初北海道3日目 1989年7月26日-② 能取岬〜阿寒湖
工事の進められている道を抜けて、途中なんとなくオホーツク水族館に立ち寄りその館の目玉らしいオオカミウオをじっくりと観察した僕は、網走市街地に向けて再び走り出した。そして網走はスルーだ。網走湖の東岸を南下し美幌町を目指す。美幌町から先はその時の気分で決めるつもりだ。
昨日は濁った水であまりいい印象のなかった網走湖だったけど、晴れている今日はきれいなブルーの湖面が広がりなかなかいい眺めだ。道の左側には石北線の線路が並行して伸びている。北海道に上陸してから何度か線路脇の道を走ってきたけど、そこで初めての電車に遭遇。2両編成の赤い列車だった。ちょうど呼人駅という小さな駅に入るところだった。電車旅もいつかしてみたい。
まもなく女満別の街に入る。空港があるということが信じられないほど小さな町で、中心部と思われる商店街を2分ほどで抜けてしまった。すぐに両側をたんぼに挟まれた直線道路が始まる。車の流れはおよそ時速100キロだ。その流れに乗って周りの景色を眺めながらしばらく進むと、前方に美幌町のカントリーサインが見えてきた。市街地のコンビニで食料と飲み物を買い車内で食べながら、地図を開きこれからのルートを考える。
美幌町からR243号線に入るとあの美幌峠を越えて屈斜路湖だ。多くのツーリストたちはこのルートを選び先に待つ美幌峠を目指して走る。もちろん今回の旅で屈斜路湖を含むレイクディストリクト(屈斜路湖、摩周湖、阿寒湖)には行くつもりだったけど、美幌峠ではなくぜひ行きたい峠があった。屈斜路湖を眺める峠でも最もマイナーだと思われる津別峠だ。ガイドブックには写真もなくどんな展望台なのかも全くわからなかったけど、標高が高いということとなんと言ってもマイナーだということが気に入ってしまったのだ。
僕はできれば初めての屈斜路湖をそのマイナーな津別峠から眺めたかったので、R243には入らずにR240号線を選択して津別町方面に向けてそのまま南下を続ける道を選んだ。
森の中のワインディングロードが釧北峠を越える頃、空が曇り始めていることに気づいた。前方に聳えているはずの雌阿寒岳の姿も全く見えない。北海道に来てから初めての曇り空だ。少しテンションが下がり始める。そしてもう間もなく阿寒湖畔に到着するというタイミングでとうとう空から雨粒が落ちてきてしまった。
天候って旅の気分を大きく左右する。特にあの頃の僕はまだ若くて、雨を受け入れる心の余裕がなさすぎた。せっかくここまで来たのに雨かよ!そんな気分で訪れた阿寒湖には申し訳ないことに悪いイメージしか残らなかった。ただ約30年後に再訪した青空の下の阿寒湖と湖畔に広がるアイヌコタンは実に素敵な場所で、あの時のイメージをまっさらに払拭することができた。