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多発する核兵器事故。核抑止は安全神話?
1980年9月18日、アーカンソー州ダマスカスの北方にあるミサイル発射基地で、大陸間弾道ミサイル「タイタンⅡ」が格納されているサイロで重大事故が起こりました。
この事故を中心にアメリカの核兵器にまつわる事故について調査したノンフィクションを紹介します!
「核は暴走するーアメリカ核開発と安全性をめぐる闘い」
エリック・シュローサー著 河出書房新社
「タイタンⅡ」とは、米国が過去に建造した最大の大陸間弾道ミサイルです。
直径は約3メートル、高さは9階建てのビルに匹敵する31.5メートル。
頂部には熱核弾頭W53が収められています。弾頭の核出力は9メガトン、その爆発力は第二次世界大戦中に投下された、原子爆弾を含むすべての爆弾のおよそ3倍に相当します。
そのサイロの中で作業していた作業員の工具のソケットが落下しミサイルに当り、そこからあいた穴から燃料が噴き出したのです。
あっという間にミサイル格納庫内は燃料蒸気に包まれました。
そして爆発。
空が真っ白な閃光に包まれ、高さ数十メートルの火柱が突き上がり、キノコ雲ができました。
核弾頭は吹き飛んでサイロから200メートルほど離れた側溝の中にころがっていました。
幸運なことに核爆発はしませんでした。
しかし、実は戦後アメリカでは核兵器にまつわる事故が頻発しているのです。
戦後しばらくの間、アメリカ軍は有事にはすぐに使用可能な原爆を世界中の米軍基地に配備し(沖縄の嘉手納基地を含む)、一時的には現場の指揮官に使用許可を与えていました。
さらに即時にソ連を攻撃できるように24時間態勢で水爆を積んだ爆撃機を世界中に飛ばしていました。
怖すぎる……
しかも、その爆撃機が墜落、火災、離着陸時に事故を起こしあわや水爆が爆発という事態に何度も陥っています。
1966年、スペインの南部海岸線から内陸に数キロメートルの地点の上空で水爆爆弾4発を積んだB52爆撃機が空中給油中に給油パイプにぶつかって機体が空中分解。
水爆は地上に落下しました。
捜索した結果、見つかった1個目の水爆は無傷。
2個目3個目は高性能爆薬の一部が爆発してスペインの村にプルトニウムを拡散してしまいました。
4個目は行方不明になりましたが2ヶ月半にわたる捜索の後、海底から引き上げられました。
この事故はロイター通信社により世界中に報道されました。
村民の被害は……
1968年デンマーク領グリーンランドのチューレ空軍基地の監視にあたっていたB52爆撃機が高度約1万メートルで火災を起こし墜落。B52機は時速950キロメートルほどのスピードで氷にぶつかりました。
その衝撃で水爆4発の高性能爆薬が完全爆発しおよそ100トンのジェット燃料に引火して巨大な火の玉を生じました。
爆弾や飛行機の破片がおよそ8平方㎞にわたって散乱し、その破片は細かく、高濃度の放射能に汚染されていました。
プルトニウムの微粒子が、金属やプラスティックの残骸に付着したり、ジェット燃料や水分や氷と混じったりしていました。
煙に紛れて立ち上ったプルトニウムは空中を何㎞も移動していました。
当時デンマークは厳しい非核化政策をとっておりNATO同盟国がデンマークの領土や領空に核兵器を持ち込むことを禁じていました。
ところがアメリカは10年以上この禁止令を破ってきました。
そして早くも1955年からチューレ基地の秘密の地下壕に原爆が保管されていました。
1956年からは水爆が配備されました。
のちには核弾頭を搭載した対空ミサイルもここに多数配備されたのですが、そのこともデンマークの人々にはいっさい知らされませんでした。
そのほかにもさまざまな事故が起きています。💦
太平洋中部の島で、水爆を弾頭に装着したミサイルの実験中には、ミサイルが故障したので爆破しました。
その爆発でプルトニウムが周辺の環礁に降り注ぎました。
またテキサス州の核兵器解体施設で、水爆を解体中に発火。
核出力は生じませんでしたが、爆風がウランダストを巻き上げキノコ雲を立ち上らせました。
1965年12月日本の150キロメートルほど沖合の海上の空母の上で水爆をのせた戦闘機が、甲板が波で持ち上がった拍子にずるずると甲板をすべって海に落ちてしまい、
水爆と一緒に機体は海に沈んでしまいました。
1950年から1968年まで少なくとも1200発の核兵器が「重大な」出来事や事故に巻き込まれていました。
イタリアの基地ではミサイル4発が落雷に遭い、熱電池がいくつか引火して核弾頭2発の内部でトリチウムガスがコアへ放出されて核爆発寸前の状態に陥りました。
核兵器を扱う兵士が事故の原因のこともあります。
ルイジアナ州のバークスデール基地では、短距離攻撃ミサイルを運搬中台車が倒壊して弾頭が損傷しました。
その原因は整備班のクルーが退屈しのぎに台車を使ってB52を持ち上げるという悪ふざけを繰り返していたのでした。
1980年の時点で全軍人の約27%が最低でも月に一度は違法ドラッグを使っていました。
ヘロイン。コカインLSD、大麻などです。精神疾患の兵士もいました。
さらにソ連からの核攻撃を告げる警報もしばしば誤って発信され、アメリカが報復攻撃の準備をすることもありました。
しかもこのような中枢の警備を担う部隊もLSD、マリファナ、コカイン、アンフェタミンを使用していたのです。
警備のいい加減さは核兵器の盗難リスクも高めていました。
1980年にはノースダコタ州のグランドフォークス空軍基地で短距離攻撃ミサイル(SRAM)8発と核爆弾4個を積んで待機中のB52が火災を起こしました。
火災は消し止められましたが、炎上が続いていたらノースダコタ州とミネソタ州の合計約150平方㎞におよぶ地域にプルトニウムが拡散していました。
核爆弾の爆発の危険性もありました。
しかも原因は燃料濾過器のナットをひとつ取り付け忘れたことでした。
この本ではこのような事故の例が多数紹介されています。
……いや怖すぎるンゴ😭😭😭
よう地球もってたなあ🥺
もちろん事故を防ぐためのアメリカ政府と軍の努力も重ねられましたが。
この本が執筆された2013年の時点でアメリカはおよそ4650発の核兵器を保有しています。ロシアは配備ずみの戦略核兵器を約1740発、戦術核兵器を2000発保有しています。
フランスは約300発。
イギリスは約160発、中国は約240発、そのほかインド、パキスタン、イスラエルも核を保有しています。
その保有状態は安全でしょうか?🥺
核戦力では事故による一発の核爆発で偶発的に核戦争が開始される可能性が高いのです。
それが世界の終わりにつながるかもしれません。
ミスは許されないのです。
核兵器の運用管理の要は秘密主義。
市民の監視を免れたせいで核兵器はより危険になり、重大な事故を招きやすくなりました。
旧ソ連で発生した核兵器事故の詳細が公になったことは一度もありません。
アメリカでも2000年以降も核兵器の管理がずさんなことによる事故が続いています。
現在ではコンピューター化が進んでいますが、サイバー攻撃の危険があります
1945年以降アメリカはおよそ7万発の核兵器を製造してきましたが、これまで不注意によりあるいは正式の認可を経ずに爆発したものは一発もありません。
しかし人間は完璧ではないのです。この幸運がいつまで続くでしょうか……?
「われわれは核戦争からからくも生き延びているだけなのです。」
このような危険な核兵器は1日も早く廃絶を!!
執筆者、ゆこりん、ハイサイ・オ・ジサン