えられかねない。
伝統文化と、現代の常識との板挟み。「是か非か」を超えたところにあるジレンマ。

そんなアイヌの「今」を、観客はカント少年の目を通して体験することになります。

変な言い方ですが、イオマンテを巡る一連のストーリーはハラハラドキドキ。
邦画版BTTF。小難しい映画では決してない。
むしろ、こんなエンタメ映画が日本を舞台に作れるんだ!という発見でした。

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