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小咄「ルイ辞書」

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2017年1月の記事一覧

小咄「ルイ辞書」

小咄「ルイ辞書」

【和菓子屋】【アカシア】和菓子職人には芸術家という自負がある。刹那的芸術である。日々の自然の観察とデフォルメで和菓子を創り上げる。その優雅に人は惹かれ、それを口にしてその一生を終えさせる。

アカシアはインディアンの薔薇である。これによって愛の告白をするという。花言葉は「秘密の恋」そして「優雅」である。

小さな口から出まかせ「類似ショ」

小咄「ルイ辞書」

【陽気】【容器】良し悪しではない。暗い気分というのは沈み滞る。暗い気質の男にはそれを受け止める箱がある。一方、明るい気分というのは浮き上がり溢れ出す。よって女にはそれを受け止める蓋がある。しかしこれは男と女に限ったことではない。良好な関係というのはこうして築かれる。

あとは大きさの問題なのである。

小咄「ルイ辞書」

【同志】【透視】志を同じくして長年に亘る付き合いがある彼とは妻より長い時間を過ごしているかもしれない。よく夜を徹して話をした。彼とは分かり合えるものだと思っている。私はこの頃愛人ができた。そのせいか彼とは少し疎遠になった。しかし彼は何も言わない。

家に帰ると妻が言った。「あなた浮気してるでしょう」

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小咄「ルイ辞書」

【究極】【求職】就活で上場企業に就職したものの半年で挫折してしまった彼女は次なる仕事を探す。しかし就活の苦労を考えると就業条件を落としたくはない。

探し求める旅に出て一カ月、遂に出会った。月収も勤務時間も休日も申し分ない、しかし賞与はないが仕方ない。しかもこの仕事、衣服はほとんどいらないのである。

小咄「ルイ辞書」

【幇間】【共感】祇園のお茶屋の京介は人気の太鼓持ちである。舞妓や芸妓に帯同してそのお客を喜ばせる。

人を褒めるところを探して大きく持ち上げる。すると陰にあるイヤなところが心の中に残った。ついに人を見ると人がわかるようになってしまった。人には憐みしか湧かなくなり、京介は人のイヤなところの塊となった。

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小咄「ルイ辞書」

【信仰】【信号】信仰とは目に見えない力あるものを畏れ崇めることである。それは過去において我々を創り、未来において救うものであってその大きさ故に信じ難いものとなる。ある者はその道の歩みをやめ、ある者はまた帰ってくる。信仰に至るということはある時は立ち止まり、またある時は前に進んでいくものである。

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小咄「ルイ辞書」

【疼痛】【交通】バスに30分揺られた後、スニーカーで爪先立ちの電車に乗り込んだ。隣の女性のピンヒールの踵が私の足に突き刺さった。そのまま次の駅まで脂汗で堪え、扉が開いた途端に足を引くとピンヒールのヒールだけがスニーカーに突き立ったままとなった。女性が私にしな垂れかかってきた。これが疼きの報酬か。

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小咄「ルイ辞書」

【断捨離】【がんばり】今年の目標を掲げよう。

ぼくは今年こそは浮気をやめようと思う。いつまでもこんなことを続けてもよくないことはよく分かっている。彼女の悲しみの上にあるぼくのいっ時の快楽を捨てればいいんだ。こんな簡単なことでぼくの周りがどれだけ幸せになることか。

でもぼくにはできることとできないことがある。

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小咄「ルイ辞書」

【吸収力】【収集欲】コレクションは鼻息でする。己が欲するものを嗅ぎ分け、己の欲する程度の代替価値と交換する。等価交換である。

趣味であるうちはそれは己の元に留まるが生業となった途端、それは他人の認める価値と己の価値の差を吸い取り始める。己の前をただ通り過ぎるだけとなる。代替価値の収集家となるのである。

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