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多和田葉子 献灯使

多和田葉子さんの本のタイトルです。多和田さんは言語の専門家ですが、それに加えて発想が何か安部公房的な雰囲気を感じさせるところもあると感じています。早稲田大学を卒業後、ハンブルグ大学で大学院修士課程修了、チューリッヒ大学博士課程修了。そしてドイツに住みながらドイツ語と日本語で多数の作品を世界に送り出されている地球人。

今回の本は文庫本の初版が2017年ですから発表されて何年も経ちます。2011年の震災後に日本がどのようになっていくか、かつての日本はどうだったのかを考えながら書かれたようです。帯にあるように全米図書賞を受賞された「世界が認めたデストピア文学の傑作」とのこと。この作品が書かれた時には既に人口減少の問題が明らかになっていたはずですが、作品の中には乳母車を押す母親たちが大勢カフェに集まっているような場面が出てきます。おそらく多和田さんは人類がこの問題をいつか克服することを願っていたのでしょう。

この本を読みながら、以前に孫娘が学校の課題で扱った“THE ROAD(by Cormac McCarthy)”を思い出しました。こちらも映画化された有名な作品。何が起こった後なのかが不明なデストピアでした。

どちらも今後の人類がどうなっていくか考える上でとても参考になります。

私が今回興味を持ったのは地球上の人口が減少する将来を念頭にしてのことです。最後に人類が残るのはアフリカ大陸だとも言われています。それまでの間に何がどんな順番で起こるかは知りようもありません。電気も電話もなくなり江戸時代のような生活をする時期もあるかもしれません・・・。

人類の消滅の原因にはいろいろ・・・

ー核戦争による放射能被曝拡散
ー地球温暖化による気候変動の激化
ー地震や火山の噴火
ー氷河期の再来
等など。

しかし、より確実なのは子供を作らなくなった人類の人口減少によるもの。

ー“親の苦労子知らず”とはよく言ったものです。親がいるから自分がいるのに、“自分が好き勝手に人生を楽しむのに子供は不要であり邪魔である”という考え。“やりたいことをやれ!”と子供をけしかける親たち。
ー男と女という性が多様化し、動物としての本来の姿を失い社会が無秩序になっていく。
ー女性が社会進出、そのため出生率は低下し、労働力不足を招く。だから女性の社会進出が必要と考える悪循環。

何が起こるかはある程度予測がつきます。それに対策を講じることも不可能ではない。しかし、社会の存続よりも個人の自由を尊重する現代の風潮では対策を講じることは難しいでしょう。