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【ほかげ】戦争が...終わったんだ。

ほかげ

日本 / 2023年
監督:塚本晋也
趣里
塚尾桜雅
森山未來
河野宏紀

【戦争が、終わったんだ。】
焼け残った小さな居酒屋に1人で住む女は、体を売ることを斡旋され、絶望から抗うこともできずに日々をやり過ごしていた。そんなある日、空襲で家族を失った子どもが、女の暮らす居酒屋へ食べ物を盗みに入り込む。それ以来、子どもはそこに入り浸るようになり、女は子どもとの交流を通してほのかな光を見いだしていく。

映画.comあらすじ

・ネタバレなし感想

U-NEXTのポイントをどの映画で使おうか悩んでいる時に何気なく目に止まった映画。銃撃戦や人がたくさん死ぬような戦争映画ではないけど、戦争の代償が重く心にのしかかってくる映画だった。重い内容だけど2部構成のストーリーで途中印象が変わるから最後まで集中して見ることが出来た。

・こんな方におすすめ!

戦争がどれだけ人々に影響を与えていたのかが伝わってくる映画。"戦争の英雄"や"映画的主人公"じゃなく戦後も苦しんでいた名も無き人達の話を見たい方に。

⚠️以下、ネタバレ含みます⚠️


・好きなシーン、セリフ、キャラ

一発目

「田中秀夫の分です。あなたに命令されて捕虜を突き殺した後、鬼になり散々人を殺した挙句最期は...。」秋元(テキ屋の男)

二発目

「新島忠信の分です。あなたに命令されて捕虜を突き殺した後、戦地では敵兵だけではなく女子供にまで暴行を加え...。」秋元

「待て秋元!あれは戦地での事だ!」上官

「はい...。そうですね。
あなたも被害者なのかも知れませんね。」秋元

三発目

「中田茂樹の分です。捕虜を殺せず、あなたの命令で俺が射殺した。俺の一番の親友です。
それでこれが...俺の分です。あなたから力を頂いて何十人も殺しました。今でも毎日、恐ろしい夢を見てもう気が変になりそうです。それでも、のうのうと生きています。ありがとうございます。俺と銃剣で突き殺された捕虜たちの分です。」秋元

上官を撃つシーン
(名前の漢字は分からなかったので予測変換から)

「終わった...。

戦争が...終わったんだ。」秋元

復讐後、呟くセリフ

河野宏紀さん演じる復員兵は銃声の音や戦争のトラウマに怯え廃人のようになり、森山未來さん演じる秋元(テキ屋の男)は自分が殺してきた人達の悪夢にうなされ、自分や仲間を悪人にした上官に復讐をするけど「戦争が終わった。」と呟く姿は全てを失ったようにも見えた。
傷つけられた側も傷つけた側も苦しみ、戦争前にはもう戻れなくなっているのが印象的だった。最後の一発で上官の命も自分の命も奪わなかったのは、死ぬより罪と傷を抱え生きていくことの方が苦しいから命を奪ってきた自分達への罰なのかなと思う。


https://www.wowow.co.jp/detail/197290

「ぼうや...近付かないで!近付かないでね。私、病気になっちゃったのよ。移ったら大変よ。来ないでね、顔見られたくないの。
こないだはごめんね。あなたのこと嫌いになったなんて言っちゃったけど、嘘だからね?嫌いになんかならないよ。兵隊さんは怖かったけど、神様が旦那と子供を戻してくれたのかと思ってたんだよ。短い時間だったけど、姉さんにとったら一生だよ。
ありがとね、ありがとう。」女

「戻って来れなかった兵隊さんは
怖い人になれなかったんだよ。」少年

「そうね...そうね...。ぼうや...そうね...。
さぁ、もう行きなさい。
私は大丈夫。助けてくれる人がいるから。それからあの危ないもの、あれは置いていきなさい。
あれは持ち歩いちゃ駄目!駄目よ!あなたはそんなものを持たないで生きていくの。」女

少年は缶に銃をしまう

「ぼうや、しっかり生きてね!
危険なことしないで、ちゃんと、自分で働いて、ご飯を食べるのよ!約束よ!」女

障子越しの会話

少年は泣いたり甘えたりしないけど、死体から取った拳銃を肌身離さず持ち、眠る度にうなされてる姿が見ていて苦しかった。盗みや危険な仕事をして生きていた少年が、殴られようと働いて食べ物やお金を得るようになったのが良かった。でも廃人となった復員兵達を見て、食べ物や服を買えず聞こえた銃声(女の死)を背に闇市に消えていく少年は真っ当に生きていけるのかな...。大人も子供も"怖い人"になる必要がない、優しい人が生き延びられる世界になって欲しいと改めて思った。
少年と一緒に過ごすうちに女が感情的になることが増え、盗みや危険な仕事を必死に叱って止めるようになるのが良かった。趣里さんは可愛らしいお顔だし薄化粧で童顔に見えるのに体を売るシーンでは色気と虚無感が漂っているし、少年と過ごす姿はちゃんと"母親"に見える演技力がすごかった。

・ネタバレあり感想

見る前は「戦争が終わった」って希望のある言葉に聞こえたけど、戦争は終わっても続く貧困や終わったからこそ行き場のない恨みやトラウマによって苦しむ人達がいた事を改めて知った。失ったものは帰ってこないし、見た景色や犯した罪は消えないから戦死者や負傷者でなくても戦争で付けられた傷は大きく、永遠についてまわると思わされた。こういう映画を見ると世界中から戦争が無くなって、戦争も戦争で傷つく人達も"映画の中の話"になって欲しいと思う。

💡私の好きな映画で2015年カナダ・ドイツ制作の「手紙は覚えている」という映画も戦後も続く影響を描いているすごくいい映画なのでそちらもオススメです!

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