「NHKから国民を守る党」とは何だったのか?
今年はどうにかして読書量を増やしていきたいな、と考えている中、今年一発目はやはりこの本から読まなければなりません。
全国の選挙を追いかけ取材し、当落判明後に取材内容をまとめレポートして掲載・販売する「選挙ウォッチャー」という活動(職業)の先駆者である、ちだいさん。 私のやってるコトはちだいさんのスキームを「継承」「のれん分け」させていただいたものです(正直、未だ未熟な私では「拝借」「丸パクリ」という表現が正しいのかもしれませんが・・・)。
そんなちだいさんが「NHKから国民を守る党」(以下「N国」 現在は別の党名になっていますが変わりすぎてワケわからんので省略)とバトルしてきた記録をまとめた一冊となっております。
私は2017年から鬱になって会社を休業し、おのずと引きこもり気味となる中で政治への関心が強くなりイロイロ経て(後述)2019年の参院選に山本太郎氏が「れいわ新選組」を結党した、その活動と政策に衝撃を受けて近所のビラ配りなんぞをしたりしていました。 れいわ新選組への依存は参院選で想像以上に議席を獲れず太郎氏も落選してしまったコトで醒めてしまった(後述)のですが、同時期に(我が家はTVアンテナを繋いでいないため)政治系の配信をイロイロ見ていく中で出会ったのがちだいさんのツイキャスでした。 とはいえ当初はちだいさんの取材中継を見ながら常連さんたちとコメント欄で盛り上がることで充分満足だったのですが・・・
この本にも書いていますが2020年の10月にちだいさんがN国との裁判絡みで身動きがとれなくなり「大阪都構想住民投票」を始めとする全国各地の取材が出来なくなってしまう事態が発生。 その取材計画の中に私が住んでいる長野県南部の選挙「飯田市長選」が有りました。
こちらは私の選挙取材デビューとなる1本目のレポートで、そちらでも書いています(無料なので是非読んでいただきたいです!)が、飯田市長選は是非ともちだいさんに取材していただきたかった選挙で、取材に来られないのならば代わりに(なんてなれないのは重々承知していますが)私がやってみようかな? と思ったのがキッカケでした。 休業中で時間は余りまくっていたのでね。 当時を振り返ると、まさか今でも続けているなんて思ってもいませんでしたが、やればやるほどこの活動の面白さと大切さを知って現在でも市民メディアの末席中の末席を汚しているコトに申し訳なさを感じつつ活動を続けさせていただいております。
本の内容に触れずに自分語りが多くなり申し訳御座いません。 ただ、もうひとつ自分のコトを語らなければいけない話が有ります。 それは、隠していたワケでは無いのですが積極的に話すのも恥ずかしい「黒歴史」でありまして・・・
それは2018年初め。 休業して数か月経過し、仕事に行かなくてイイ解放感に包まれた時期が終わり時間を持て余し始めた頃、先述した山本太郎氏の活動を追いかけるより前に政治的配信を見始めたのが、残念ながら立花氏だったのです。
言い訳にもなりませんが説明すると、当時「森友学園問題」が各メディアで大きく取り上げられる中、どこの媒体も奥歯にモノが挟まったような物言いしかできない中で最も鋭く切り込んでいる(ように見えてしまった)のが立花氏の動画だったのです。 どう考えても責任が明らかな安倍晋三及び明恵氏を追求する(ようなポーズをとっていた)姿勢に魅かれて(しまって)動画が更新される度にチェックしていました。 なので「NHKをぶっこわーす」に魅かれたワケでは無い! と強く訴えたい、 ・・・と思ったところで当時「NHK撃退シール」を取り寄せようかと一瞬とはいえ考えていた自分がいたコトを思い出しました・・・
ハイ、完全な黒歴史です。
ところが、本にも出てきますが立花氏が明恵氏とFacebookで繋がり、その直後から当初の主張を翻し明恵氏を庇うようになった時点で「あっ、こいつダメだ」と一気に覚めて、チャンネルも非表示設定して見ないようにしたのでした。 とはいえ、そんな過去を経ていたおかげでちだいさんが立花氏とバトルする様子を見て「やっぱコイツ、最低だな」と思うに至り、前述の通りちだいさんの活動の一助になれば・・・と選挙取材を始めたのです。
本の紹介のハズなのにこんなに長々と自分語りを連ねてしまい申し訳御座いません。 ただ、敢えて(自らの恥を晒してまで)書き連ねてきたのは、こうやって抜け出すコトが出来た私のような人と、未だにN国や “そんな雰囲気のもの” にしがみついている人の違いを説明したいからであり、それこそがこの本から学ぶべき部分だと感じたからであります。
ちだいさんとN国のバトルを知らない方がこの本を手に取ったのならば、最大の読みどころは第4章の「N国党との激闘の記録」でしょう。 帯に書いてあるように現実の出来事とは思えないような「可笑しくも忌々しいバトルのすべて」が書かれていますので。 ただ、私や多くのちだいキャス常連リスナーのように当時からちだいさんを追い続け応援してきた人にとっては、第5章の「運命の日、そして未来」が読みどころになるかと思います。 そこにはちだいさんが見立てるN国の今後が書かれているのでそれも見どころなのですが、私としてはN国支持者層を分析した部分が最も読み応えが有り学びになったのです。
本の中でN国は「右」でも「左」でもない「下」、つまり「経済的余裕の無い層」の中で「反知性主義に目覚めてしまった人」を票田として開拓していった、と書かれています。 私も昔、派遣社員でド貧乏生活に陥ってた時代が有り(まぁ現在はその時よりもド貧乏なのですが・・・)そうなってしまう気持ちが分かるような気がしています。 自分の実力では覆せない「上」との格差が存在して打ちひしがれたときに芽生える感情ってのは、
の二つだったのです。 問題はこの感情を引き出す要素に「政治」が加わった時で、①の「一気に上に行きたい」という思いは「とはいえすすんで勉強はしたくない」という反知性そのものであり、その結果がネット右翼や維新支持者(以下、維新ジャー)を生み出す要素となり、②の思いが強ければ強いほど「たった一人で巨大な敵と闘っている」ように見える立花氏やレイシスト、陰謀論者にシンパシーを抱きN信(N国信者)や新たなレイシスト、陰謀論者となってしまうのだと思います。
で、ネット右翼や維新ジャーならば、勝ち馬に乗ったつもりでSNS上でワーギャーわめきたてるダケで済むのですが(まぁそれも充分タチ悪いですが・・・)、N信やレイシストの場合、シンパシーを抱いた組織(N国やレイシスト集団)が小さなものでそこに加わるハードルが低いため、自らもその一員になって行動を起こしてしまうのです。 しかもその行動がカメラを持って突撃したりだとかマイクで人種差別を叫ぶだとか反ワクチン反マスクを叫んで行進したり・・・ それが厄介なのは本人たちはれっきとした「政治活動」のつもりなのですよね。 実際のところはタダの「迷惑行為」「暴力行為」「テロ」でしかないのに・・・
ただ、勝ち馬に乗ったネット右翼や維新ジャーは(今のところ)連戦連勝だから自らは何もしないでネットでわめいてるダケで悦に入ってウハウハなのでしょう(これも相当パーチクリンで愚かだと思いますがね・・・)が、N信やレイシストや陰謀論者なんてのは圧倒的マイノリティなのでその主張が世間に届くわけもなく連戦連敗なワケです。 まさにこの時がターニングポイントであり、かつて安倍昭恵に媚びた立花氏を見た時やネットの異常な盛り上がりの割に票が伸びなかったれいわ新選組を見た時の私のように「おかしいな?」と疑問を感じて距離を取るか、それとも「いや、そんなハズはない!」と更に燃え上がって深みにハマって行ってしまうかの分かれ道のどっちを進むか。 そこで深みにハマる道に行ってほしくは無いのですが、嬉々としてその道に行ってしまう人が一定数いるのですよね。
ではそこで何故自分は距離を取る道に進めたのかというと、恐らく「自分」というものを強く持っていたからだと思います。 イヤ、ちょっとカッコよく言い過ぎましたね。 要は私は結構なレベルで「自分大好き人間」であり、自分という存在を過度に他者に依存するコトが無いからだと思います。 なので自分が取った行動が描いていた通りに行かなかったとき、そこで立ち止まることが出来る。 イヤ、カッコつけずに言いましょう。 その責任を自分じゃなく相手になすりつけて「いち抜けた」と逃げ出した、と言った方が正しいでしょうね(汗)。 実際れいわが参院選で伸びなかった時も「あれ? あんだけ盛り上がってたのに、こんなもんなんだ・・・」と醒めてしまい距離を取り始めましたし。
でも(自分を正当化するワケじゃないですが)、それって大切なコトだと思うのですよ。 「自分」というものを中心に据えていれば自らの存在価値を他者に委ねたりしないから。 深みにハマって行く人って熱烈に応援するが余り相手に依存しすぎる場面が多く見受けられるじゃないですか。 それが立花氏だったり、極右政党の党首だったり、いわゆる「Q」だったり。 もちろん維新の吉村氏なんかもそうですよね。 応援や支援をするコトと依存するコトは違います。 そうじゃないと相手のなすがままで、下手したら一緒に地獄行きですよ。 そんな人生、悲しすぎるじゃないですか。 だから相手に疑問が生じた時には、その気持ちが芽生えた自分を信じて距離を取り始めて欲しいなぁと。 自分の意見を変えるのは決して恥ずかしいコトではありません。 それが他の誰かに言われたからではなく「自分」で決めたコトならば、ね。
・・・なんだか結局、自分語りに終始してしまいましたね(汗)。
まとめて申し上げますと、N国という政党を振り返るだけでしたら早晩やってくるであろう崩壊時に読むコトが最も効果的なタイミングであろうかとは思いますが、N国や維新を支持してしまう人の分析をこんなにも端的にまとめている文章というのはなかなかお目にかかれるものでは無く、それは絶対に「今」この時に読むべき文章だと思います。 オススメです。